
プレイステーションコントローラーを用いた遠隔手術の成功
遠隔手術は、内視鏡と超高速インターネット回線を使用して、地理的に離れた場所から手術を行うことを可能にする技術ですが、近年の5Gや低軌道衛星通信などの技術進展により、すでに実用段階に入っています。
とはいえ、9,300 キロ離れている超遠隔地での手術は医学界初の試みです。
スイスのチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)と香港中文大学(CUHK)が共同で行った画期的な遠隔手術では、9300キロメートル離れた場所から豚に対する内視鏡手術が成功しました。この手術では、医師がPlayStationのコントローラーを使用して内視鏡を操作しました。
この実験は2024年8月26日に行われ、スイスの医師が香港にいる豚に対して内視鏡手術を行いました。手術は、香港側で設置されたロボットシステムと磁気内視鏡を用いて実施され、スイスの医師はリアルタイムで送られてくる映像を見ながら操作を行いました。通信による遅延は300ミリ秒未満に抑えられ、ほぼリアルタイムでの操作が可能でした。
使用されたコントローラーは、PS3向けのPlayStation MoveナビゲーションコントローラーやPS5のDualSenseコントローラーであり、これにより医師は内視鏡を巧みに操ることができ、手術中には、内視鏡を体内で180度Uターンさせるなど、高度な操作が実現されました。
内視鏡は厚さがわずか 4 ミリで、磁場によって制御されるため、優れた機敏性が得られます。その後、胃の入り口を調べるために 180 度折り畳まれます。手術に立ち会った医師によると、鼻からのプローブの挿入は看護師に任せ、その後外科医が遠隔で引き継ぐことができるとのことです。
遠隔手術の実施方法
- 内視鏡の挿入
香港にいる外科医が、患者の体内に内視鏡を挿入します。 今回の手術では、内視鏡が鼻から挿入されました。 - 遠隔操作
チューリッヒにいる医師が、プレイステーションのコントローラーを使用して内視鏡を操作します。 この操作は、300ミリ秒の遅延を持つ超高速インターネット回線を通じて行われます。 - 磁場による制御
内視鏡は、磁場によって制御され、180度回転することができるため、患部のあらゆる角度からの観察が可能です。
遠隔手術で使用される技術の特徴
遠隔手術では、距離を超えて手術を行うために、いくつかの革新的な技術が組み合わされて使用されています。
- 極細内視鏡
従来の内視鏡よりもはるかに細い、直径わずか4ミリの極細内視鏡が使用されます。 これにより、患者の負担を軽減し、より精密な手術が可能になります。 - 超高速・低遅延のインターネット回線
遠隔地にいる医師がリアルタイムで手術を行うためには、遅延の少ない超高速インターネット回線が必要です。 チューリッヒと香港間で行われた遠隔手術では、300ミリ秒の遅延で通信が行われました。 このような高速通信技術の進歩が、遠隔手術の実現を可能にしています。 - ロボット技術と直感的な操作
ロボットアームを用いることで、医師は遠隔地から内視鏡を精密に操作できます。 ソースでは、PlayStationのコントローラーを使用して内視鏡を操作する様子が紹介されています。 これは、医師にとってより直感的で操作しやすいインターフェースを提供し、複雑な手術操作を容易にする可能性を示唆しています。 - 磁場制御による柔軟な動き
内視鏡の先端に磁石を内蔵し、外部からの磁場を変化させることで、内視鏡の向きや動きを制御します。 この技術により、内視鏡は180度回転することができ、患部のあらゆる角度からの詳細な観察を可能にします。
遠隔手術技術の発展がもたらす医療現場の変化
遠隔手術技術の発展は、医療現場にさまざまな変化をもたらすと考えられます。
- 地理的な制限の克服
遠隔手術技術は、地理的な制限を超えて専門的な医療を提供することを可能にします。 例えば、地方の患者は、都市部の大病院の専門医による手術を受けることができるようになります。また、離島やへき地に住む患者にも、質の高い医療を提供することが可能になります。 - 医療アクセスと公平性の向上
遠隔手術は、専門医の不足する地域や、移動が困難な患者にとって、医療アクセスを大幅に向上させます。 これにより、医療サービスの地域格差を解消し、より多くの人々が質の高い医療を受けられるようになる可能性があります。 - 医療従事者の負担軽減
遠隔手術は、一部の手術手順を遠隔で行うことで、医療従事者の負担を軽減する可能性があります。 例えば、内視鏡検査などの比較的単純な処置は、看護師が患者の近くにいて初期設定を行い、その後、遠隔地の医師が手術を引き継ぐことができます。これは、医師がより複雑な手術に集中することを可能にし、医療システム全体の効率を向上させる可能性があります。 - 新しい医療モデルの創出
遠隔手術は、遠隔医療と組み合わせることで、全く新しい医療モデルを創出する可能性を秘めています。 例えば、患者の自宅に手術ロボットを設置し、遠隔地の医師が操作することで、入院の必要性を減らし、患者の負担を軽減することができます。
今後の課題
遠隔手術の導入には、倫理的な問題や法的整備など、解決すべき課題も存在します。
- 責任の所在
遠隔手術中に問題が発生した場合、誰が責任を負うのかという問題があります。医師、病院、技術提供者など、関係者の間で明確な責任分担を定める必要があります。 - 患者とのコミュニケーション
遠隔手術では、医師と患者が直接顔を合わせることができないため、コミュニケーション不足による誤解や不安が生じる可能性があります。遠隔医療技術を活用した、円滑なコミュニケーション体制の構築が求められます。 - 技術的な課題
遠隔手術の実現には、高速かつ安定した通信環境、高精度な手術ロボット、セキュリティ対策など、多くの技術的な課題を克服する必要があります。 特に、手術中の遅延や通信の途絶は、患者の安全に重大な影響を与える可能性があるため、高度な技術開発が不可欠です。
遠隔手術技術は、医療現場に大きな変革をもたらす可能性を秘めていますが、その実現には技術的な課題だけでなく、倫理的な問題や法的整備など、多岐にわたる課題を解決していく必要があります。
しかし遠隔手術は、熟練した外科医が不足している地域や、災害地など、医師が直接患者のもとへ行くことが困難な状況において、質の高い医療を提供する手段として期待されており、今後は宇宙空間での手術なども視野に入れた応用が考えられています。
ゲーム用コントローラーの汎用性と使いやすさが医療分野でも活かされることが注目されており、今後は更に高度なゲーム用コントローラーの開発も期待されています。

地域によって的確な治療が迅速に受けられないという現実は、実はフランスでも大きな問題になっているんだ。2000年代にはフランスは世界一の医療先進国とWHOから認定され、難しい手術などは、他の国々から飛行機で患者を運んで手術することも多かったんだ。でも2010年代になると、医療費の削減のために医者の数を減らし、公立病院の予算を削るなどの政策が行われ、あっという間に医療後進国の一歩手前まで落ちぶれてしまった。今では日本や韓国、オーストラリアなどにも抜かれ、難しい手術が必要な患者は海外で手術を受けなくてはならないケースも増えているんだ。医療のレベルは経済や政治の影響によって、あっという間に変わってしまうということの実例となってしまったけど、遠隔治療が発達すれば、どこの国にいても、難しい手術を受けることが可能になるから、世界中で多くの患者の命が救われることになると思うんだ。