Heptalytics：企業の不正対策を支援するスタートアップ

HeptalyticsのAIを活用した技術により、休眠口座の不審な動きを事前に察知し、次の不正取引を警告することが可能です。

犯罪者による不正行為を検出し、予測するAIアシスタント

近年、決済関連の詐欺が急増するなかで、アレクサンドル・ダヴィッド氏とブリス・ル・グリニョウ氏の2人は、犯罪者による不正行為を検出し、予測するAIアシスタントを開発しました。この取り組みが評価され、Heptalytics（ヘプタリティクス）は、フランスの経済誌『Challenges』が選出する「2025年に投資すべきスタートアップ100社」に名を連ねています。

「Hepta（ヘプタ）」はギリシャ語で「7」を意味します。共同創業者のアレクサンドル・ダヴィッド氏は、「7は完全数であり、私たちの会社は『完璧な分析』を目指しています」と語ります。
彼は、Kedgeビジネススクール、ESCPビジネススクール、さらに名門エンジニアリングスクールのCentrale Supélecを経て、長年にわたりマーケティングやデジタル決済の分野で、Accenture、EY、Deloitteなどの大手コンサルティングファームに勤めてきました。また、以前にはPaykromという決済系スタートアップを設立し、それをフランスのフィンテック企業Qontoに売却した経験もあります。

コロナ禍以降、不正行為の件数は「30倍」に

その経験のなかで、彼は決済に関する不正防止の知見を深めました。特にコロナ禍以降、不正行為の件数は「30倍」にも増えたと述べており、パートナーのブリス・ル・グリニョウ氏とともに、Heptalyticsを2023年末にパリで設立しました。
ル・グリニョウ氏はENSウルム（フランス高等師範学校）出身で、ニースにあるコート・ダジュール大学で数学の博士号を取得。その後、AIエンジニアとして活躍し、Shift Technologyという企業で詐欺対策の専門技術を磨きました。

決済の未来を変えるAIアシスタント

Heptalyticsは、金融機関やフィンテック企業、一般企業を対象に、SaaS（Software as a Service）形式のAIアシスタントを提供しています。このアシスタントは、これまでになかった精度で不正取引を検知・予測し、企業の支払いおよび金融取引の安全性を強化します。
たとえば、長期間使われていない「休眠口座」で不審な取引が発生した際、その次の取引が詐欺である可能性を検知し、口座保有者に事前に警告を発することが可能です。

AIがカバーする範囲や利用人数によって料金は異なりますが、すでにKardやBe-bunkといったフィンテック企業との契約を獲得しています。今後はさらに大規模な企業や組織と提携し、組織的なマネーロンダリング対策など、より複雑で広範なリスクに対応していく計画です。

現在の状況と今後の展望

Heptalyticsは現在、従業員5名という小規模体制ですが、非常に意欲的な拡大戦略を描いています。現在、同社は120万ユーロ（約1億9500万円）の資金調達を目指しており、すでにEric Lassus氏（元Treezor創業者であり、現在はTHK Capital代表）を迎えたシードラウンドの資金調達を成功させています。

現在の売上は控えめで約100万ユーロ（約1億6250万円）にとどまっていますが、AIの独自性や研究者による社内ラボの存在などを武器に、将来的にはグローバル展開を視野に入れています。
現在、競合として存在するのは主にイスラエルおよびアメリカの企業ですが、彼らはまだ欧州市場に本格的に進出していないため、Heptalyticsは欧州における先行者優位を確保する好機を迎えています。

共同創業者のアレクサンドル・ダヴィッド氏は、「この分野では即席の対策では太刀打ちできません。私たちのAIは研究者が開発した独自のものであり、他にない価値を提供します」と自信を見せています。