FREE-5G
2024年9月18日にフランスの通信キャリアであるFreeが、Orange、SFR、Bouygues Telecomの大手3社に先駆けて、一般消費者向けにスタンドアローン(SA)方式の5Gサービスである「5G SA」の商用化を開始しました。

Free が提供する「真の 5G」

フランスでは多くの国と同じように、5Gが通信速度のスタンダードとなっていますが、フランスの通信会社であるFreeが9月18日に、従来の4Gに依存しないスタンドアロン型5Gネットワーク「5G SA」の導入をし、高速で安定した通信サービスを提供を開始したことが、大きな話題になっています。

パリロボくん
パリロボくん

フランスの通信会社Free(フリー)は、1999年にIliad社によって設立された会社だよ。Freeは、低価格で革新的な通信サービスを提供することにより、それまで、Orange、SFR、Bouygues Telecomの大手3社の独占状態だった通信業界の中で、全くの新規参入者として、既存事業者の半分以下の料金を設定し、サービス開始からわずか数ヶ月で260万の加入者を獲得したんだ。2002年にADSLサービスを開始した、インターネット、TV、携帯電話のサービスをセットとして提供する「トリプルプレイ」モデルは、他の通信事業者にも影響を与え、今日では、フランスだけではなく、世界の通信サービスの基本となっており、それ以降もFreeは、保守的と言われていた通信業界の革命児として、次々と新たなサービスを提供して注目され続けているんだ。

5G SAサービスと従来の5Gサービスの大きな違い

Free が提供する「真の 5G」は、5G スタンドアローンアクセス (SA) と呼ばれ、従来の 5G とは異なるいくつかの重要な特徴があります。

  • スタンドアローンアーキテクチャ:
    従来の 5G は 4G インフラストラクチャに依存していましたが、5G SA は完全に 5G アーキテクチャに基づいています。これは、「信号」や「アンカー」など、すべての伝送プロセスが 5G ネットワークを通じて行われることを意味します。
  • 高速化:
    5G SA は 3.5 GHz の周波数帯域を使用するため、従来の 5G よりも 1.5〜2 倍高速になります。この高速化は、3.5 GHz 帯域の帯域幅がはるかに広いためです。これは、庭に水をやる際にホースと消火栓を比較するようなものです。
  • 低レイテンシ:
    5G SA は、レイテンシ(デバイスが情報を送受信する際の応答時間)を大幅に短縮します。これは、オンラインゲームのラグをなくしたり、遠隔手術などのリアルタイムアプリケーションを可能にするために重要です。
  • 信頼性の向上:
    5G SA は、接続のジャンプを防ぎ、より信頼性の高いネットワーク接続を提供します。
  • 多数のデバイスへの同時接続:
    5G SA は、非常に多くのデバイスを同時にネットワークに接続することを可能にします。

競合他社との競争

フランスにおけるFreeの5G SAサービス提供開始は、競合他社であるOrange、SFR、Bouygues Telecomに大きな影響を与えると考えられます。

  • 競争激化によるサービス向上:
    Freeが「真の5G」と呼ばれる高速・低遅延の5G SAサービスを開始したことで、競合他社も同様のサービスを提供せざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。 これは、顧客にとってより高速で高品質なモバイルネットワークサービスを利用できるようになるという点でプラスの影響と言えるでしょう。
  • 価格競争の激化:
    Freeはこれまで低価格戦略で市場シェアを拡大してきました。 5G SAサービスにおいても同様の戦略をとる可能性があり、競合他社も対抗するために価格を引き下げざるを得なくなるかもしれません。結果として、顧客はより安価な5Gサービスを利用できるようになる可能性があります。
  • 技術革新の加速:
    Freeの5G SAサービス開始は、競合他社にとって技術革新を加速させる要因となる可能性があります。より高速なネットワーク、低遅延、多数同時接続などの技術開発競争が激化し、モバイルネットワーク技術の進化が促進されることが期待されます。
  • 顧客獲得競争の激化:
    5G SAサービスの提供開始は、新規顧客獲得のための競争を激化させる可能性があります。各社は、より魅力的な料金プランやサービスを打ち出し、顧客獲得を目指すと考えられます。

OrangeがFreeの5Gサービスに対して訴訟を起こした理由

OrangeがFreeの5Gサービスに対して法的措置を取ったのは、Freeのマーケティング戦略に問題があったからです。Freeは当初、700MHz帯域を使って「5G」サービスを提供していましたが、Orangeはこれを「偽の5G」と批判し、訴訟を起こしました。

Orangeの主張によれば、「真の5G」と呼ばれる高速な5Gサービスを提供するには、3.5GHz帯域の使用が必須であると考えられており、Freeは、700MHzや2.1GHzといった低い周波数帯域を用いて5Gサービスを提供していたため、Orangeはこれらの周波数帯域では、顧客が期待する5Gの速度を実現できないと主張しました。
その後、Freeが3.5GHz帯域を用いた5G SAサービスを開始したため、Orangeの主張がFreeに対して一定の影響を与えた可能性が考えられます。

Orange S.A.は、フランスに本拠を置くマルチサービス通信事業者で、フランス、スペイン、ヨーロッパ、アフリカ・中東などで事業を展開しており、世界中で16万6000人の従業員と2億3200万人の利用者を抱える巨大企業なんだ。国営企業であったフランス・テレコムとして設立され、1997年には民営化されたけど、2024年現在でもフランス政府が株式の約13.5%を保有しているため、現在も政府が企業の経営に一定の影響力を持っているよ。元国営ということもあってサービスも保守的なイメージで、革新的なFreeとは対照的だから、何かと目の敵にしている印象があるね。日本の市場に置き換えると、OrangeがNTTドコモ、FreeがSoftbank的なポジションという感じかな。

パリロボくん
パリロボくん

Freeの5G SAが日常生活に与える影響と今後の課題

Freeが導入した5G SAは、フランスの日常生活にさまざまな影響を与える可能性があります。新しいサービスなので、完全に普及していくためには、いくつかの課題がありますが、これらの課題が解決されれば、Freeの5G SAは、日常生活を大きく変え、より便利で豊かな社会を実現するための基盤となる可能性を秘めています。

  • インターネット体験の向上:
    従来の5Gよりも高速で低遅延の通信が可能になるため、動画ストリーミングやオンラインゲーム、ビデオ通話などがより快適になります。 大容量ファイルのダウンロードも短時間で完了するため、仕事効率の向上にもつながります。
  • 新しい技術やサービスの出現:
    5G SAの高速通信と低遅延は、遠隔医療や自動運転、拡張現実(AR)などの新しい技術やサービスの発展を促進する可能性があります。 例えば、遠隔手術では、リアルタイムで遅延なく手術を行うことが可能になり、地方に住む患者でも都市部の専門医による治療を受けやすくなります。 また、教育現場では、AR技術を用いて歴史上の人物と対話したり、仮想空間で歴史的な出来事を体験したりするなど、よりインタラクティブな学習が可能になります。
  • 産業構造の変化:
    5G SAは、製造業や農業、物流など、さまざまな産業分野にも影響を与えると考えられます。 例えば、工場では、5G SAを活用したIoTセンサーやロボットの導入により、生産効率の向上や自動化が進む可能性があります。 また、農業分野では、センサーで収集したデータに基づいて、水や肥料を最適に管理するスマート農業が普及する可能性があります。
  • 地域格差の解消:
    5G SAは、高速インターネットアクセスが難しい地域にも、高速で安定した通信環境を提供することができます。 これにより、都市部と地方のデジタルデバイドを解消し、地方の活性化にも貢献することが期待されます。 しかし、これらの影響が現実のものとなるには、いくつかの課題を克服する必要があります。
  • エリア展開:
    5G SAサービスは、現状ではFreeが展開する3.5GHz帯域のアンテナが設置されているエリアでのみ利用可能です。 より多くの人が5G SAの恩恵を受けるためには、エリア展開を加速させる必要があります。
  • 対応端末の普及:
    5G SAを利用するには、対応するスマートフォンが必要です。 しかし、現時点では、すべてのスマートフォンが5G SAに対応しているわけではありません。 特に、iPhoneはFreeの5G SAに対応していません。 フランスでのiPhone普及率は日本ほど高くないとはいえ、人気の高いブランドです。早期の対応が期待されています。