
Rafale F4
ヨーロッパの軍事力
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は3月4日火曜日に、「ヨーロッパの再軍備」を目指す8,000億ユーロの計画を発表しています。
ヨーロッパは世界情勢の変化に対応して防衛を強化したいと考えており、すでにウクライナ戦争開始直後から防衛予算を強化しています。
欧州の防衛支出は2024年に4,570億米ドルまで急増し、11%以上の増加を記録したと2025年2月に発表されたIISS(国際戦略研究所)により報告されています。
EU加盟国の支出は3,350億ドル以上に達し、同年のロシアの軍事支出1,459億ドルをはるかに上回っています。ただし、GDPに対する割合では、ロシアの方が6.7%と高い投資率を示しています。
財政面では欧州が優位に立っているように見えますが、実際の軍事力はどうなのでしょうか?
個々の欧州諸国はロシア軍に太刀打ちできないものの、欧州全体の軍事力を合わせると、地上装備(欧州とウクライナで77,000台以上、ロシアは47,000台以上)、航空機(8,400機対3,400機)、艦船(2,200隻対800隻)のいずれにおいても、ロシアを大きく上回ります。
ヨーロッパの軍隊は人員数でロシア軍を上回るか?
現在、ヨーロッパ(欧州連合、イギリス、ノルウェーの合計)の軍隊は、総人員数においてロシア軍をわずかに上回っています。
新規募集を続けながらもウクライナ戦線で損失を出しているロシア軍は、2025年のグローバル・ファイアパワー・ランキングによると、132万人の兵力を有し、世界第5位の規模とされています。
一方、欧州には統合された軍隊は存在せず、個々の国家軍でロシアに匹敵する規模を持つ国はありません。ランキング25位のポーランドと26位のフランスは、それぞれ20.2万人と20万人の兵力を擁していますが、EU27カ国の軍事力を合わせれば143.5万人となり、ロシアを上回る規模となります。
しかし欧州軍は、数の上でロシア軍を上回るものの、即応態勢は十分なのか?という疑問があります。実戦経験のない欧州軍は、3年にわたり実戦を続けているロシア軍に比べて効果的な対応が難しい可能性があるからです。
ただし、フランス国際関係研究所(IFRI)の指摘によれば、急速な動員と指揮官不足により準備不足に陥りがちなロシア軍の弱点に対し、欧州軍は充実した訓練で対抗できる可能性があります。
しかしそれは、27カ国の軍事力を純粋に統合した結果であり、ここまで多国の連合軍は存在したことがなく、足並みが揃わない可能性が指摘されています。
現在(2025年3月)の欧州連合(イギリス、ノルウェーを含まず)の現役軍人数は、以下の通りとなっています。
EU諸国の国名 | 現役軍人数(2025年) |
---|---|
🇩🇪 ドイツ | 181,600 |
🇦🇹 オーストリア | 16,000 |
🇧🇪 ベルギー | 25,000 |
🇧🇬 ブルガリア | 37,000 |
🇨🇾 キプロス | 12,000(2022年のデータ) |
🇭🇷 クロアチア | 14,325 |
🇩🇰 デンマーク | 20,000 |
🇪🇸 スペイン | 133,282 |
🇪🇪 エストニア | 7,700 |
🇫🇮 フィンランド | 24,000 |
🇫🇷 フランス | 200,000 |
🇬🇷 ギリシャ | 142,700 |
🇭🇺 ハンガリー | 41,600 |
🇮🇪 アイルランド | 7,765 |
🇮🇹 イタリア | 165,500 |
🇱🇻 ラトビア | 17,250 |
🇱🇹 リトアニア | 23,000 |
🇱🇺 ルクセンブルク | 1,000 |
🇲🇹 マルタ | 2,000(2022年のデータ) |
🇳🇱 オランダ | 41,380 |
🇵🇱 ポーランド | 202,100 |
🇵🇹 ポルトガル | 24,000 |
🇨🇿 チェコ | 28,000 |
🇷🇴 ルーマニア | 81,300 |
🇸🇰 スロバキア | 19,500 |
🇸🇮 スロベニア | 7,300 |
🇸🇪 スウェーデン | 24,400 |
ヨーロッパの軍隊は軍事装備でロシア軍を上回るか?
2024年には、EUの27加盟国のうち15カ国が、フランス(2.1%)を含め、NATO(北大西洋条約機構)の目標に従って国内総生産(GDP)の2%以上を防衛費に充てていますが、これらの国々の一部は、防衛支出をGDPの3〜5%に引き上げることを検討しています。
ロシアの脅威に対するこれらの取り組みは、ロシアの軍備と対抗することを目指しています。
ヨーロッパとウクライナの地上装備(77,000台以上に対し、ロシアは47,000台以上)、航空装備(8,400機対3,400機)、海上装備(2,200隻対800隻)のいずれにおいても、ロシアの兵器や車両の数をはるかに上回っています。
しかし、軍事装備については数字でのみ比較できるものではありません。
欧州の強みは各国軍の統合にあるものの、全ての国が同じ装備を使用しているわけではなく、互換性も限られています。
さらに、アメリカなどの軍事装備供給国による制限があるという問題があります。
武器売却には使用条件が付されることが多く、これにより欧州の軍事力の効果的な運用が制限される可能性があるからです。
その問題を回避するためには、フランスで製造された軍事装備の割合を増やすしかありません。
フランスは世界第2の武器輸出国であり、フランスが輸出する武器については、使用条件の制限をフランスで決定することができます。
現在フランスの主要な兵器として、ラファール戦闘機、レオパルト2戦車、FREMM駆逐艦、シュフラン級潜水艦、CAESAR自走榴弾砲、A400M輸送機など、最先端の兵器が製造されており、これらの装備はアメリカの兵器と比較しても、高い性能を持つとされています。
にも関わらず、フランスの武器の輸出は、主にアジア・オセアニア諸国(35%)と中東諸国(28%)向けの兵器の輸出が多く、欧州各国への輸出は多くありません。
理由はNATO(欧州軍)の兵器は殆どがアメリカから輸入されており、アメリカの武器輸出先の1位はNATOだからです。
しかしアメリカとの同盟関係が崩壊しつつある今、アメリカと武器の互換性を合わせる必要はなく、むしろアメリカから輸入した軍事装備には使用条件の制限があるために、各国軍の統合にはフランス製の兵器を拡充したほうが有利なのです。
現在のヨーロッパ、ロシア、フランスの兵器保有数の比較は以下の通りです。
地上部隊
- 戦車:
- ヨーロッパは4,425両を保有するのに対し、ロシアは3,000両を保有しています。ただし、フランスが保有する戦車は200両に過ぎません。
- 装甲兵員輸送車:
- ヨーロッパは21,847両に対し、ロシアは9,140両を保有しています。フランスの保有数は2,669両です。
- 重砲:
- ヨーロッパは5,085門に対し、ロシアは3,931門を保有しています。フランスの保有数は113門です。
航空戦力
- 戦闘機:
- ヨーロッパは1,712機に対し、ロシアは755機を保有しています。フランスの保有数は241機です。
ヨーロッパの軍事産業
ヨーロッパは世界の軍事産業において主要なプレイヤーの一つであり、特に防衛装備の輸出、生産、技術革新の面で大きな影響力を持っており、現在、アメリカに次ぐ主要軍事輸出地域(約30-35%のシェア)となっています。
世界で最も武器を輸出している国のトップ10
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、2025年3月10日月曜日に2020-2024年期間の世界の武器輸出に関する最新報告書を発表しました。
輸入国のランキングでは、ウクライナが1位になったことを明らかにしました。
ウクライナで輸入量が激増した背景は、2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻における防衛力の強化のためです。
ウクライナは、2015〜2019年と比較した場合、輸入量が9627%増で、ほぼ100倍に上昇し、世界の兵器輸入量の約8.8%を占めることとなり、このランキングで長らく1位にいたインドを上回りました。
また、イギリスとオランダ、ノルウェーなどの欧州の国々も、アメリカからの武器輸入を増加させています。
20年ぶりに、アメリカの欧州向け武器輸出のシェアが2015-2019年の13%から2020-2024年の35%に増加しました。
実際、イタリアやイギリスは、アメリカからF35ステルス戦闘機やパトリオット防空システムなど、迅速な代替が困難な装備を購入しています。
日本も、国際情勢の変化により武器の輸入量を増加させており、2015〜2019年と比較した場合、93%増と2倍近く増え、世界6位にランクインしました。この増加についてSIPRIは「主に中国および北朝鮮との緊張関係によって促されている」と分析しています。
なお、アジア圏では、日本と韓国がアメリカの主要な武器購入国となっており、日本では97%、韓国では86%の輸入兵器がアメリカ製で占められています。
以下は、過去4年間で国際的に最も多くの武器を輸出した10カ国の詳細なランキングと、この期間と2015年から2019年の期間との間での各国の進展に関する分析です。
- アメリカ合衆国:
世界の武器輸出国ランキングで大きくリードするアメリカ合衆国は、2020年から2024年の間に107カ国への主要な供給を行い、その地位を強化しています。
アメリカは長距離技術の主要供給国としても、世界の輸出の45%を占めています。例えば、ワシントンは2番目の輸入国であるウクライナに、発射地点から300キロメートル先まで到達可能なARMYタクティカルミサイルシステム(ATACMS)を提供しています。ちなみに1番目の輸出先は、北大西洋条約機構(NATO)です。
総じて、世界の武器輸出総量に占める同国のシェアは2014年から2018年の34%から2019年から2023年の42%に上昇し、2024年以降もこの上昇傾向は継続し、世界の武器輸出の43%を占めています。 - フランス:
フランスはロシアを抜いて、2位を維持し、2020年から2024年の間の世界輸出の9.6%を占め、2015-2019年期間と比較して11%増加しています。
フランスは2015-2019年期間と比較して欧州への輸出を3倍に増やしています。これは主にギリシャとクロアチアへのラファール戦闘機の販売とウクライナへの武器供給によるものです。
フランスは合計65カ国に主要な武器を輸出しており、主にアジア・オセアニア諸国(35%)と中東諸国(28%)向けです。
インドは近年も引き続きフランスの武器輸出の主要な仕向け先で、フランスの総輸出の28%を占めています。もう一つの重要な点として、フランスはカタールに対して武器輸出の9.7%を行っています。 - ロシア:
ロシアは、ウクライナ戦争の結果として近年取引相手が大幅に減少したにもかかわらず、このランキングで3位を維持しています。
ロシアの武器輸出は2015-19年と2020-24年の間で64%減少しました。ロシアの武器販売は2019年の調査では世界の取引の21%を占めていましたが、2024年の調査では7.8%にまで落ち込みました。
しかしモスクワは2024年に、世界33カ国に主要な武器を輸出しています。詳細には、ロシアの武器販売の74%がアジア・オセアニア諸国向け、12%がアフリカ向け、7.4%が欧州(ベラルーシ、セルビア、アルメニア)向けでした。
ロシアの武器輸出の3分の2がインド、中国、カザフスタンに向けられていることに注目です。 - 中国:
中国は、世界への武器販売を5.4%わずかに減少させました。この減少にもかかわらず、ランキングで4位に上昇しており、2020年から2024年の世界における武器販売の総シェアは5.9%で、ドイツとわずかな差です。
しかし、数年来、同国は防衛システムの強化を望んでいることを表明しています。例えば、世界第2位の経済大国でありながら米国に大きく後れを取っている軍事予算を、2025年に昨年平均の7.2%にまで増加させることを発表しています。 - ドイツ:
ドイツは世界の武器輸出国として5位を維持し、2020-24年期間の総シェアは5.6%で、2015-19年期間と比較して2.6%の減少となっています。
主にウクライナ(輸出の19%)に装備を供給しており、昨年3月、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、約200台の車両と10,000発の砲弾を総額5億ユーロで供給すると発表しました。
ドイツからの武器輸入国の2位と3位は、エジプト(19%)とイスラエル(11%)です。 - イタリア:
SIPRIのランキングで6位のイタリアは、2015-19年期間と比較して2020-2024年の武器輸出が138%増加し、世界の輸出の4.8%を占めています。
イタリアの武器輸出の大部分(71%)は中東諸国向けで、カタール(28%)、エジプトとクウェート(18%)が主な輸出先です。 - イギリス:
世界の武器輸出の3.6%を占めるイギリスは、このランキングで7位に位置しています。カタール(28%)、アメリカ(16%)、ウクライナ(10%)が主な輸入国となっています。 - イスラエル:
このランキングでさらに上位に位置するイスラエルは、2020年から2024年の間の世界の武器取引の3.1%、2015年から2019年の間は3.2%を占めています。これら二つの期間の間で輸出が2%減少しています。
また、イスラエルの武器輸入は概ね安定しており(-2.3%)、現在は世界第15位の武器輸入国となっています。前期は14位で、主な供給国はアメリカ合衆国です。 - スペイン:
2020年から2024年の期間における同国の武器輸出は世界全体の3%を占めており、2019-2023年期間から現在までの間に海外への輸出が大幅に増加(29%)したにもかかわらず、前回の8位から順位を落としました。(2019〜2023年度の9位はイスラエルでした) - 韓国:
韓国は2020年から2024年の間に、世界の総武器輸出の2.2%に相当する量を輸出しました。これは、2015年から2019年の期間(世界全体の2.1%)と比較して4.9%の増加を示しています。
韓国は主にポーランド(46%)、フィリピン(14%)、インド(7%)に輸出しています。
ヨーロッパの戦略的目標、及び戦力強化目標
戦略の強化
集団安全保障体制の強化と連携の深化
地政学的な競争への再認識
防衛産業の協力と合理化
NATOとの連携維持と独自の防衛能力強化
新たな安全保障領域への対応
弾薬備蓄の重要性の認識
戦力の強化
軍備の近代化と増強
弾薬の備蓄増強
サイバーセキュリティ能力の強化
宇宙関連能力の整備
地上部隊の再編と近代化
無人航空機(ドローン)の開発と導入
ヨーロッパは、これらの戦略と能力強化の取り組みを通じて、ロシアの軍事力に対抗し、自らの安全保障を確保しようとしています。しかし、現状の軍事力ギャップや、各国間の足並みの乱れなど、克服すべき課題も多く存在します。
ヨーロッパの兵器調達の課題
ヨーロッパ(EU、イギリス、ノルウェー)は、核兵器、地上軍の兵力(海軍、空軍を除く)、主要戦闘車輌、重砲などの分野でロシアに対して数的に劣勢です。
例えば、活動兵力、戦車、装甲兵員輸送車、重砲、戦闘機などにおいて、ロシアの方が多くの数を保有しています。
またフランスはヨーロッパ内で比較的高い軍事力を有していますが、全体として見ると、ロシアの軍事力に対抗するためには、更なる能力向上と結束が必要です。
また戦略面の課題として、ウクライナへの支援を長期的に維持できるかという課題や、弾薬の備蓄不足を解消するための生産能力向上も重要な課題として挙げられています。
さらに重要な問題として、ヨーロッパは特定の重要な軍事技術においてアメリカ合衆国に依存している現状も指摘されています。
ヨーロッパ諸国は、これらの戦略と能力強化の取り組みを通じて、ロシアの軍事的脅威に対抗しようとしていますが、依然として克服すべき課題が多く存在します。軍事力のギャップ、弾薬不足、産業能力の向上、各国間の連携強化などが、今後の重要な焦点となるでしょう。
また、紛争の性質の変化に対応するため、テクノロジーへの過度な依存を避け、より包括的なアプローチが必要であるという認識も存在します。
再軍備の目的を見失ってはならない
EU27カ国の軍事予算は3,260億ユーロで、2024年のEU GDPの約1.9%です。
いっぽうアメリカの軍事予算は約1兆ユーロです。アメリカはこの1兆ユーロの予算で、世界の海域と地中海に6つの艦隊(空母12隻程度)を配備し、アメリカ国外の約80カ国に750もの軍事基地を維持しています。
いっぽう、ウクライナと戦争中のロシアは約1,100億ユーロで、自国領土外にわずか12の基地しか持っていません。
域外の軍地基地の多さに関しては、アメリカ以外に自国領土外に多くの基地を持つ国はなく、EUで一番多いフランスの自国領土外の軍地基地でも4つと、桁違いの差があります。
しかし今日のヨーロッパの再軍備の目的は、ロシアの攻撃を踏みとどまらせるための軍拡であり、世界一強い軍隊を持つためでも、軍拡競争に参加することでもありません。
アメリカの保護からの独立性を高めるには、まずEU27カ国の足並みを揃え、既存の体制を合理化することが重要なのではないでしょうか。

僕は技術オタクだから技術の進歩は大好きだけど、兵器の技術の進歩については触れたくなかったんだ。戦争が大嫌いだし、武器も兵器も全部嫌い、進歩どころか消滅してほしいと思っているくらいだ。
でもヨーロッパの技術界どころか産業界全体が軍拡に向かっているなか、この問題に触れないわけにはいかなくなってきたみたいだ。第四次産業革命はAIとIoT、第五次産業革命は、コンピューター技術とバイオテクノロジーの融合だと言われているけれど、その前にAIとロボットを融合した軍事産業革命が来てしまうような気がする。
フランスは既に世界第二位の兵器輸出国だから、どんな技術も最終的には兵器開発に繋がってしまう可能性は高い。AIだって軍から開発資金が出てるしね。
特にドローンの開発などには微妙さがつきまとう。僕も競技用と探索作業用のドローン開発に関わったことがあるけど(兵器にはならないという説明だったけれども)、ロシア軍もウクライナ軍も使えるものは何でも使う状態になっているから、転用されてしまっていることは容易に想像ができる。ウクライナ軍が使用したなら正義、なんていう話じゃない。ドローンは戦争のために発明されたんじゃないんだ。
科学や技術は意図的にでもそうでなくても殺戮や犯罪に使用されてしまう可能性が高いけど、殺戮や犯罪を止めることができるのも科学や技術だということを理解したうえで、無理やり規制するのではなく、大切に正しく育てていかなくてはならないと思うんだ。
原爆だってマンハッタン計画参加の科学者7人は45年6月に、日本への無警告投下に反対する提案「フランク報告」を陸軍長官に提出したけど無視されている。たとえ生みの親でも科学者の影響力なんて軍隊にとってはないに等しいってことだ。
もともとマンハッタン計画は「ドイツより先に原爆を」が合言葉で(確かにアメリカよりも先にドイツが原爆を開発していたら、現在の世界地図は全く違っていただろうね)、日本に対しても実際に投下するのではなく、脅威を与えて降伏を促すことが元々の目的とされていたようだけど、それって今のロシアに対する核の傘と考え方は一緒なのでは… と考えると恐ろしいよね。
「日本原水爆被害者団体協議会」がノーベル平和賞を授賞したのは去年(2024年)のことなのに、トランプ大統領が、NATO加盟国が自国の国防費を十分に支払わなければ、米国はNATO加盟国を防衛しないと発言した途端、核爆弾の保有国だけが他国の平和も守れるような流れになってしまった。長い時間をかけてやっと届いたメッセージが、アメリカのひとことでかき消されたとしたらあまりにも皮肉で矛盾しているけど、核がなければ平和は守れないって、世界の指導者たちはほんとうにそう信じているのかな?
原爆の父と言われるオッペンハイマーは原子爆弾について、もし1国の管理下に置いてしまうと、他国は競争意識を持ち、際限なく原子爆弾の開発が行われるから(実際そうなったよね)、国単位で管理するのではなく国際管理をするべきだと発言していたけど、それが実現しなかったことが一番の問題だったのではないかと思う。
今の国連にはそのような権限はないから、一度国連を解体して本当の意味での(加盟国制ではなくホスト国も忖度もない)国際連合と国際司法裁判所と国際警察と国際軍隊を作って、戦争も核もそこが責任を負うべきだし、それだけの権限を持たせるべきと思うんだ。
今さらそんな改革は難しいのはわかるけど、それができたらプーチン大統領だって逮捕できるし、NATOの必要性だって、ヨーロッパが独立して軍拡しなければならない必要性だってないはずだ。ウクライナ紛争だけでも既に恐ろしいほどの人の命と何十兆ものお金が失われていることを考えれば、とんでもなく難しい話ではないと思うんだ。
トランプ大統領は、破天荒なことばかり言っているようだけど、戦争は一番愚かなことだ、と主張していることには同意できる。(でも停戦が決まる前にウクライナへの軍事支援を停止したのは、何よりも愚かなことだし犯罪に近いと思うけど。)
トランプ大統領が言っていた、「ガザ住民を域外に移住させ、ガザを中東のリヴィエラ(高級避暑地)にする」という主張は冗談のように聞き流されていたけれど、そんなに素っ頓狂な考えではないというか、むしろ悪くない考えなんじゃないかな。領土問題は一時的にどちらかが勝って解決したとしても、負けたほうが力を蓄えて取り戻しに来て奪回の繰り返しになることはこれまでの歴史が証明しているよね。一番いいのは、両方が平等に他の土地に移ることだと思うんだ。お互いの歴史に全く関係のない離れた土地を開拓して、住居や病院や学校を作って生活の基盤をそれぞれに準備してから提案してあげたら(もちろん雇用も創出して)、子どものいる避難民などは、生まれた土地に拘らずに移住を希望する人が多いのではないかと思うし、子どもがいなくなれば時間とともに、土地に残って戦う人の数は減っていく。過去の歴史にこだわって戦っているのは一部の人だけで、殆どの人は国ガチャで、運悪く紛争地域に生まれてしまって巻き込まれているだけだと思うから。
リゾート地ならば、頑張ってお金を貯めて旅行者として訪れることができるしね。どんな形でも二度と故郷の地を踏めないわけじゃないんだという気持ちの拠り所はやはり必要だと思うから。
戦争がなくなることに、戦争で潤う既得権益を持つ人たちは反対するだろうけど、国が攻撃されたらまず世界の警察に訴えて止めてもらって、国際裁判で裁いてもらうことができたら、全ての国の人が安心して暮らせるんじゃないかと思うんだ。個人レベルだと当たり前なことなのに、国レベルだと戦争以外に選択肢がなくなることがおかしいよね。僕が言っているのは理想論で甘いってことはわかってるんだ。でもどんなに現実離れしていても、それを叩き台にしてアイディアを出して戦争を地球から無くす努力を続けなくては、核爆弾も守ってもらうお金もない国は、ある日突然攻撃されても誰にも守ってもらえないし、最終的には核を保有する大国しか残らなくなってしまうよ。