
海底ケーブルの突然の切断
2024年12月26日の朝、気温は-2°C。フィンランド湾の上空には霧が漂い、波が暗い海を揺らしていました。船が行き交うこともないこの静かな海では前日、フィンランドとエストニアを結ぶEstLink 2電力ケーブルが突然停止しました。警告もなく、明確な理由もなく電力供給が途絶え、ネットワークは650メガワット以上の電力を失ったのです。この電力量は例えれば、フランス第2の都市であるリヨンの3倍の消費量に相当します。
フィンランドの分析官たちは、夜間の航行データを照合しました。あるタンカーが、ケーブルの真上で異常に低速で数時間航行していました。意図的に切断された可能性があり、ダイバーが現場に派遣されました。水深50メートルの地点で巨大な歪んだアンカーが発見され、その下のケーブルには事故とは考えられない鋭利なもので切断された跡がありました。アンカーは石油タンカーのものと見られ、2日前にロシアを出発していた「Eagle S」が事故を装うために故意に落としていったものであると見られています。
ヨーロッパの海域の深部では、秘密裏に戦争が繰り広げられています。過去3年間、幽霊船が海底ケーブルを破壊し、ガスパイプラインに穴を開け、重要なインフラに接近しているのです。敵対的な勢力、特にロシアが、これらの作戦を公にせずに周辺国の防衛力を試しています。


オリガルヒのヨットも関与か
2025年4月、英国の機関は、英国沖の海底に監視センサーが設置されていることを発見しました。この装置は、国の抑止力を構成する4隻の核潜水艦の動きを追跡することができます。「大西洋では戦争が激化している」と、ある高官がSunday Timesに語っています。「海底におけるロシアの活動は驚異的です」。
調査によるとロシアは、標的となるインフラの地図作成、ハッキング、必要に応じて破壊するための比類のない能力を動員しています。英国の情報機関は、オリガルヒのヨットも作戦に参加していると見ています。これらのロシア政府と密接な関係のある実業家の船は、「ムーンプール」を搭載している可能性が高く、これらの内部プールは、可動式の床から海中で偵察装置を展開することができます。
ヨーロッパの深海で許可なく活動を続けるスパイ船「Yantar」
ヨーロッパの海域で最も監視されている船の一つである「ヤンター(Yantar)」は、大砲もミサイルも搭載していません。公式にはロシア海洋研究所に所属していますが、ロシア海軍の秘密部隊であるGUGIの影がこの全長107メートルの船に付きまとっています。クレーン、ドーム、アンテナを備えたこのスパイ船は、最大6,000メートルの深さで作業可能な2隻の自律型ミニ潜水艦を搭載しています。科学者によると、これらの深海は人類にとって月の表面よりも知られておらず、この深度で生息している90%以上の生物は未確認のままです。
2025年1月21日、ロンドンの当局は「Yantar」を英仏海峡で発見しました。英国当局は、2隻の軍艦「HMS Somerset」と「HMS Tyne」を派遣し、核を装備した航空機の出動を許可しました。
ウェストミンスター議会で、国防副大臣のジョン・ヒーリーはウラジーミル・プーチン大統領に呼びかけました。「我々はあなたを見ている。あなたが何をしているか知っている。そして、この国を守るために断固たる行動を取ることをためらわない」。

フランス海軍が「Yantar」を地中海で確認
フランスでも2025年1月14日に、NATOの海上司令部(MARCOM)が、フランス海軍のATL2(アトランティック2)哨戒機がロシアの調査船「Yantar」を地中海で追跡・監視した際の写真を公開しました。写真にはヨーロッパと中東を結ぶケーブルに沿って航行する様子がはっきりと写し出されています。
NATOがすぐにその写真を公開した理由は、連合軍は自分たちが盲目でも無知でもないことをはっきりと示すためです。冷戦時代の再来とも言える状態に陥っていますが、いつまで冷戦のままでいられるかは、これらのメッセージに対するロシアの反応によるでしょう。
戦略的交差点であるバルト海
ウクライナでの紛争の余波で生じたこれらの緊張は、バルト海では頂点に達しています。NATO加盟国の8カ国がこの狭くて浅い内海に面しており、ロシアと対峙しています。この戦略的交差点には、数百キロメートルのデータケーブル、エネルギーパイプライン、軍事センサー、海底盗聴システムが集中しています。
2022年9月、デンマークのボーンホルム島沖で、ノルドストリーム1および2のガスパイプラインが4回爆発しました。これらのロシアのインフラは、ヨーロッパにガスを輸出するためのものです。それ以来、これらの海域では少なくとも11件の事件が報告されています。「我々は戦争中ではない。しかし、平和でもない」と、スウェーデンのウルフ・クリステルソン首相は年初に苦々しく語りました。
この現象は加速しています。西側の情報機関は、電子的な侵入、地図作成の偵察、最も敏感な地域へのセンサーの設置について言及していますが、公式には責任者を非難することはできません。なぜならほとんどの場合、違反した船は太平洋の小国や他のタックスヘイブンの旗を掲げており、その他の船については、技術的な証拠が不足しているからです。
中国の関与?
脅威となっているのは、ロシアだけではありません。2024年11月には、中国の貨物船「Yi Peng 3」が2本の通信ケーブルを損傷しました。この船は自動識別システムを無効にし、300キロ以上にわたってアンカーを引きずったとされています。「誰もこれらのケーブルが偶然に切断されたとは思っていない」と、ドイツのボリス・ピストリウス国防大臣は非難しました。
この件について、スウェーデンの調査官は4月に報告書を提出しています。調査では意図的な破壊工作の存在を証明することは不可能ですが、北京とモスクワの協力の可能性が示唆されています。
3月末には、中国当局は直径15センチのケーブルカッティングロボットを発表しました。これは深さ4,000メートルまで作業可能です。
放射能津波の脅威
1970年代以来、大国は潜望鏡越しに互いを観察しています。目的は時代とともに変化しています。現在、約600本のケーブルが全世界で140万キロ以上を走り、世界のインターネットトラフィックの約99%を占めています。金融データ、外交通信、軍事フロー、個人取引がこれらの光ファイバーのパイプを通じて流れています。
これらの重要なラインは非常に脆弱です。監視が不十分で、保護が不十分で、しばしば単純な鋼板やコンクリートの上に設置されています。そして、ロシアの最新の海中兵器の脅威は計り知れません。破壊やスパイ活動を目的としていないと公言されているポセイドン号は、破壊以上の壊滅を目的としているのです。
2018年、ウラジーミル・プーチンはこの自律型核魚雷の開発を発表しました。これは最大100メガトンの爆発力を持ち、広島に投下された爆弾の10倍です。
モスクワによれば、この兵器に搭載された小型原子炉により海面下1,000メートル以上の深さを、数千キロメートルにわたり極めて静かに航行し、沿岸近くで爆発することが可能であるとされています。
その衝撃波は、放射能を帯びた津波を引き起こすとされています。これにより、該当地域は数十年、あるいは1世紀にわたり居住不能となる可能性があり、このような脅威を阻止できるのは、対潜水艦戦システムのみであると考えられています。
今日も深海の静寂の中では、目もくらむような戦いが密かに進行しているのです。

ヨーロッパは既に戦争状態にあるとEUが再三に渡って公表しているけれども、EU域外の国から見たら、攻撃されているウクライナはEUの加盟国ではないし、外野が何を騒いているんだと思うかもしれない。でもロシアに脅威を与えることが軍備強化の目的だったはずが、実戦のために軍備を強化しなければ守りきれない状態にまで追い込まれつつあることが実情なんだ。ロシアの目的はウクライナだけじゃない。ロシアの野望はロシアが一番権力を持っていた時代、帝政ロシアの復活だ。これはプーチンもはっきりと公言しているし、その目的のためにはウクライナ侵攻は必然だと捉えるロシア国民も多いんだ。しかし野望の実現のためにはウクライナだけでなくEUのいくつかの国も奪還する必要がある。ドイツ(当時はプロイセン王国)の東部領土の一部も、強い時代のロシアに編入された歴史があるから、ドイツだってロシアに属すべきと考えている可能性もある。世界の中で落ちぶれた貴族のような扱いを受けているロシアの国民にとって、たった数年で崩壊していまったソ連という国家体制の消滅は今だに受け入れられる事実ではなく、アメリカやヨーロッパ諸国に対する恨みは深い。栄光を取り戻すことは悲願とも言える目標だから、プーチン後の政権にも引き継がれる可能性は高いと見られているんだ。強いアメリカを取り戻す!がスローガンのアメリカで、インフレなどの不便を強いられてもトランプ大統領を支持し続けている国民が半分近くいるのも、ロシア国民と心情は近いのではないかという気がする。世界の頂点に立つということはそれほど大事なことなんだろう。
戦争は、ミサイルや戦車によって突然始まるものではなく、病気と同じで、もっと言えば癌と一緒で、目に見えるようになったらそれはすでにだいぶ進行してしまっていて、手遅れの可能性もあるんだよ。特に現代の戦争は目に見えやすい地上戦よりも、海底、宇宙衛星の攻撃から始まることが多くて、実際にウクライナも、地上戦の前に衛星から、そして海底から攻撃が仕掛けられていた。
現時点では確かに、EUは総合力で判断すれば、軍備においても兵力においてもロシアを上回っている。でもある日突然、海底ケーブルが全て切断され電力がシャットダウンし、同時に衛星からの通信も破壊されてしまったら、加盟国はどうやって団結できるだろう。まず市民の生活が混乱し、病院は危機状態に陥り、いろいろな場所でセキュリティが意味をなさなくなり、暴動や犯罪が多発するだろう。(2025年4月28日にスペインとポルトガルで発生した大規模停電の原因はわからないままだし、2025年5月24日にフランス南部のカンヌおよび周辺地域で発生した大規模停電の原因は、放火および送電設備への破壊行為によるもので、極左の犯行が疑われているけどロシアの関与である可能性が示唆されている。フランスの極左はロシアと手を組んでいるからね。自然災害がないのにこんなに大規模停電が多発するのは偶然じゃないでしょ)もしも大停電が各国同時に発生したら、軍隊は人々の鎮静と救助を優先しなければならず、加盟国と団結してロシアと戦う余裕はない。フランスなどエネルギー資源を海底ケーブルに頼っていない国でも、多くの情報を海底ケーブルと衛星が握っているから、EU各国が、各市民が情報から孤立してしまう。軍備が電力や通信に頼っている現代では、それを遮断されたら兵力は第一次大戦時以下だ。最先端のミサイルをいくつ持っていても機能しない。プーチンはそれを計算してウクライナのエネルギー施設を真っ先に攻撃したけど、既に欧州に対しても周りから少しずつ攻撃を始めているんだ。
戦争はなんとしても避けたいけど、こんな状態になってしまったら、様々な脅威に備える以外に何ができるだろう?
この報道で個人的に1番頭にきたのは、3月に中国当局が深さ4,000メートルまで作業可能の、直径15センチのケーブルカッティングロボットを発表したことだ。11月の通信ケーブルの切断は言わば最終実験で、自国の技術の証明だと自慢しているようなものだ。中国らしいと言えばそれまでだけど、そんなあからさまな嫌がらせをこの時期に国家として誇らしげに発表できることがショックだし、開発者は自分の研究の成果に満足しているのだろうか。
破壊だけを目的として開発され、成果をあげるほど人々から憎まれ、破壊されるロボットたちの運命を思うと涙が出てくるよ。いっぽうでは工場などで毎日きびきびと働いて感謝されているロボットもたくさんいるというのに。でもこれはセンチメンタルで言っているだけじゃない。
ロボットを戦争に利用することは(もう始まっているけど)、核兵器と同じかそれ以上に恐ろしいことなんだよ。ロボットに感情はないからと軽視して使い捨てにできる時代は終わったんだ。遠くない未来に破壊機能を備え、人工知能により意思を持ったロボットたちの制御ができなくなり、反乱を起こして人間たちに復讐する日が来たら、敵国の人間たち以上に勝ち目はないんだ。ロボットは壊れても自己修復ができるし死を恐れない。これはもうSFの話じゃないんだよ…