
海底インフラの諜報・監視任務を担うスパイ船
ロシアの特殊任務情報収集船「ヤンター(Yantar)」は、2015年に就役したプロジェクト22010型の海洋観測船(AGOR)で、公式には海洋研究・深海救難能力を備える調査船とされています。
しかしその実態は海底インフラの諜報・監視任務を担うスパイ船であり、ロシア国防省直属の秘密機関である「深海研究総局(GUGI)」の指揮下で運用されています。ヤンターの任務内容、技術仕様、航行履歴、および関与が疑われる事件や所属組織について包括的に解説します。
任務内容(活動目的・偵察内容)
- 海底インフラの諜報活動:
ヤンターの主要任務は、海底の通信ケーブルやエネルギーパイプラインなど重要インフラの位置や脆弱性を把握する情報収集です。米国防総省関係者によれば、ヤンターは自走式の深海潜航艇2機を搭載し、海底ケーブルを数千メートルの深度で切断・干渉できる能力を持つとされています。
実際、2015年9月に米国東海岸沖からキューバ(グアンタナモ湾)へ航行した際には、同海域の海底通信ケーブルへの偵察活動が疑われました。ヤンターはその後も世界各地で海底通信網の探査や監視活動を続けており、西側当局者は将来的に通信網遮断などの破壊工作に利用される可能性を警戒しています。 - 軍事機密の捜索・回収:
ヤンターはまた、深海に沈んだ機密軍事物資の捜索・回収任務にも投入されています。2017年には地中海でロシア空母から墜落した艦載機(MiG-29KやSu-33)の残骸位置に派遣され、機密機材を回収または破壊処分したと報じられました。
同年11月にはアルゼンチン沖で消息不明となった潜水艦「ARAサンフアン」の捜索活動にも従事し、ロシア海軍の捜索救難チームと共に現地派遣されています。 - 航行履歴(主な航海と活動エリア):
ヤンターは就役以来、世界各地の公海上や他国近海でその行動が確認されています。特に西側諸国の沿岸や海底インフラ周辺での活動例が多く報告されており、その動向は各国の軍事当局やオープンソースの追跡者によって監視されてきました。以下に主な航行履歴を年表形式で示します。
年(時期) | 主な活動海域・内容 |
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2015年9月 | キューバ・グアンタナモ湾付近 – 米国東海岸沖でヤンターを確認。グアンタナモ米軍基地に通じる海底通信ケーブル周辺で活動し、米当局が通信網攪乱の意図を懸念。 |
2015年10月 | ノルウェー沿岸 – ヤンターがノルウェー領海内を航行し北方へ向かったのを初確認。ノルウェー当局が沿岸航路上の動向を監視。 |
2016年夏 | グリーンランド沖 – グリーンランドのヌーク沖に投錨しているのが目撃される。この頃から各国はヤンターの行動を継続的に警戒。 |
2017年 | 東地中海 – イスラエル=キプロス間の海底通信ケーブル付近で活動。同年、シリア沖でロシア艦載機墜落事故の機密装備回収任務にも投入。11月にはアルゼンチン沖で消息不明の潜水艦ARAサンフアン捜索に参加。 |
2018年夏 | シリア沖 – 地中海東部のシリア沿岸に展開し活動。ロシアの中東介入に伴う情報収集の一環とみられる。 |
2019年11月 | カリブ海・トリニダードトバゴ – カリブ海のトリニダード・トバゴに寄港。西半球での活動継続が確認される。 |
2020年2月 | ブラジル沖 – リオデジャネイロ近海の海底通信ケーブル付近に出現。ブラジル海軍により監視され、意図について質問されるも乗組員は明確な回答を回避、船舶識別装置(AIS)も一時停止。 |
2020年3月 | フランス沿岸 – フランスのセーヌ湾(英仏海峡付近)に投錨しているのを確認。仏新型原潜(シュフラン級)初航海前の動向監視との指摘もあり。 |
2021年8月 | アイルランド沖 – 大西洋横断通信ケーブル(AEConnect-1)やCeltic Norseケーブルの想定ルートに沿って行動し、一時ケーブル間に静止。アイルランド当局やOSINTにより注視された。 |
2021年9月 | 英仏海峡(チャネル) – ヤンターがイギリス海峡に入り、英国海軍によって厳重に追跡。欧州近海への進出を示す動き。 |
2023年9月 | 北極海域・フラム海峡 – ノルウェー沿岸警備隊に監視されつつ、ノルウェーの調査船「王太子ホーコン号」に16時間以上密接追尾する動きを見せる(最接近距離約200m)。「嫌がらせ行為」と評されるも国際法上は違反なしとノルウェー当局は判断。 |
2024年11月 | アイルランド海 – フリゲート艦アドミラル・ゴロフコ等と英仏海峡を通過後、単独でアイルランド海に進入。マン島南西~ダブリン東方のアイルランドEEZ内で海底通信・エネルギーケーブル集積海域を哨戒し、アイルランド海軍(LÉジェームズ・ジョイス)により領海外へ退去を促される。この海域にはグーグルやマイクロソフトの欧州データセンターを結ぶ重要通信ケーブルが通っており、各国に安全保障上の懸念を生んだ。 |
2025年1月 | 地中海・大西洋 – 地中海に入りアルジェリアで補給停泊後、同国でロシア高官と会合。その後ジブラルタルを越え、大西洋上で謎の爆沈事故を起こしたロシア貨物船(MVウルサ・マジョール)の沈没現場にて潜水調査を実施。同時期に英国コーンウォール沖でも活動が捉えられ、英海軍がフリゲート艦HMSサマセット等で監視・追尾を行った。 |
上記のようにヤンターは世界各地の公海上で長距離航行を行っており、その航続距離8,000海里に及ぶ航行能力と深海作業力を背景に、米欧から中東・南米まで地理的制約なく活動できる点が確認されています。
関与が疑われる事件(海底ケーブル・パイプライン)
- 海底通信ケーブルへの疑惑:
ヤンターは各地で海底ケーブル周辺に出没していることから、通信網に対する破壊工作や盗聴への関与が度々取り沙汰されています。2015年の米NYタイムズ報道以来、米軍当局はロシアが世界の海底通信ケーブル網を攻撃・遮断する可能性に言及しており、ヤンターはその実行母艦として名指しされています。もっとも、実際にケーブルが切断された証拠は2024年まで確認されていませんでした。(ロシアのスパイ船『Yantar』が欧州の海底でしていることを参照してください)
ヤンターは平時から入念にケーブル網の位置情報や脆弱個所を記録し、必要に応じて妨害可能な態勢を整えることが任務であると考えられていましたが、2024年12月にフィンランド湾でケーブルが切断されたのは、石油タンカーがアンカーを落下したことによる事故ではなく、海底ケーブルを数千メートルの深度で切断できる能力を持つヤンターが故意に行ったものと見られています。 - 欧州近海での不審事案:
近年、ヨーロッパではバルト海のガスパイプライン爆発事故(2022年9月)やフィンランド=エストニア間の海底通信ケーブル断線(2023年10月)など、ロシア関与が疑われる海底インフラ事故が相次ぎました。2024年にはイギリスやアイルランド近海で活動するヤンターに対し警戒感が一層高まり、英国防省は「ヤンターは英国の海底インフラ地図化に従事しているスパイ船だ」と公式に非難しています。
同年11月にヤンターがアイルランド海でケーブル直上に留まった際には、英海軍が原潜を浮上させて威嚇する異例の対応に出るなど、防衛当局は海底ケーブル防衛ルールの強化に乗り出しました。ロシア側は「我々は海底ケーブルを脅かしていない」と否定していますが、欧米各国はヤンターの動向を具体例として挙げ、NATO協調のもと海底インフラ防護策を進めています。 - 沈没船・工作活動への関与:
ヤンターは純然たる「スパイ活動」だけでなく、沈没船事故と絡めた謀略にも関与が取り沙汰されています。2024年末に大西洋上でロシアの貨物船ウルサ・マジョール号が爆沈した事件では、ロシア当局は「テロ攻撃による沈没」と主張しましたが証拠は乏しく、西側分析筋では老朽船による事故と推測されています。
ヤンターはこの沈没現場に急行し海中調査を開始しましたが、その目的について「爆発原因の調査」「積載されていた軍需物資の回収または破壊」「船体構造物(原子力砕氷船用ハッチ)の引き揚げ」など諸説が飛び交い、真相は不明のままです。このようにヤンターは公的な捜索救難活動と秘密工作の双方に関与し得る立場にあり、その動向は常に注視されています。
所属機関と指揮系統
ヤンターは建造名目上はロシア海軍の補助調査艦ですが、実際の運用はロシア国防省直轄の「深海研究総局(GUGI)」によって行われています。GUGIはロシア連邦国防省の極秘部門で、深海における軍事技術研究や諜報・特殊任務を専門とする組織です。
ヤンターは2015年の就役以来このGUGI所属艦となっており、同総局が運用する特別潜航艇部隊(第29特殊潜水隊)などと連携してミッションを遂行します。形式上は北方艦隊セベロモルスク母港に配備されていますが、実働時の指揮系統はロシア海軍の通常艦隊司令部から独立しており、ロシア国防省およびGUGI上層部の直接指示下で任務に当たっていると考えられます。
これは同船に搭乗する要員や作戦内容が高度に機密指定されているためで、例えば2024年にはGUGI傘下の特別潜航艇部隊司令官コンスタンチン・コノヴァロフ少将がヤンターに同乗し作戦指揮を執ったことが確認されており、国家戦略レベルで任務が管理されている実態がうかがえます。
以上のように、ヤンターはロシアが保有する深海諜報活動の切り札とも言える存在であり、その動向は国際社会にとって海底インフラ防衛上の大きな焦点となっています。各国はヤンターの能力と行動パターンを注視しつつ、必要に応じた監視・対抗措置を講じるなど、海中の見えざる攻防戦が続いています。

公式には海洋研究・深海救難能力を備える調査船という名目だけど、他国の領土で堂々とスパイ活動を行っていて、スパイ船であることは公然の秘密となっている。突然、英仏海峡や地中海、北欧や南米に出没したりと神出鬼没だけど、本当に海洋研究・深海救難活動が目的だとしても、沿岸国に許可を取っていない時点ですでに重大な違反だよね。でも船の姿が全くスパイ然としていないから、国境線を堂々と超えても見逃されちゃうんだろうな。(見逃すほうにも問題はあるけど)調査船にしては自走式の深海潜航艇2機を搭載するなど、かなり高度な装備を備えているのに、外観があまりに普通で、観光船や漁船に混じっても全く違和感ないところが逆にスパイ船としては優秀なのかもしれない。でも海軍所属の船とは言え軍装備はされていないから、すぐに沈められそうな姿をしているのに、威嚇されても意に介す様子もなく、排他的経済水域(EEZ)にもガンガン踏み込んでいく、あの不気味さはなんなんだろう。
ディズニーランドやUSJなどの最新鋭のジェットコースターより、花やしきのジェットコースターのほうがスリルがあって怖いことに近いかもしれない。(全然違う?)
花やしきのジェットコースターって、仕掛けにスリルがあるというよりも、走っているうちにカートがバラバラになってしまいそうなガタガタ感が怖いんだよね。(と言いつつあのレトロな非現実感が忘れられず、何度も乗りに行っているけど。)昭和感満載な民家の間をすり抜けるギリギリな感じもスリル満点だけど、あんなジェットコースターって他の国にはたぶんない、というか作るのは不可能なんじゃないかな。あるとしたらそれこそロシアや北朝鮮くらいかも。日本って、安全性とか周辺の家への迷惑とか、他の国よりずっと法令が厳しいはずなのに許可されているのは何故なんだろう、と思って調べたら、1953年の開業以来、安全性を確保するための定期的なメンテナンスや部品の交換が行われているものの、基本的な構造やデザインは殆ど変わっていないそうだ。1963年9月1日に、浅草花やしきのローラーコースターで、父親に抱かれていた生後7か月の男児が走行中に転落し、3メートル下に落下して死亡する事故が発生したそうだけど(というか、赤ちゃんを抱いてジェットコースターに乗っていたことのほうが信じられない、どんなに安全に設計しても事故を防ぐのは不可能なのでは…)、それ以来安全対策の見直しや運行管理の強化が図られて、事故は起きていないんだって。60年以上無事故って逆に珍しいよね。
ロシアの兵器も、最新鋭の軍備に混じって、いつの時代の戦車?というようなレトロな戦車や兵器が使用されたりしているけど、他の地域の戦争や紛争から没収してきた兵器なども、3Dプリンターなど先端技術を駆使してオーバーホールしながら使い続けているらしい。古くても、見かけがオンボロでも長期間戦い続けられる秘訣がメンテナンス力にあるのは、ロシアもウクライナも花やしきも一緒なのかも。ロシアの兵器のリサイクル状況については、こちらの記事(ロシア軍の兵器修理・再利用と技術的対応状況)を読んでみて下さいね。