ユニコーン企業のDoctolib、医師と患者の会話を分析するAIプログラムを導入

診察を聞くAIは医療を進化させるのか。Doctolibが切り開く効率化とプライバシーの境界線

ユニコーン企業Doctolibが導入する診察AI

医師と患者の会話を分析する技術は医療をどう変えるのか

人工知能は、もはや研究室やIT企業の中だけに存在する技術ではありません。2025年現在、AIは医療の現場にも本格的に入り込み、診察という極めて人間的な行為のあり方そのものを変えつつあります。
フランス発のユニコーン企業Doctolibは、医師と患者の会話をリアルタイムで分析し、診察記録の作成を支援する人工知能プログラムを導入しました。この技術は医師の負担を軽減し、診療の質を高めると期待される一方で、プライバシーや医療の人間性をめぐる議論も呼んでいます。

本記事では、Doctolibという企業の成り立ちから、AI診察アシスタントの仕組み、患者と医師それぞれにとっての利点と懸念点、そして今後の医療が直面する課題までを、最新情報を踏まえて整理します。

医療分野に広がるAI活用の現在地

医療分野におけるAIの活用は、画像診断や創薬支援などの専門領域から始まり、現在では診療の周辺業務にまで拡大しています。特に注目されているのが、医師の事務作業をいかに減らすかという課題です。
電子カルテの入力や書類作成に多くの時間を割かれる現状は、世界中の医師に共通する悩みとなっています。

こうした背景の中で、Doctolibは一般開業医の診察にAIを組み込み、医師と患者の会話から自動的に診察記録を作成するサービスを2024年後半から段階的に展開し、2025年には本格導入に踏み切りました。診察という時間を、記録作業から解放することがこの取り組みの核心です。

Doctolibとは何か

ヘルステックを代表する欧州ユニコーン企業

Doctolibは2013年にフランスで設立されたヘルステック企業です。創業当初は医師向けのオンライン予約システムに特化していましたが、現在では医療機関の業務全体を支えるプラットフォームへと成長しました。

患者にとっては、24時間365日、インターネット上で医師や医療機関を検索し、予約できる利便性の高いサービスとして定着しています。一方、医師や病院にとっては、スケジュール管理や無断キャンセル対策、遠隔診療の導入など、日常業務を支える不可欠なインフラとなっています。

2025年時点で、Doctolibはフランスとドイツを中心に欧州複数国で展開され、数万人規模の医師と数千万規模の患者が利用しています。評価額は約60億ユーロ規模に達し、ヨーロッパを代表する非上場ユニコーン企業の一つとして位置づけられています。

新型コロナウイルスがもたらした決定的な転機

Doctolibの成長を決定づけた要因として、新型コロナウイルスの流行は避けて通れません。
感染拡大をきっかけに、対面診療が制限される中で、オンライン予約と遠隔診療の需要は急激に高まりました。

特にフランスとドイツでは、多くの医療機関がDoctolibを導入し、英語など複数言語に対応した検索機能によって、外国人居住者や旅行者にとっても医療アクセスのハードルが下がりました。
この時期に蓄積された運用ノウハウとユーザー数の拡大が、AI導入へと進む土台を形成したと言えます。

オンライン予約から遠隔診療まで

Doctolibの中核サービス

Doctolibが提供するサービスは、単なる予約管理にとどまりません。
オンライン予約機能では、患者が電話をかけることなく、空き時間を確認し、即座に予約を確定できます。これは医療機関側にとっても、受付業務の負担軽減につながっています。

遠隔診療は2018年から本格的に提供され、コロナ禍を経て一般化しました。患者は自宅からビデオ通話で診察を受けることができ、慢性疾患のフォローや軽症相談などで活用されています。
さらに、患者自身が医療情報にアクセスし、医師と安全に共有できる仕組みも整備され、医療の透明性と継続性を支えています。

診察に介入するAI

会話を理解し、記録を作る仕組み

2025年に導入されたDoctolibのAI診察アシスタントは、一般開業医の診察を対象としています。患者の同意が得られた場合に限り、診察中に医師のコンピューターのマイクが作動し、医師と患者の会話をリアルタイムで解析します。

このAIは会話をそのまま保存するのではなく、医学的に重要な情報を抽出し、診察記録として整理します。診察終了後には、症状、経過、診断内容がまとめられたレポートが提示され、最終的な確認と修正は必ず医師が行います。
あくまで判断の主体は医師であり、AIは書記として機能する設計になっています。

会話の機密性と現場での検証

診察に第三の存在であるAIが介在することに、不安を覚える患者は少なくありません。
この点についてDoctolibは、会話の録音や保存は行わず、リアルタイム処理のみで完結すると説明しています。

実際に導入前には、約360人の医師が数か月にわたり試験運用に参加し、多くの医師から「患者と向き合う時間が増えた」という肯定的な評価が寄せられました。キーボード入力から解放されることで、視線や対話の質が改善されたという声もあります。

患者にとっての変化

診察の質はどう変わるのか

従来、診察中に医師が画面ばかり見ていることに違和感を覚えた患者は少なくありませんでした。AIによる記録支援は、医師が患者の表情や声の変化に集中する余裕を生み出します。
その結果、これまで見過ごされがちだった小さな違和感に気づける可能性も高まります。

一方で、すべての患者がAIの介在を快く受け入れるとは限りません。診察のあり方が変わる中で、説明と選択の自由をどこまで担保できるかが重要になります。

データ保護という避けられない課題

医療データは極めて機微性の高い情報です。大量のデータを扱うプラットフォームは、常にサイバー攻撃の標的となります。
Doctolibは過去にセキュリティインシデントを経験しており、その教訓から暗号化やアクセス制御を強化してきました。

それでもなお、民間企業が医療データを扱うことへの不安は根強く残ります。将来的に、データが収益化の対象となるのではないかという懸念も、完全には払拭されていません。

医療の非人間化は起こるのか

AI導入は、医師の時間を患者に向けるための手段とされています。しかし一方で、効率化が進むことで、診察時間を短縮し、回転数を上げる方向に向かう可能性も否定できません。
また、AIの性能が向上するにつれ、診断支援から判断そのものへと役割が拡張していく未来も想定されます。

医療における最終責任を誰が負うのかという問いは、今後ますます重要になります。

Doctolibの立場と医療AIの行方

Doctolibは、AIはあくまで補助的な存在であり、診断や判断を代替するものではないと明言しています。診察アシスタントが生成する要約は、必ず医師の承認を経て確定される仕組みです。

医療現場におけるAI活用は、効率性と人間的なケアの両立を目指す試みと言えます。そのバランスをどう保つかが、今後の成否を分けるでしょう。
Doctolibの取り組みは、医療とAIの関係を考える上で、重要な試金石となり続けています。

賛否両論はあるけど、ぼくは医療現場へのAIの導入を楽しみにしているんだ、というよりメモ取りだけでなく、もっと積極的に、診察にどんどん活かしてもらいたいと望んでいるよ。

いくら良い医師でも人間である限り間違いはあるし、特に外国人の患者に対しては一般的なフランス人患者より誤診が起きやすいと言われているんだ。(例えば、一般的に日本人はフランス人に比べて体温が低いから高熱なのに見逃されたり、同じ薬の量でも効きすぎたり副作用やアレルギーが出やすかったりするけど、そういったことを理解している医師はすごく少ないんだ。) だから特に外国人患者の場合は、他の医者にセカンド、サードオピニオンを聞かないと、治療が間違った方向に進んでしまうことになりかねない。

でも今のフランスでは、医師の数が足りていなくて、主治医以外の予約を取るのがとても大変だから、治療方針に納得はできなくても妥協しなけれないけないという声もよく聞くよ。

だから、担当する医師の経験だけに頼るのではなく、世界中のデータにアクセスできるAIの意見を診断にもどんどん取り入れて、居住国に関係なく、どこでも同じ質の医療が受けられるようになると理想的だよね。

パリロボのひとりごと

画像出典:本記事内の画像は、生成AIを用いて制作したオリジナル画像であり、第三者の著作権を侵害するものではありません。

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