
英領ヴァージン諸島の裁判所による判決
カルロス・ゴーン氏とヨットをめぐる裁判は、2024年8月9日に英領ヴァージン諸島の裁判所が下した判決で、重要な局面を迎えました。
日産自動車は、ゴーン氏が会社資金を私的に流用してヨットを購入したとして民事訴訟を起こしていました。
今回の裁判が日本でもゴーン氏が居住するレバノンでもなく、英領ヴァージン諸島で行われた理由は、ゴーン氏の妻であるキャロル氏が関係する会社「Beauty Yacht PTY」が、このヨットを購入した際に、英領ヴァージン諸島で登記されていたためですが、これが日産側が状況を打破する決め手となりました。
裁判所は日産側の主張を認め、ゴーン氏にヨットの返還と、2012年から2018年にかけて不正に取得したとされる3,200万ドルの支払いを命じました。この中には、問題のヨット「Shachou(社長)」の購入費用1,200万ドルも含まれています。
金融商品取引法違反
ゴーン氏は、2018年に金融商品取引法違反の疑いで日本で逮捕されて以来、一貫して無罪を主張し、自身は日産やフランス政府による陰謀の犠牲者であると訴えてきました。
そして保釈中の 2019 年 12 月に日本から密出国により父の母国であり自身の国籍国であるレバノンに逃亡し、今もレバノンに居住しています。
レバノンは日本と犯罪人引渡し条約を締結していないため、ゴーン氏が日本で裁判を受ける可能性は極めて低くなっています。
しかしこの裁判では、ゴーン氏が資金をスイスの銀行口座を経由して、オマーンのNissan販売代理店社長と関係のある人物の口座に送金していたこと、そして最終的にゴーン氏自身や家族の会社に渡っていたことが明らかになりました。
ヨットの購入資金を隠すために用いられた隠蔽工作
- 「CEOリザーブ」からの資金流用:
ゴーン氏は、日産の「CEOリザーブ」と呼ばれる、本来は会社の業務上の経費に充てられるべき資金から、不正に資金を引き出していました。 - 複雑な資金の流れ:
ゴーン氏は、複数の仲介業者や会社を経由させて資金を移動させていました。この複雑な資金の流れは、資金の出所を隠蔽するために行われたと見られています。 具体的には、日産の中東にある子会社から資金が流出し、最終的にゴーン氏が所有する英領ヴァージン諸島の会社であるBeauty Yachtsに送金されました。 - 英領ヴァージン諸島での会社設立:
ゴーン氏は、タックスヘイブンとして知られる英領ヴァージン諸島に会社を設立し、その会社を通じてヨットを購入していました。これは、税金逃れや資金隠蔽を目的としたものと見られています。 - 所有権を妻であるキャロル夫人名義に:
裁判所の判決によると、Beauty Yachtsは、ゴーン氏の妻であるキャロル・ゴーン氏が所有者となっていましたが、実際にはゴーン氏が所有・支配していたとされています。 ゴーン氏は、2018年5月にBeauty Yachtsの株式を妻に譲渡していますが、これは日産がゴーン氏の行動を調査し始めた時期と重なっており、ヨットを差し押さえられるのを避けるためだったと裁判所は判断しています。
今回の裁判が特に注目される理由
今回の判決は、カルロス・ゴーン氏と日産自動車との間で世界各地で繰り広げられている法廷闘争において、日産側が初めて明確な勝利を収めたケースです。
日産は、ゴーン氏の不正行為を立証し、損害賠償を勝ち取るために、世界各地で民事訴訟を起こしていますが、今回の英領ヴァージン諸島での裁判は、ゴーン氏の不正蓄財を裏付ける具体的な証拠が示された点で、日産にとって大きな意味を持つ勝利となりました。
裁判所は、ゴーン氏が日産の資金を私的に流用してヨットを購入したと認定し、ヨットの返還と損害賠償の支払いを命じました。
ゴーン氏は控訴する意向を示していますが、この判決は、複数の国で係争中のゴーン氏関連の他の訴訟にも影響を与える可能性があります。
今回の裁判では、ゴーン氏がいかに周到に資金を隠蔽していたかを浮き彫りにし、スイスの銀行口座やタックスヘイブンを経由して資金を移動させ、追跡を困難にしていたことが証明されたのです。
今回の判決が、ゴーン氏の資金源や資産の実態解明に向けた、新たな展開のきっかけとなる可能性があると言われるのは、以下の理由からです。
- ゴーン氏側の敗訴:
ゴーン氏は一貫して不正行為を否定しており、今回の判決を不服として控訴する意向を示しています。しかし、英領ヴァージン諸島の裁判所は日産側の主張を認め、ゴーン氏にヨットの返還と損害賠償の支払いを命じました。これは、ゴーン氏にとって大きな痛手となる可能性があります - 日産側にとっての勝利:
日産は、ゴーン氏を相手取り、複数の国で民事訴訟や刑事告訴を起こしています。今回の判決は、ゴーン氏関連訴訟において、日産側にとって初めての大きな勝利と言えるでしょう。この判決は、今後のゴーン氏関連訴訟にも影響を与える可能性があります。 - 国際的な注目度の高さ:
ゴーン氏の事件は、世界中のメディアから注目されています。自動車業界のカリスマ的なリーダーとして知られてきたゴーン氏の、現実離れした逮捕と逃亡劇は世界に衝撃を与えました。今回の判決は、ゴーン氏の事件の行方を決める上で重要な意味を持つため、国際的な注目を集めています。
国際的な事件にも関わらず、報道が少なかった理由
ゴーン氏のヨットをめぐる裁判は、ゴーン氏の事件の中でも、比較的報道が控えめなものとなりました。
日本にとってはもちろん、国際的に注目されている事件にもかかわらず、報道が少なかった理由は、いくつかの要因が考えられます。
- 裁判地が英領ヴァージン諸島であったこと:
英領ヴァージン諸島は、日本やフランス、レバノンといったゴーン氏と関係の深い国々から地理的に遠く離れており、各国のメディアにとって、現地での取材に費用と時間がかかることが一因になったと考えられます。 - 裁判の内容が、専門性の高い金融取引や企業法に関するものが中心であったこと:
ゴーン氏の事件は、その逃亡劇の側面に注目が集まりがちですが、今回の裁判は、ヨット購入に関する資金の流れや、企業統治のあり方など、複雑で専門的な論点を扱っていました。そのため、一般読者にとって理解しにくい内容であった可能性があります。 - ゴーン氏自身が裁判に出廷せず、ゴーン氏側の主張が積極的に展開されなかったこと:
ゴーン氏は、英領ヴァージン諸島の裁判所の管轄権を認めず、裁判を延期しようと試みましたが、認められませんでした。
またゴーン氏側の弁護士も、費用未払いを理由に弁護活動を停止しています。
日産側の執念による初の勝利
一方で日産側は、証人や専門家を送り込み、スイス当局の協力も得ながらゴーン氏による資金流用を裏付ける証拠を提出するなど、執念とも言える長年の努力が実を結んだ結果となりました。

今回の裁判は、日産の被害の中では小規模とも言えるヨットの返還が中心となった判決ではあったものの、各方面に大きな意味を持つ判決だったんだ。ゴーン氏は日本(日産)だけではなくフランスでも、国際公共団体の職員への賄賂、地位の不正利用、会社資金(ルノー社)の流用、盗品の受領を巡って既に2度も逮捕状が出ている。しかしレバノンがゴーン氏の受け渡しを拒否し、ゴーン氏のパスポートを取り上げているうえに、ゴーン氏がレバノンとブラジルとフランスの多重国籍を有するという複雑な背景も重なり、裁判が進まないまま、膠着状態になっていたんだ。
レバノン政府はゴーン氏からの金銭的恩恵を受けているうえに、国が絡んだ裏取引が明らかになるとまずい事情があるせいで、ゴーン氏の隠蔽を率先して行っているという説が有力視されている。ゴーン氏自身は勝訴を確信しており、表舞台に出て発言することを実は望んでいるそうだ。(ゴーン氏は国際政治の舞台でも裏取引を行っていたらしく、発言されてはまずい人々が、政治界の大物にもたくさんいるらしい。)
今回はゴーン氏とは直接の関係のない英領ヴァージン諸島で裁判が行われたこと(タックスヘイブンを悪用したことが裏目に出たね!)、本人が出席しない欠席裁判のままで判決が下されたこと、などが膠着状態の打破に繋がったと見られているよ。ゴーン氏が退陣させられた後、ルノーも日産も業績が急失速しているから、確かに優秀な経営者だったのだと思う。でも、社員の大幅解雇や経費の切り詰めで社員を苦労させておいて、自分は会社のお金で豪華ヨットを買ったり、ベルサイユ宮殿で結婚式を挙げたりしたり、好き放題に使ってしまったお金は、これからの人生で返還していくべきだと思うんだ。今もワイン畑のオーナーになったりして稼ぎ続けているから、返還しても困らないはずだし。といっても本人は全く反省していないようだけどね。