日仏が協力してレアアースリサイクル工場を建設

中国依存からの脱却を目指す欧州最大級リサイクル工場の挑戦

日仏が挑む資源安全保障の新戦略

欧州初の大規模レアアースリサイクル工場「Caremag」プロジェクトの全貌

電気自動車、風力発電、ロボット、半導体、さらには防衛産業まで。
現代の産業とエネルギー転換を支える多くの分野で不可欠な素材が「レアアース」です。しかしその供給は、長年にわたり特定の国、とりわけ中国に大きく依存してきました。

この構造的な依存を是正し、欧州と日本の資源安全保障を強化するために始動したのが、フランス南西部ラックで建設が進むレアアースリサイクル・精製工場「Caremag(カレマグ)」です。本プロジェクトは、単なる新工場建設ではなく、地政学、産業政策、環境戦略が交差する象徴的な国際プロジェクトとして位置づけられています。

欧州初の世界規模レアアースリサイクル・精製工場の誕生

Caremag工場は、フランス南西部ピレネー・アトランティック県ラックに位置します。かつてトタルエナジーズのガス処理施設として使われていた約5ヘクタールの敷地を再活用し、レアアースのリサイクルと精製を一体で行う欧州初の工業規模施設として建設されています。

2025年3月17日に起工式が行われ、フランス政府、日本政府、産業界の代表者が一堂に会しました。フランスのアニエス・パニエ=リュナシェ・エネルギー移行大臣は、この工場を「フランスおよび欧州にとって画期的な戦略プロジェクト」と位置づけ、2026年末から2027年初頭の操業開始を目標に掲げています。

この工場が目指すのは、使用済み永久磁石や製造工程で発生する端材、さらには前処理された鉱石精鉱を原料として、高純度のレアアース酸化物を安定的に生産する体制の確立です。

カレマグ社とは?

Caresterが描く産業ビジョン

Caremagは、フランス・リヨンを拠点とする技術系企業Carester(カレスター)を母体としています。Caresterは2019年設立の比較的新しい企業ですが、レアアースの分離・精製技術に特化し、研究機関や産業界と連携しながら技術開発を進めてきました。

Caremagは2020年に設立され、Caresterの産業化部門を担う存在として位置づけられています。従業員は将来的に約90人規模を想定し、研究開発から産業生産までを一体で行う体制を構築しています。

同社の特徴は、単に原材料を精製するだけでなく、

  • 使用済み磁石の回収

  • 解体・選別

  • レアアースの再抽出

  • 副産物の再利用

までを含めた完全循環型モデルを志向している点にあります。

なぜレアアースなのか:永久磁石が握る産業の要

レアアースは17種類の元素群から成り、特にネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムは、高性能永久磁石(NdFeB磁石)に不可欠です。

永久磁石は、

  • 電気自動車の駆動モーター

  • 風力発電タービン

  • 産業用ロボット

  • ドローン

  • 医療機器

  • 防衛装備

など、現代産業の中枢を担っています。小型・軽量でありながら強力な磁力を発揮できるため、エネルギー効率向上と小型化の両立が可能になります。

しかし、これらの磁石に必要なレアアースの採掘・精製は、現在も中国が圧倒的なシェアを占めています。特に重希土類は中国依存度が極めて高く、供給制限が行われれば産業全体が揺らぎかねません。

生産能力と戦略的インパクト

Caremag工場がフル稼働した場合、以下の生産能力が計画されています。

  • 軽希土類酸化物(ネオジム・プラセオジム)
    年間約800トン

  • 重希土類酸化物(ジスプロシウム・テルビウム)
    年間約600トン

この重希土類の生産量は、世界全体の約15%に相当するとされており、中国以外では最大級の供給源となります。欧州にとっては、初めて実効性のある代替供給拠点を持つことを意味します。

日仏官民連携という資源外交モデル

Caremagプロジェクトのもう一つの重要な特徴は、日仏の官民が深く関与している点です。

総投資額は約2億1600万ユーロ。

  • フランス側:約1億600万ユーロ
    (France Relance、France 2030、税制優遇など)

  • 日本側:約1億1000万ユーロ
    (JOGMECおよび岩谷産業による出資・株主ローン)

日本側は資金提供だけでなく、生産される重希土類酸化物の長期購入契約を締結しています。これにより、日本は中国依存を低減しつつ、安定した供給源を確保できます。

フランス政府は、日本を「長期的視野を持つ信頼できるパートナー」と明確に位置づけており、この協力関係は経済安全保障の文脈でも重要な意味を持ちます。

環境配慮と循環型産業モデル

Caremag工場は、エコロジーの観点からも革新的です。

  • 液体排出物を出さないプロセス

  • CO2直接排出量の約80%を回収・再利用

  • 副産物である硝酸アンモニウムを肥料として再利用

  • 水使用量の最小化

これらは単なる環境配慮ではなく、欧州の環境規制を前提とした産業競争力の確保でもあります。パニエ=リュナシェ大臣は、「環境移行に投資する者こそが真の愛国者」と述べ、産業政策と環境政策を同時に進める姿勢を強調しています。

現在の進捗状況と今後の工程

2025年末時点で、

  • 用地整備と基礎工事は完了

  • 主要設備の据付が段階的に進行中

  • サプライチェーン(原料・販売先)の契約は確定段階

にあります。2026年に試運転、2027年に本格操業というロードマップが維持されています。

並行して、フランス国内ではMagREEsource、Solvay、Oranoなどが関連プロジェクトを進めており、ラック周辺は欧州レアアース産業の中核拠点になりつつあります。

資源安全保障の文脈で見たCaremagの意味

EUは2023年に「重要原材料法」を採択し、2030年までに

  • 域内採掘10%

  • 精製40%

  • リサイクル15%

という目標を掲げました。Caremagは、この目標達成に直結する数少ない実体プロジェクトです。

国際エネルギー機関は、2040年までにクリーンエネルギー向けレアアース需要が現在の3〜7倍に増加すると予測しています。その中で、Caremagは単なる供給拠点ではなく、欧州が主体的に資源を管理するための試金石といえます。

Caremagは「工場」ではなく「戦略」

Caremagは、

  • 産業政策

  • 環境政策

  • 地政学

  • 日仏協力

が交差する、極めて象徴的なプロジェクトです。
中国依存からの脱却を目指す欧州にとって、そして資源多角化を進める日本にとって、この工場は未来の供給網を先取りする存在となります。

リサイクルを核としたレアアース戦略は、今後の世界的な資源競争において重要な意味を持ち続けるでしょう。

この発表がこの時期になって本当に良かった。 トランプ米大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に対して、紛争終結後の安全保障支援を確約する条件として、レアアースなどの権益譲渡を迫っているというニュースが世界を巡り、やっぱりレアアースの資源開発も中国と米国の一騎打ちか、という殺伐とした雰囲気になっているけど、フランスがレアアース開発を目指しているのはかなり以前から伝えられていたから、フランスが中国と米国の独占競争を崩せると良いなと思っていた。

フランスの技術に対する信頼はあったけど、フランスあるあるというか、途中でプロジェクトが頓挫・中断してしまうことだけが心配だった。そこへ日本が、しかも岩谷産業さんがパートナーとして入ってくれることがわかって、「これで大丈夫だ!」と胸を撫で下ろしたよ。

カセットコンロで知られている岩谷産業さんは、LPG分野で日本の市場占有率1位の総合エネルギー企業で、リチウム・コバルト・マンガン等も扱う資源商社である他に、びっくりくらい多種類の事業を行っているんだ。でも単に経営の多角化というだけではなくて、一見関係がないように思える事業が面白いほどうまく繋がっているんだよね。しかも、どの事業に対してもすごく丁寧に、岩谷産業さん自身がしっかりと調査・マネージメントをしている。

ヨーロッパ進出は企業にとってハードルが高くて、良い製品だからといって必ずしも成功できるわけではないんだ。しっかりと腰を据えて長い目で取り組まなくては、そう簡単に受け入れてくれるような開かれた市場ではないし費用もかかる。それに長い目でとは言っても、時代の変化への対応も求められるし、ヨーロッパ市場に向けた細かい変更も求められ、しかも日本らしさも無くしてはならないという、注文が多くて面倒な市場なわけだけど、岩谷産業さんは小さな市場から丁寧に柔軟に市場を開拓してきたんだ。世界中で事業展開をしているけど、その土地ごとにアプローチのしかたを柔軟に変えているんだよね。

僕は20年以上前に一緒にお仕事をさせていただいたことがあるんだけど、大企業なのに、いい意味でスタートアップのような姿勢を失っていないことに感銘を受けて、海外で成功していく秘訣はこういうところなんだなと思ったことを憶えている。 この大きなプロジェクトの受注に関しても、いきなり浮上したわけではなく、これまでの地道な努力が信用に繋がった結果だと思うんだ。

僕は日本とフランスがチームを組むのは、エネルギー分野がお互いの良さを一番発揮できる分野じゃないかと思うんだ。フランスも日本も技術は高いけど強みは違う、でもお互いに資源が豊富な国じゃないから、アイディアで勝負することが必要な状況なのは一緒だ。

フランス人が得意なのは、冒険や発明。好奇心が強く個性的で、新しいアイディアやデザインを生み出すことが得意なうえに技術力も高く、無理だと言われても押し通す忍耐力もある。いっぽうで個性を出すことがマイナスになってしまうような、チームで進める作業や、細かさや丁寧さが求められる作業を日々繰り返すことは苦手な人が多いんだ。だから作業にムラが出てしまって、事故や問題が起きる原因になってしまう。

原発大国なのに、爆発事故だとか蒸気漏れの事故はわりと頻繁に起こしていて、作業員が100人以上被曝したとか、日本だったら謝罪会見レベルの事故でも普通にニュースで流れるくらい。原因は地震などの天災と違って、だいたいが聞いて呆れるようなうっかりミスの人災だから余計たちが悪いよね。国民も大雑把だから文句言う人もあまりいないけど、原発事故の影響を受けるのは自分たちだけじゃないから、ちゃんとしなきゃだめだよね。当たり前のことすぎて書いていて情けないけど。

やっぱりフランスの(というか世界の)原発は、検査やメンテで世界一のレベルを誇る日本の人たちに保守を任せることが理想的だと思うんだ。丁寧さが求められる細かい作業を毎日根気よく続けられるという、フランス人の弱点を補ってくれる強みがあるからね。日本の人たちにとっては当たり前のことかもしれないけど、世界的に見ても特殊な能力だと思うんだ。自国の製造業などに活かすだけではなくて、能力自体を売りにして輸出すべきだと思う。それが無理ならせめて保守のプログラムを作成して教育を担当してもらって、日本式の保守ができるフランス人を育てるトレーニングシステムを開発するとか… 

一番の理想を言えば、日本で原発の保守專門の会社を作って、検査員や管理者を世界に派遣してもらえたら、自然由来以外の原発事故は、かなり防げるのではないかと思うんだ。(自然由来の事故が起きたとしても、日本は経験豊富だから他の国より復旧は絶対に早いと思うし。)世界的にも、災害時などに派遣される日本の自衛隊の復旧活動の速さと仕事の質には定評があるから、平時からお願いできる民間の派遣会社があったら、助かる国や施設は多いと思う。

ウクライナの原発の修復は近い将来に確実に必要になるし、マクロン大統領はこれから原発をたくさん建設すると宣言しているし(以前は国民の半数程度が反対していたけど、ウクライナ侵攻によるエネルギー危機以降は反対の声は殆どあがらなくなって、国民も原発を産業の中心にするという現実に腹を括ったみたいだ)、自然災害の多い日本は原発に向いた国ではないし、新たな原発の建設は世論的にかなり難しいと思うので、原発はフランスに建設して、保守を日本が担当するというような構図であれば、両国のエネルギー供給の安定に繋がるのではないかと思うんだけど。難点は両国が地理的に遠いことだけれど、そこはなんとか輸送手段を発明してもらうとして… 実現の可能性はいかに?

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画像出典:本記事内の画像は、生成AIを用いて制作したオリジナル画像であり、第三者の著作権を侵害するものではありません。

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