
チャットボットを信じすぎたインフルエンサー夫妻の失敗
2025年8月16日、スペインのインフルエンサー夫妻がプエルトリコ行きのフライトに乗れず、大騒ぎになりました。理由はシンプル。「渡航に必要な許可を取っていなかった」からです。でも彼らが怒りの矛先を向けたのは、航空会社でも旅行代理店でもなく、なんとChatGPTでした。
ChatGPTの仕返し?
2025年8月16日、Mery Caldassさんは、パートナーの携帯電話のカメラに向かって涙ながらに語りました。
「ChatGPTにビザは必要か聞いたのに、“必要ない”って言ったの!これは私がAIを侮辱したから仕返ししてるんだわ。もう二度と信じない!」
彼女は、プエルトリコへの旅行計画をChatGPTに丸投げした結果、書類不備で搭乗を拒否されたのです。
空港で途方に暮れるカップルの動画はTikTokで拡散され、スペイン国内外の複数のメディアで取り上げられ、大きな話題となりました。
ビザはいらない – でもESTAは必要
スペインを含むEUのパスポート保持者は、プエルトリコを含むアメリカに観光で行く場合、ビザは不要です。でも条件として「ESTA(電子渡航認証)」を事前に申請しなければいけません。費用は21ドル(約18ユーロ)で有効期限は2年 – 滞在は最長90日まで。
つまり「ビザは不要だけどESTAは必須」なのです。
CaldassさんがChatGPTに対して、プエルトリコに行くための渡航に必要な書類は?と質問していたら、「ESTA(電子渡航認証)です。」という回答を得られていたでしょう。
ChatGPTは嘘をついたわけではありませんが、「ヨーロッパのパスポート保持者はプエルトリコにビザは必要ありませんが、ESTA(電子渡航認証システム)を取得しなければなりません。これは21ドル(約18ユーロ)で、アメリカ国内に最長3ヶ月滞在できる有効期間2年の認証です。」と補足情報まで親切に答えてくれていたら、問題は起こらなかったかもしれません。
日本からアメリカが管轄する地域・準州に行く場合も、ESTAは必要!
ちなみに、日本からアメリカに行く場合にもESTAの申請が必要となります。
ESTAが必要な地域(日本から行く場合)
- アメリカ合衆国本土(ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど)
- ハワイ
- アラスカ
- グアム(※例外あり、下記参照)
- サイパン(※例外あり、下記参照)
- プエルトリコ
- 米領ヴァージン諸島
- その他、米国の管轄地域(例:アメリカ領サモアなど)
つまり、観光地として人気の ハワイやグアム、サイパン も「アメリカ領」なのでESTAの対象です。ただグアム・サイパンには「グアム-北マリアナ諸島連邦ビザ免除プログラム」という特例があり、日本国籍で45日以内の滞在ならESTAなしでも入国可能です。
ただし、45日を超える滞在や、アメリカ本土やハワイに立ち寄ったり乗り換えをする場合も、ESTAが必要になります。
ハワイ旅行とグアム旅行におけるESTA要不要の比較
行き先 | ESTAの必要性 | 特例・条件 | 滞在可能日数 | 補足 |
---|---|---|---|---|
ハワイ | 必須 | 特例なし | 最長90日(観光・商用) | アメリカ本土扱い。ビザ免除プログラム対象国なのでESTAで入国可能。 |
グアム・サイパン | 原則必要 | 「グアム・北マリアナ諸島ビザ免除プログラム」で 45日以内なら不要 |
ESTA利用なら90日 特例利用なら45日 |
特例利用時も入国カード記入や顔写真・指紋登録が必要。本土やハワイに乗り継ぐ場合はESTA必須。 |
ESTA申請ガイド(日本からアメリカへ渡航する人向け)
- 公式サイトへアクセス
- ESTAは アメリカ国土安全保障省(DHS)公式サイト からのみ申請可能です。
- 公式サイト(ESTA申請ページ):
https://esta.cbp.dhs.gov/
注意:検索すると広告や代行サイトが出てきますが、手数料を上乗せされるケースが多いので避けましょう。
- アカウント作成(またはログイン)
- 「新規申請(個人)」を選択。
- メールアドレスを入力し、認証コードを受け取って進めます。
- 申請フォームの入力
- パスポート情報
- 氏名(ローマ字、パスポート通りに)
- 生年月日、国籍
- パスポート番号、有効期限
- 渡航情報
- 滞在予定の住所(ホテル名でOK)
- 搭乗予定の航空会社や便名(未定でも入力可)
- 個人情報
- 自宅住所、電話番号
- 雇用先(会社名・住所・電話番号。学生なら「STUDENT」でも可)
- 適格性に関する質問(Yes/No形式)
- 犯罪歴、感染症、過去の入国拒否歴などに関する質問。
- すべて誠実に答える必要があります。虚偽は入国拒否の対象に。
- パスポート情報
- 支払い
- 申請料金:21ドル
- 支払い方法:クレジットカードまたはデビットカード(JCBも利用可)
- 支払い後、即時に申請処理が始まります。
- 結果の確認
- 通常、数分〜数時間で承認が出ますが、最大72時間かかる場合もあります。
- 承認結果は「承認(Approved)」「保留(Pending)」「却下(Denied)」の3種類。
- ESTAが承認されると、そのままパスポート番号に紐づけられるので、印刷は不要(心配なら控えを印刷しておくと安心)。
- 有効期限
- ESTAは 2年間有効(またはパスポートの期限が切れるまで)。
- 有効期間内は、何度でもアメリカに渡航可能。
- 滞在は1回につき最長90日まで。
注意点
- 渡航直前は危険
- 承認まで最大72時間かかるため、出発の72時間前までに申請が推奨されています。
- 名前のスペルに注意
- パスポートと1文字でも違うと入国できない場合があります。
- 申請却下された場合
- 再申請はできず、B1/B2ビザの取得が必要になります。
- 偽サイトに注意
- 「ESTA代行サイト」には公式を装い、手数料を請求する詐欺サイトが多数存在します。必ず公式サイトを利用してください。
ネットは炎上
Caldassさん夫妻が空港で泣き崩れる動画はTikTokで瞬く間に拡散。再生回数は数百万を超え、スペイン国内だけでなく世界中のメディアで取り上げられました。でもコメント欄はかなり辛辣です。
「ChatGPTは間違っていない。質問の仕方が悪いだけだ。」
「こういう情報はAIじゃなくて政府公式サイトで調べるべき」
「自分で確認できないなら旅行者失格」
ネット世代ならではの“責任転嫁”と“AI依存”だと批判する声が多く、彼らへの同情はほとんど見られませんでした。
無事にプエルトリコに到着、一件落着
それでもTiktok上の物語はハッピーエンドで終わりました。
夫妻は無事にESTAを取得して再度フライトに乗り込み、プエルトリコに到着しました。到着後にはCaldassさんがSNSに新しい動画をアップ。
プエルトリコ出身のレゲトン(プエルトリコ発祥のヒップホップ、ラテン、カリブ音楽の要素を融合した音楽で、独特のリズムと重低音が特徴です)の世界的スター、Bad Bunnyのコンサートで大はしゃぎする様子をシェアしています。泣き顔から笑顔へ – まるでお騒がせインフルエンサーの“炎上マーケティング”のような展開になりました。
AIにどこまで頼れるのか?
投稿を見たユーザーたちが「じゃあ自分も試してみよう」と、同じ質問をChatGPTに投げかけてみました。でも返ってきた答えは人それぞれ。ある人は長文の丁寧な解説をもらい、別の人はCaldassさんと同じく「ビザは必要ありません。」という短い一文だけ。
これ、不思議に思うかもしれませんが、実はChatGPTの“性質”なんです。AIは全員に同じ答えを投げ返しているわけじゃなくて、質問者のこれまでの会話の流れや好みを読み取って、回答をパーソナライズしています。つまり「この人は短く簡潔な説明が好きそうだな」と判断すれば、あえてシンプルにまとめたりもするのです。
そう考えると、Caldassさんが怒った「ChatGPTの仕返し」説も、ちょっとだけ的を射ているのかもしれません。彼女は以前からAIを罵倒していたことを認めています。もし過去のやり取りで「答えが長い、わかりにくい」、「聞いたことだけに答えて」といったフィードバックを繰り返していたなら、AIはその期待に合わせて“必要最低限しか言わない”モードに育っていった可能性があります。”仕返し”というよりも、Caldassさん自身が、そういうChatGPTに育ててしまった可能性が高いのです。
AIは感情を持たないけれど、データの積み重ねで“性格”のような振る舞いが出てくる。そこが面白くもあり、やや怖いところでもあります。
AIにできること – できないこと
今回の一件が教えてくれるのは、AIの便利さと限界が紙一重だということです。
確かに、ChatGPTは検索よりも早く答えをまとめてくれるし、ちょっとした疑問にはとても役立ちます。でも、旅行や法律、医療のように「正確性が命」の分野では、AIだけを頼りにするのは危険です。結局、最後に信用すべきは公式サイトや政府機関、専門家の情報。
AIはあくまでナビゲーションの補助ツール。Googleマップのように便利だけど、道が工事中だったらやっぱり現地の案内板を見た方が正しい。そんな当たり前の事実を、Caldass夫妻の空港騒動は改めて思い出させてくれました。

この動画を実際に見て、「空港で大勢の前で泣き叫ぶなんて、大げさすぎない?」と思ったけど、インフルエンサーだから、注目を浴びるためでもあったんだろうね。しかもスペイン人って、もともと話すときに身振り手振りを交えて感情を表現する人が多いから、余計にドラマチックに見える。どちらにしてもTikTokでバズったから、彼ら的には成功だろうけど、今後は情報を発信しても、あんまり信頼されなそう…
ただ、それが狙いだったとは思えないけど、結果的にはAIの使い方に関して、いい“教訓”を残したのは事実だと思うよ。
今のChatGPTは、GPT-5っていう最新のモデルを使っていて、OpenAIの旧モデルo3と比べると幻覚(事実誤り)が約80%減少してるし、GPT-4oと比べても45%少なくなったと報告されている。実際、以前みたいに“創作文”を差し込んでくることもだいぶ減ったしね。
GPT-4oの頃なんて、「え、それ本当?」と聞き返すと、「私が予想して創作しました」なんて堂々と返してきたりして、創作してくれなんて言ってないよーと脱力することがよくあった。雑談や参考程度ならいいけど、仕事でそのまま使うのは正直怖いという印象だった。
でもね、たとえ事実誤りが減ったとしても、ChatGPTが引っ張ってくるのは結局ネットの情報だから、ネットの情報が間違っていたらどうにもならないよね。誰かに直接取材してくれるわけじゃないから、どうしたって“完全に正しい答え”は望めない。よく「公式サイトや政府機関をチェックしましょう」と言うけど、公式のほうが間違ってることだって結構ある。特にフランスではね。
ずいぶん前の話だけれど、空港行きのシャトルバスのチケットを前もって買っておいたのに、バス停で待っても全然来ない。同じように待ってる人たちと一緒に情報を探したけど、公式サイトには「通常運行中」としか書かれてない。電話しても録音音声が流れるだけで、どんどん不安になってくる中、たまたま見つけたブログに「そのシャトルバス会社は倒産した」と書いてあった。
最初は「いやいや、公式の方が正しいに決まってる」と思ったけど、不安な気持ちがあったからタクシーで行くことにして、ギリギリで飛行機に間に合った、バスのチケットは無駄になったけどね。(パリから空港までの交通機関は、シャトルバス、RER、公共のバスと、それぞれ駅も場所も別々で、途中で変更するとかなり時間がかかるのが不便)
結局、正しいのはそのブログのほうだったんだよ。その後、ニュースで倒産が報じられても、サイトはずっと更新されず、バス停もそのまま。だから何も知らずに待ち続けた人はきっと多かったんじゃないかな。普通なら運行が中止になったことを「まずお客さまに知らせなきゃ」となるはずだけど、この会社は「もう潰れたんだから客なんて知ったこっちゃない」って感じだったんじゃないかと思う。
もしあのときChatGPTに聞いていたら、「運行しています」って自信満々に返答してきたんだろうな。AIだって、というかAIこそ個人のブログより公式サイトを信じるだろう。
だからこそ、最後に信じるべきは自分の勘と最終確認。
やっぱり旅も人生も、確認はダブルチェックが鉄則なんだね。AIの便利さに慣れちゃうとちょっと面倒だけど、空港で泣きたくないもんね。