
資金繰りに悩む小規模・零細企業に対し、短期融資ソリューションを提供
Heroは、第一世代のフィンテック企業からおよそ10年遅れて登場した新進気鋭のスタートアップです。しかしその分、最先端の技術を駆使し、中小企業(PME)が直面する銀行業務の煩雑さを大幅に解消することに成功しています。この取り組みが評価され、フランスの経済誌『Challenges』が発表する「2025年に投資すべきスタートアップ100社」に選出されています。
Heroの最大の強みは、従来のフィンテックとは一線を画す革新性にあります。AI(人工知能)と機動力のあるビジネスモデルを掛け合わせることで、従来よりも迅速かつ柔軟、そして高収益な中小企業向けの資金調達と決済ソリューションを実現しているのです。
この企業の創業者であるローラン・ジャイス=ニールセン氏(35歳)は、過去にもフィンテック「Bling」やコスメブランド「Merci Handy」を立ち上げた実績を持つ連続起業家です。Omnes Education出身のビジネスパーソンでもあり、その手腕で名だたる投資家たちを惹きつけてきました。とくに注目すべきは、PayPalの創設にも関与した米国の著名ファンド「Valar」が、過去2回の資金調達(合計2400万ユーロ/約38億4000万円)に参加していることです。
金融機関として正式認可、短期資金ニーズに対応
2024年9月には、フランスの金融規制機関であるACPR(金融健全性監督・解決機構)からの認可を受け、Heroは金融機関としての正式な活動が可能となりました。これにより、特に資金繰り(BFR=Besoin en Fonds de Roulement)に悩む小規模・零細企業に対し、短期融資ソリューションを提供できるようになっています。
Heroの共同経営者として参画しているのは、ポリテクニーク卒でM&A業務をラザール、ロスチャイルド、JPモルガンなどで経験したニコラ・ミヨ氏(31歳)です。彼は、この分野においてHeroが10年以上遅れて登場したことをむしろ強みに変え、「技術的に進化した環境で、競合よりも高性能かつ低価格なプロダクトを提供できる」と強調しています。
実際に、Heroのサービスでは顧客のSIREN番号(企業識別コード)を使って信用スコアを瞬時に生成し、数時間以内に融資判断と実行が可能です。これにより、従来の銀行では数日〜数週間かかっていた手続きが劇的に効率化されます。
高機能のプロ口座とキャッシュバックシステム
Heroが提供する「オールインワン・プロフェッショナル口座」は、中小企業のあらゆる金融ニーズに対応するよう設計されています。
- この口座には、以下のような機能が含まれます:
- 後払い可能なデビットカード
- サプライヤーへの即時支払い後に分割返済できる短期融資
- 最大5%(初回2か月)、その後3%の金利がつく利回り付き普通預金口座
- 利用金額に応じて一部を還元するキャッシュバック制度
このように、Heroは単なる「借り入れ」の枠を超え、資金管理から支払いまでを一括でカバーする包括的な金融インフラを中小企業に提供しています。これにより、経営者の業務負担が大幅に軽減され、資金の可視化や効率化にもつながります。
実績と今後の成長戦略
Heroはすでに1万社以上の顧客を獲得し、2024年には250万ユーロ(約4億円)の売上を達成しています。従業員数は約50名で、フランス・パリを拠点に活動しています。スタートアップとしては安定した規模を持ち、着実にビジネスを拡大中です。
そして今後のさらなる成長に向けて、Heroは3000万ユーロ(約48億円)の資金調達を計画しています。
- この資金の用途は主に3つです:
- 新規顧客獲得(1人あたり約100ユーロ=約1万6000円)
- 既存のデジタルツールの高度化
- 国際展開の推進
中小企業セグメントがテクノロジーへの理解を深めている今、Heroはこの機を逃さず、ヨーロッパ市場や新興国市場への進出を狙っています。
基本的な情報
- 企業名:Hero(ヒーロー)
- 設立:2021年4月
- 創業者:ローラン・ジャイス=ニールセン(連続起業家)
共同経営者:ニコラ・ミヨ(ポリテクニーク卒、M&A出身) - 所在地:フランス・パリ
- 技術内容:AIによる信用スコアリング、短期融資、オールインワン型プロ口座(利息付き普通預金、後払いカード、キャッシュバックなど)
- 主な用途:中小企業の資金繰り、日常的な決済・資金管理の効率化
- 現在の状況:
ACPRの認可取得済み、従業員約50名、顧客1万社以上、年商250万ユーロ(約4億円) - 商業化の進行状況:サービス提供中、拡大フェーズ
- 目標資金調達額:3000万ユーロ(約48億円)
- ターゲット顧客:フランスおよび欧州の中小企業(PME、TPE)
- 想定ユーザー:資金繰りに課題を持つ経営者、デジタル対応型の中小法人
- 対象市場:フランスを中心とした欧州市場、将来的には国際市場を視野に
- 売上見通し:数年以内に急成長を予測、国際展開による拡大も視野