「La Maison(ラ・メゾン)プロジェクト」とは?
「ラ・メゾン」は、モティエベンチャーズ(Motier Ventures)が2025年初頭にオープン予定のスタートアップのための施設です。
パリのオペラ座ガルニエ前にあるLafayette Gourmet(ラファイエット・グルメ)ビルの4階、5階、6階に入居が決まっており、改装工事の真っ最中です。
1,800平方メートルの広大なスペースは、モティエベンチャーズの投資先企業の創業者とそのコミュニティのために設計されたハイブリッドなコンセプトを主体にしています。
「ラ・メゾン」の目的は、スタートアップ企業のコミュニティを活性化し、投資家や海外からの起業家にとってパリにおける重要な拠点となることを目指しています。
「ラ・メゾン」の目的
スタートアップ企業に特化したコミュニティスペースである「ラ・メゾン」は、スタートアップの創業者たちが集まり、アイデアを共有し、協力するための場として設計されています。特に、オスマニア様式の美しい建物内に設けられたこのスペースは、初期段階のスタートアップが集まるハブとして機能し、創造的な交流を促進します。
「ラ・メゾン」の目的は、スタートアップの創造性を刺激し、共同で社会のビジョンを構築することです。モティエベンチャーズの創設者であるギヨーム・ウーズ氏は、優れたブランドを生み出す企業を支援することを目指しており、次世代のテクノロジー起業家が日々サポートされ、インスパイアされ、つながりを感じられる環境を育むことを目指しています。
「ラ・メゾン」では、イベント、デモ、発表会、カクテルレセプションなど、多様なイベントを開催することが可能です。特に、4階には広々としたイベントスペースが設けられ、さまざまな形式の集まりに対応できるように設計されています。このような多機能なスペースは、スタートアップ同士のネットワーキングやコラボレーションを促進し、活気あるコミュニティの形成に寄与します。
「ラ・メゾン」の役割
コミュニティのための「家」を提供する
- モティエベンチャーズの創設者であるギヨーム・ウーズ氏は、過去130年間、彼の家族がイノベーション、ビジネスの拡大、創造性と起業家精神による変化を受け入れてきたことを強調し、「ラ・メゾン」を通じて、大胆な起業家を支援するというコミットメントをさらに前進させると述べています。
スタートアップ創業者同士の交流と協力を促進する
- 「ラ・メゾン」は、スタートアップ創業者たちが集まり、共に働き、出会い、社会の未来について共に考える場となることを目指しています。 大学キャンパスのように、近接性を通じて偶発的な出会いを促進することを意図しています。
AI関連スタートアップ企業のクラスターを形成する
- 5階と6階には、12の個室に分かれた110席のデスクが用意され、AI関連のスタートアップ企業が集まるクラスターを形成します。 モティエベンチャーズのポートフォリオの85社のスタートアップのうち、35社がAI関連です。
「ラ・メゾン」には、多様な施設が設置される予定ですが、主な施設を3つ挙げると、以下の通りです。
「ラ・メゾン」に設置される3つの主要な施設
ラウンジ:
- 4階に設置される広々としたラウンジは、大きなテラスを併設しています。カフェ、カクテルバー、プライベートリビングルーム、フリースタンディングのデスク、ブース、会議室など、多様な用途に対応できる空間として設計されています。また、分散型チームのための3つのアパートメントも用意されています。ラウンジは、スタートアップ創業者同士の交流や、リラックスできる空間としての役割を担うと考えられます。
会議室:
- 4階には、ラウンジの一部として会議室が設置されます。また、5階と6階には、AI関連スタートアップ企業のための12の個室が用意されています。これらの個室は、会議室としても利用可能です。「ラ・メゾン」は、会議、商談、発表会、カクテルレセプション、着席ディナーなど、屋内外を問わず幅広いイベントに対応できるよう設計されているため、会議室は重要な施設と言えるでしょう。
オフィス:
- 5階と6階には、AI関連スタートアップ企業のためのオフィススペースが設けられます。110席のデスクが用意され、12の個室に分かれています。モティエベンチャーズは、このフロア構成が、大学キャンパスのように、近接性を通じて偶発的な出会いを促進することを意図していると述べています。オフィススペースは、AI関連スタートアップ企業の成長を支援する場としての役割を担うと考えられます。
これらの施設に加え、「ラ・メゾン」には、スタートアップ創業者とそのコミュニティを支援するための様々な設備が用意される予定です。モティエベンチャーズは、「ラ・メゾン」を、スタートアップ創業者たちが集まり、共に働き、出会い、社会の未来について共に考える場にすることを目指しています。
「ラ・メゾン」の空間デザインの特徴
「ラ・メゾン」の空間デザインは、スタートアップ創業者とそのコミュニティのニーズを満たすだけでなく、フランスのスタートアップエコシステム全体を活性化させることを目指し、以下の特徴を持つように設計されています。
多機能でオープンなレイアウト:
- 4階には、広々としたラウンジと大きなテラスがあり、カフェ、カクテルバー、プライベートリビングルーム、フリースタンディングのデスク、デモブース、会議室が設置され、会議や発表会、カクテルレセプション、着席ディナーなど、屋内外を問わず幅広いイベントに対応できる設計です。
Motier Venturesのエコシステムとの連携:
- モティエベンチャーズは、ポートフォリオ企業だけでなく、ギャレリー・ラファイエット グループ(ギャラリー・ラファイエット、ラ・ルドゥート、ルイ・ピオン、ロイヤル・クォーツ・パリ、モーブッサン、イータリー、シティノーブ、ラファイエット・アンティシパシオン財団)や、さまざまな業界にわたる企業ネットワークとも簡単に繋がることを強調しています。
AI企業クラスター:
- 5階と6階には、初期段階のAI企業約12社を収容できるように設計された個室オフィスに、110のデスクが用意されています。 モティエベンチャーズは、このフロア構成が、大学キャンパスのように、近接性を通じて偶発的な出会いを促進することを意図していると述べています。これは、スタートアップ企業間のシナジーを生み出し、イノベーションを加速させる効果が期待されます。
パリらしさ、オスマン様式、先進性の融合:
- モティエベンチャーズは、「ラ・メゾン」の空間デザインにおいて、フランスらしさ、オスマン様式、先進性という3つの要素を融合させることを目指しています。
- フランスらしさ:
投資先企業であるAmoやVoodooといったスタートアップのオフィスからインスピレーションを得て、パリらしい洗練された雰囲気が目指されています。 - オスマン様式:
建物自体がオスマン様式の建築であり、内装デザインにおいても、このオスマン様式を取り入れることで、歴史と伝統を感じさせる重厚な空間が創造されることが期待されます。 - 先進性:
サンフランシスコのAI企業が集まるAGI Houseのデザインも参考にされており、AI関連スタートアップ企業の入居を予定している「ラ・メゾン」において、現代的な機能性と革新性を象徴するデザインが採用されることが予想されます。
これらの要素を融合させることで、「ラ・メゾン」は、単なるオフィススペースではなく、スタートアップ創業者とそのコミュニティにとって、刺激的で創造的な、そして快適な「家」となることを目指しています。
モティエベンチャーズの投資対象となる産業分野
モティエベンチャーズの投資対象となる産業分野は、ソースによると、主に以下の6つに分類されます。
- Future of Commerce (未来の商業)
Eコマース、小売、D2Cなど、商業の未来に焦点を当てた分野 - Creative Technologies (クリエイティブテクノロジー)
アート、デザイン、エンターテイメント、メディアなどの分野で、テクノロジーを活用して新しい創造的な体験を生み出す分野 - Infra & Tooling (インフラストラクチャとツール)
ITインフラストラクチャ、開発ツール、ソフトウェアなど、他の企業の技術開発を支える基盤となる技術に焦点を当てた分野
- Fintech (フィンテック)
金融テクノロジーの略で、銀行、保険、投資などの金融サービスに技術革新をもたらす分野
- Consumer & Gaming (消費者とゲーム)
消費者向け製品やサービス、ゲーム業界に焦点を当てた分野 - Future of Work (未来の仕事)
テクノロジーの進化によって変化する働き方や、それに伴い必要となる新しいツールやサービスに焦点を当てた分野
さらに、モティエベンチャーズは、ブロックチェーンとAIを横断的な専門分野として位置づけています。 これらの技術は、上記の6つの産業分野のすべてにおいて、革新をもたらす可能性を秘めていると考えられます。
モティエベンチャーズの投資先企業一覧
- Payflows:フィンテック
- Kelvin:フィンテック
- Fipto:フィンテック
- Alma:フィンテック
- Catalog:テクノロジー
- Keyring:テクノロジー
- Stockly:テクノロジー
- Elyn:テクノロジー
- Phacet:テクノロジー
- Drop:テクノロジー
- DinMo:テクノロジー
- Triver:テクノロジー
- Giftshop:Eコマース
- Evy:ヘルスケアテクノロジー
- Certalis:
オブザーバビリティプラットフォーム - Arianee:ブロックチェーン
- Yuma:知的財産管理
- Stacksync:クラウドサービス
- Helios:エネルギー管理
- Revyze:マーケティングテクノロジー
- DFNS:セキュリティテクノロジー
- Ecole 2600:教育
- Adaptive:AI・機械学習
- Composable:AI・データ管理
- FlexAI:AIソリューション
- Ida:AI技術の品質保証
- Poolday:ソフトウェア
- Respaid:ソフトウェア
- Defacto:ソフトウェア開発
- Twin:デジタルサービス
- Dataiads:データ分析サービス
- Leeway:プロジェクト管理ツール
- Narval:データ管理ツール
- Bastion:サイバーセキュリティ
- La Collection:アート・クリエイティブ
- New Tales:
メディア・エンターテインメント - Nocturne Games:ゲーム開発
- Animaj:エンターテインメント
- Sekai:ゲーム開発
これらの分野に加えて、モティエベンチャーズは、Consumer & Gaming(消費者とゲーム)、Infra & Tooling(インフラストラクチャとツール)、Future of Work(未来の仕事)にも投資を行っており、ブロックチェーンとAIを横断的な専門分野として位置づけています。
モティエベンチャーズの投資戦略
モティエベンチャーズは、初期段階の企業に対して最大300,000ユーロの投資を行い、その後のラウンド(Pre-Seed、Seed、Series A/Bの各段階)で最大3,000,000ユーロまでフォローアップします。
また、彼らは自社のポートフォリオ企業やギャラリー・ラファイエットグループ(Les Galeries Lafayette、La Redoute、Louis Pionなど百貨店やEコマース、ブランドなどの大手企業が集結したグループ)とのネットワークを通じて、ポートフォリオ企業や他の業界の専門家に簡単にアクセスできる環境を整えています。このエコシステムアプローチにより、スタートアップは必要なリソースや知識を迅速に得ることができ、競争力を高めることが可能になります。
「ラ・メゾン」と既存のスタートアップ支援施設との違い
「ラ・メゾン」 は、モティエベンチャーズが運営するスタートアップ支援施設であり、既存の施設とはいくつかの点で差別化を図っています。
- エコシステムへのフォーカス:
「ラ・メゾン」は、モティエベンチャーズのポートフォリオ企業とそのコミュニティに特化しています。モティエベンチャーズは、過去3年間で85社のスタートアップ企業に投資しており、AI分野のスタートアップ企業である Dust、H、Mistral などを含む強力なポートフォリオを構築しています。「ラ・メゾン」は、この既存のエコシステムを基盤として構築されており、入居するスタートアップ企業は、モティエベンチャーズのポートフォリオ企業や、グループ・ギャレリー・ラファイエット (ギャラリー・ラファイエット、ラ・ルドゥット、ルイ・ピオン、ロイヤル・クォーツ・パリ、モーブッサン、イータリー、シティノヴェ、ラファイエット・アンティシパシオン財団)、そして様々な業界にわたる企業ネットワークと容易に繋がることができます。これは、他の多くのスタートアップ支援施設には見られない、「ラ・メゾン」独自の強みと言えるでしょう。 - 物理的な空間の重視:
デジタル化が進む現代において、「ラ・メゾン」は、スタートアップ企業にとって物理的な空間の重要性を強調しています。4階には、広々としたラウンジ、大きなテラス、コーヒーショップ、カクテルバー、プライベートリビングルーム、フリーアドレスデスク、ブース、会議室、分散型チームのための3つのアパートメントが設置されます。5階と6階には、12の個室に110のデスクが設置され、10社程度のAIスタートアップ企業のクラスターを収容できるように設計されています。この物理的な空間は、スタートアップ企業同士の交流を促進し、イノベーションを刺激することを目的としています。 - コミュニティ重視:
「ラ・メゾン」は、スタートアップ企業が働き、出会い、共に社会の未来を創造するための場所を目指しています。The Family や Station F といった他のスタートアップ支援施設とは異なり、「ラ・メゾン」は、より親密で非公式なイベントや、共同作業やネットワーキングの機会を重視しています。これは、スタートアップ企業が互いに学び、協力し、成長することを促進する、より緊密なコミュニティの形成を目指していることを示しています。 - The Family や Station F との差別化:
「ラ・メゾン」は、The Family や Station F といった既存のスタートアップコミュニティとの差別化も意識しています。The Family は、スタートアップ創業者向けの教育プログラムやメンターシップを提供することで知られていましたが、パンデミックの影響で閉鎖されました。Station F は、大規模なスタートアップキャンパスとして、多くのスタートアップ企業や投資家が集まるハブとなっています。
「ラ・メゾン」は、The Family のような密なコミュニティ形成と、Station F のような広範なネットワークを組み合わせ、AI分野に特化したスタートアップエコシステムを構築しようとしている点に独自性があります - パリのエコシステムの中心としての役割:
「ラ・メゾン」は、パリのオペラガルニエ前に位置するという好立地も大きな特徴です。
これは、パリのスタートアップエコシステムの中心的な役割を果たすことを目指していることを示唆しています。海外からの投資家や起業家にとっても、アクセスしやすい場所であるため、国際的なスタートアップハブとしての発展も期待されます。 - 明確なビジョンと長期的な視点:
「ラ・メゾン」は、モティエベンチャーズの創設者である Guillaume Houzé 氏のビジョンに基づいて設立されました。彼は、「ラ・メゾン」を「スタートアップ企業が働き、出会い、共に社会の未来を創造するための場所」と位置付けています。また、「ラ・メゾン」は、単なるスタートアップ支援施設ではなく、5世代にわたる Houzé ファミリーの起業家精神を体現するプロジェクトとしても位置付けられています。この明確なビジョンと長期的な視点は、「ラ・メゾン」の持続的な成功に不可欠な要素と言えるでしょう。 - フレンチスタイルと先進性を融合させた空間デザイン:
「ラ・メゾン」の空間デザインは、モティエベンチャーズの投資先企業である Amo や Voodoo といったスタートアップのオフィスや、サンフランシスコの AI 企業が集まる AGI House のデザインを参考に、パリらしさ、オスマン様式、そして先進性を融合させた空間となっています。
「ラ・メゾン」は、AI スタートアップへの特化、コミュニティ重視、「家」としての空間デザイン、モティエベンチャーズエコシステムとの密接な連携、パリのエコシステムの中心としての役割、収益モデルの柔軟性など、既存のスタートアップ支援施設とは異なる、独自の価値を提供しています。
「ラ・メゾン」の今後の課題
「ラ・メゾン」は、上記のような特徴を持つ革新的なスタートアップ支援施設ですが、成功のためにはいくつかの課題を克服する必要があります。
- 競争の激化:
パリには、Station F など、多くのスタートアップ企業支援施設が存在します。「ラ・メゾン」は、これらの施設との差別化を図り、スタートアップ企業にとって魅力的な選択肢となる必要があります。 - 収益化:
「ラ・メゾン」の収益モデルは、まだ完全には確定していません。スペースのレンタルや飲食サービス以外に、持続可能な収益源を確保する必要があります。 - コミュニティ形成:
「ラ・メゾン」が長期的に成功するためには、スタートアップ企業同士の活発な交流を促進し、強力なコミュニティを形成することが重要です。 - マクロ経済の動向:
近年、世界経済は不安定な状況にあり、スタートアップ企業への投資も減少傾向にあります。「ラ・メゾン」は、このような経済状況下でも、スタートアップ企業を支援し続けるための戦略を立てる必要があります。
「ラ・メゾン」は、既存のスタートアップ支援施設とは異なる、独自の強みを持つ施設です。エコシステムへのフォーカス、物理的な空間の重視、コミュニティ重視、パリの中心部という好立地、明確なビジョンと長期的な視点といった特徴は、「ラ・メゾン」を成功へと導く可能性を秘めています。しかし、競争の激化や収益化といった課題を克服することが、成功には不可欠です。
フレンチテックの面白いところは、政府主導でありながらも、フランスを代表する歴史ある大企業(フランスの歴史ある大企業には一族経営が多い、まさにメゾンだね)が、続々と参入して協力しつつも、投資先の青田買いを競い合って火花を散らしているところだ。世界一の富豪であるベルナール・アルノー氏が率いるLVMHは、フレンチテックの世界最大級のインキュベーション施設「STATION F」に大規模な出資をし、拠点も構えている。いっぽう女性初の「資産1000億ドル超えの富豪」であるフランソワーズ・ベタンクール・マイヤー氏が率いるロレアルも「STATION F」に拠点を持ち、ファッションと美容業界の世界のトップが顔を揃えている。そして今度はブロックチェーンやAIに特化したスタートアップの拠点として、スーパーマーケット大手のモノプリやフランスを代表するデパートのギャラリー・ラファイエットを擁するモティエベンチャーズが「ラ・メゾン」を設立して参入してきた。フレンチテックの立役者で「STATION F」の運営をしているのは、「フランス版スティーブ・ジョブズ」と呼ばれるFREEの創業者グザビエ・ニエル氏で(どちらかというとフランス版イーロン・マスクのほうが近いと思うけどね)、彼はLVMHのベルナール・アルノー氏の長女であるデルフィーヌ・アルノーと結婚していて2人の子どもがいるという、フランス経済界の「ロイヤル・ファミリー」の一員でもある。LVMHはすでに、ファッション以外にも酒造や不動産、百貨店からホテル、デューティー フリーやら新聞社まで傘下に持つコングロマリットだけど、これに通信や技術も入れば世界最大のブランドコングロマリットから、実質的に世界最大のコングロマリットとなる可能性もある。フレンチテックを舞台にして、フランス、あるいは世界の大企業同士が競い合うドラマが見られるのも、今後の楽しみのひとつじゃないかな。NetflixかDisney+あたりが映画かシリーズとして制作したら面白そうだよね。(ベルナール氏が反対しそうではあるけどね)





