
コンコルドが再び注目される背景
2025年5月6日、フランス文化省はコンコルドの第1号機を史上初めて航空機として国の重要文化財(Monument historique)に指定することを発表しました。城や大聖堂と同列の保護対象に、ついに旅客機が加わることになったのです。これにより機体だけでなくエンジン、計器、客室内装までが国家による保護対象となります。
展示先のトゥールーズ近郊ブラニャックの航空博物館「Aeroscopia」では、早くも保存整備プロジェクトが始動しました。
1967年から1979年にかけて製造された20機のうち最初の1号機は、特に乗務員の認定訓練に用いられてきましたが、今後は保存・整備されることになります。
この機体は1973年12月6日に初飛行を行い、最後の飛行は1982年5月26日でした。現在はコンコルドの初代パイロットであるアンドレ・テュルカが設立した国際的団体「大気・宇宙アカデミー(AAE)」に所属しています。
第1章:コンコルドの誕生と特徴(開発背景・技術仕様)
1962年、イギリスとフランスは共同で超音速旅客機を開発する条約を結び、ヨーロッパ初の国際共同航空機開発プロジェクトとしてコンコルドの開発がスタートしました。イギリスのブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション(後のブリティッシュ・エアロスペース)とフランスのシュド・アビアシオン(後のアエロスパシアル)が機体を設計し、エンジンはロールス・ロイス社とフランスのスネクマ社が共同開発しました。
試作機は1969年3月2日に初飛行し、同年には最大巡航速度マッハ2.04(時速約2,179km)という驚異的な性能を実証しました。その速度は音速の2倍以上に達し、巡航高度は約18,300m(60,000フィート)に及びました。
機体は乗客100名程度を収容できるよう設計され、デルタ翼と呼ばれる三角形の主翼と、離着陸時に機首を下げる独特の「ドロップノーズ」機構を備えていました。推進には4基のロールス・ロイス/スネクマ オリンパス593型ターボジェットエンジンが採用され、離陸時および超音速加速時には後部にアフターバーナー(再燃焼装置)を使用して強大な推力を発生させます。コンコルドの洗練された外見(細長い機首と白い流線型の胴体)と革新的な技術の数々は、「航空史上もっとも美しい機械」と称えられるほど人々を魅了しました。




コンコルド独自のデザインの特徴
4基のオリンパス593はアフターバーナー点火時に合計170t超の推力を発生し、巡航速度はマッハ2.2(約2716km/h)、巡航高度は成層圏上部の18,000m。ロンドン〜ニューヨーク間を3時間半で結び、水平飛行中に地球の曲率が見える旅客機はそれ以前にもそれ以降にも存在していません。
4基のオリンパス593はアフターバーナー点火時に合計170t超の推力を発生し、巡航速度はマッハ2.2(約2716km/h)、巡航高度は成層圏上部の18,000mに達しました。
視点 | 特徴 | 目的・効果 |
---|---|---|
極端に細長い機首+ドロップノーズ | 離着陸時はコックピット視界確保のため機首を 12.5° 沈め、巡航時は滑らかな「針形」へ戻す可変構造 | 視認性と超音速時の空気抵抗低減を両立 |
デルタ翼(無尾翼) | 三角形の主翼が機体全体と一体成形されたかのようなシルエット | 構造を簡素化しつつマッハ 2 以上で安定した揚力を確保 |
オールホワイト塗装と連続曲面 | 60°C 近くまで発熱する外板を太陽光反射率が高い白で統一。リベット外面も平滑仕上げ | 熱制御と空気抵抗の最小化、美観の強調 |
胴体後端にターボジェット 4 基を集中配置 | エンジンナセルを胴体と翼の境目に密着 | 抵抗を抑えつつ推力線を機体重心に近付け、スリムな外観を形成 |
機体全体が「先端へ向かって細くなる槍」 | コックピットから垂直尾翼へ向かう流線が一筆書き | 超音速衝撃波の発生をコントロールし、美しく先進的な印象を与える |
第2章:商業運航の栄光と限界(主要路線・騒音問題・運賃・燃費)
コンコルドは1976年1月21日、ブリティッシュ・エアウェイズがロンドン-バーレーン線で、エールフランスがパリ-リオデジャネイロ線(ダカール経由)で、それぞれ世界初の定期超音速旅客便を就航させました。以降、両航空会社はワシントンD.C.(ダレス空港)やニューヨーク(JFK空港)への路線を順次開設し、1970年代後半には大西洋横断を日常的に行うようになります。
コンコルドは通常のジェット旅客機の約2倍の速さで飛行できたため、例えばロンドン~ニューヨーク間を約3時間半ほどで結ぶことが可能でした(従来機では7~8時間)。この驚異的なスピードにより、朝ロンドンを出発しても現地時間の朝にニューヨークへ到着し、ビジネス会議に出席するといったことも可能だったと言われます。コンコルドは当時、最新鋭のテクノロジーと優雅さを体現する象徴となり、各国の要人やセレブリティに愛用されました。
コンコルドはその先進性ゆえに幾多の困難も抱えていました。まず大きな問題となったのが「騒音」です。コンコルドのエンジンは離陸時に大音響を発し、空港周辺への騒音公害が指摘されました。また、巡航中に発生するソニックブーム(超音速飛行時の衝撃波音)は地上で大きな爆音となるため、多くの国では1973年以降、民間機の超音速飛行が領空内で禁止されました。この規制により、コンコルドは陸地上空では常に音速以下で飛ぶ必要があり、実質的に大洋上を飛行する路線(大西洋・インド洋など)に限定されることになります。
加えて、コンコルドは運航コストが非常に高価でした。航空機の運賃も当時としては破格で、例えば1996年におけるニューヨーク~ロンドン往復のチケットはブリティッシュ・エアウェイズで7,574ドル(2020年の価値で約12,460ドル)に設定され、一般の旅客には手が届かないものでした。当然ながら乗客は富裕層や企業のVIPが中心で、搭乗率も平均すると定員の半分程度に留まったと言います。また燃費の面でもコンコルドの効率の悪さは否めませんでした。
100席程度の小型機であるにもかかわらず最大で約95トンもの燃料を搭載し、大西洋横断1回あたり乗客1人につきほぼ1トンの燃料を消費したとも言われています。計算上、旅客1人を1マイル運ぶのに要する燃料は、同時代の大型旅客機(例えばエアバスA320など)の約7倍にも達し、「空を飛ぶ石油ストーブ」と揶揄されるほどでした。こうした騒音と燃費の問題から、就航当初から環境面・経済面での批判が根強く、コンコルドは最終的にブリティッシュ・エアウェイズとエールフランスのみによる計14機の運航に留まりました。運航路線も採算性の悪い都市から順次撤退し、晩年にはロンドン/パリ~ニューヨーク線だけが定期運航される状況となっていました。
それでもコンコルドは、そのスピードと洗練さによって1970~90年代にかけて航空業界の「栄光」を体現しました。空より高い運賃にもかかわらず、時には満席となるフライトもあり、乗客たちは「音速の壁」を突破する特別な体験を楽しんだのです。コンコルドの機内ではシャンパンが振る舞われ、目的地までの短い時間で極上のサービスが提供されました。音速を超えて空を飛ぶという人類の夢をコンコルドは実現し、その名は技術革新とラグジュアリーの代名詞として歴史に刻まれました。
第3章:事故と退役(2000年の事故、その影響と引退の経緯)
しかし、コンコルドの輝かしいキャリアは一つの大事故によって暗転します。2000年7月25日、パリのシャルル・ド・ゴール空港を離陸したエールフランスのコンコルド(ニューヨーク行き4590便)が離陸直後に墜落し、乗員乗客109名全員と地上の4名を巻き込む大惨事となりました。
原因は、離陸滑走中に別の航空機から脱落していた金属片を踏んだことによりタイヤが破裂し、その破片がコンコルドの左翼の燃料タンクを直撃して出火、エンジン故障に至ったためでした。超音速機ゆえに離陸時のスピードも速く、機体は発艦直後に失速して空港近くのホテルに墜落。1976年の就航以来初めての致命的事故であり、コンコルドの完璧と称された安全記録が一瞬にして崩れる出来事でした。
この事故の衝撃は大きく、コンコルドは即座に全機が運航停止となります。原因究明と再発防止策として、燃料タンク内にケブラー(防弾チョッキにも使われる繊維)製のライナーを装着して被害を抑える改修や、新型耐パンクタイヤへの交換など、大掛かりな安全対策が施されました。約1年後、安全が確認されたコンコルドは2001年11月に商業運航を再開します。しかしその間に時代は変わりつつありました。
2001年9月には米国で同時多発テロ(9.11)が発生し、世界的に航空需要が激減するとともに、航空会社の経営環境も厳しさを増します。コンコルドも例外ではなく、運航再開後も乗客数は事故前より落ち込み、収支はさらに悪化しました。また、開発から30年以上を経て機材の老朽化が進み、スペアパーツの確保や整備にも困難が生じ始めていました。
製造元であるエアバス(アエロスパシアル社の後継企業)もサポートの終了を示唆し、コンコルドの運航継続には莫大な費用がかかる状況となっていたのです。こうした状況下で、事故は決定打となりました。エールフランスとブリティッシュ・エアウェイズは2003年にコンコルドの退役を発表し、その理由として整備コストの増大、2000年の事故後の乗客減少、9.11後の航空不況などを挙げました。
多くの人々に惜しまれながらも、エールフランスは2003年5月に最後の商業飛行を終え、ブリティッシュ・エアウェイズも同年10月24日にロンドン発ニューヨーク行きを最後にコンコルドの定期運航を終了しました。こうして27年間にわたるコンコルドの飛翔の歴史は幕を下ろしたのです。




第4章:文化財としての保存(最新の保存活動と指定の事実確認)
伝説となったコンコルドは、退役後そのほとんどが世界各地の博物館や展示施設で大切に保存されています。製造された全20機(試作機・量産機含む)のうち18機が現存し、そのうち6機がフランス国内、7機がイギリス国内、残りはアメリカやドイツなどに展示されています。例えばパリ近郊ル・ブルジェ航空宇宙博物館や、トゥールーズ近郊の航空博物館「エアロスコピア」、ロンドン郊外のブルックランズ博物館、ニューヨークのイントレピッド海上航空宇宙博物館、ドイツのズンスハイム博物館などで、その優美な姿を見ることができます。保存機の中には、初飛行に成功した最初の試作機(001号機)や、1985年にワールドツアーを行った機体、そして最終商業飛行を終えた機体など、それぞれに物語を秘めたコンコルドが展示されています。
近年、コンコルドを文化遺産として後世に伝えていこうという動きが本格化しています。フランスでは2023年、コンコルドを文化財に指定するための調査プロジェクトが立ち上がり、航空宇宙アカデミー(Académie de l’Air et de l’Espace)など関係者が働きかけを行いました。その結果、2024年10月11日付でフランス初号機「コンコルド1号機 (登録記号F-WTSB)」が歴史的記念物に登録されました。この1号機は1973年に初飛行し、後にエールフランスとブリティッシュ・エアウェイズが商業運航に使う機体の認証取得にも貢献した機体で、現在はトゥールーズ郊外ブランニャックのエアロスコピア博物館で展示されています。
登録という形でまず文化財リストに加えられたことにより、機体の移動や改変には国の許可が必要になるなど、保護措置が講じられるようになりました。その後さらに保護を強化すべく、2025年5月5日にはフランス文化大臣からコンコルド1号機とその付属設備一式を「歴史的記念物」に正式に「分類」するとの発表がなされています。分類は登録よりも厳格な保護措置であり、まさに国宝級の扱いと言えるでしょう。これにより、「コンコルド」という比類なき航空遺産が将来にわたって適切に保存され、後世の人々に伝えられていくことが期待されています。
なお、2024年5月時点ではコンコルドの文化財指定に関する正式発表はまだ行われていませんでしたが、その時点ですでに関係者による申請や審議が進行中であることが報じられていました。実際には上述のように2024年10月に公式の登録が行われ、翌2025年5月に分類指定が公表されています。コンコルド1号機がフランス国家の文化財として保護対象となった初のコンコルド機であり、この動きは今後他の保存機にも広がる可能性があります。いずれにせよ、コンコルドが単なる過去の遺物ではなく、人類のイノベーションの象徴として正式に認められた意義は大きいと言えるでしょう。
第5章:新たな挑戦者たち(Boom Supersonic、NASA X-59、雲星など)の最新動向
コンコルドが空を去ってからも、「再び音速の壁を超える旅客機を」と願う挑戦者たちの挑戦は続いています。21世紀に入り航空技術や材料、コンピュータ技術が飛躍的に進歩したことを背景に、各国の企業や機関が次世代の超音速旅客機の開発プロジェクトを立ち上げています。その中でも注目すべき主要プレイヤーと、その特徴は以下のとおりです:
Boom Supersonic社(アメリカ):
コンコルドの後継となる民間超音速旅客機「Overture(オーバーチュア)」を開発中のスタートアップ企業です。オーバーチュアは全長約61m、乗客定員64~80名程度の中型機で、巡航速度はマッハ1.7(約2,100km/h)を目標としています。これはコンコルド(マッハ2.04)よりやや遅い設定ですが、航続距離は約4,250海里(7,870km)とされ、太平洋横断路線では途中給油が必要なものの大西洋横断は無給油で可能な設計です。
4発のターボファンエンジン「Symphony(シンフォニー)」はアフターバーナー非搭載で燃費と整備性に優れ、100%持続可能航空燃料(SAF)での運航も想定されています。機体やエンジンには最新のコンポジット素材や3Dプリント技術が導入され、環境面・経済面でコンコルドより改善された性能を目指しています(それでも「現代の大型機のビジネスクラス座席より燃料消費は2~3倍高い」との分析もあります)。
ブーム社はすでにユナイテッド航空やアメリカン航空、日本航空(JAL)などから計130機の受注仮契約を獲得し、開発資金を確保しています。開発スケジュールによれば、2026年に試作初号機をロールアウト、2027年に初飛行、2029年の型式認証取得・就航を目指しており、ノースカロライナ州グリーンズボロに専用工場「スーパー・ファクトリー」を建設して量産体制の準備も進めています。さらにブーム社は実機開発のリスク軽減のため、全長約21mの1/3スケール技術実証機「XB-1(通称ベイビー・ブーム)」を製作しました。
XB-1はGE製J85ターボジェットエンジン3基を搭載した小型の有人実験機で、2023年からカリフォルニア州モハーヴェ空港で飛行試験を重ね、2024年3月に初飛行、2025年1~2月にはマッハ1を超える超音速飛行にも成功しています。XB-1は史上初の民間開発による超音速ジェット機であり、その試験データはオーバーチュアの設計最終化に大いに役立てられました。ブーム社は2025年2月にXB-1の試験完了とオーバーチュアの基本設計確定を発表しており、いよいよ本格的な製造段階へ移行しつつあります。
項目 | 仕様 |
---|---|
巡航速度 | マッハ1.7(約2,100 km/h) |
航続距離 | 4,250海里(約7,870 km) |
乗客定員 | 64~80名 |
巡航高度 | 60,000フィート(約18,300 m) |
機体全長 | 201フィート(約61.3 m) |
翼幅 | 106フィート(約32.3 m) |
エンジン | 4基のSymphony™中バイパスターボファンエンジン(アフターバーナーなし、推力35,000ポンド) |
燃料 | 100%持続可能な航空燃料(SAF)対応 |
環境性能 | ネットゼロ炭素排出を目指す |
騒音基準 | ICAOチャプター14 / FAAステージ5準拠 |

NASA(アメリカ)X-59 “Quiet Supersonic”:
アメリカ航空宇宙局(NASA)がロッキード・マーティン社と協力して開発している実験機で、正式名称を「X-59 QueSST(クエスト)」と言います。これは商業旅客機ではなく、静粛な超音速飛行を実証するための単座の実験航空機です。
コンコルドが直面したソニックブーム問題を技術で解決し、将来的に超音速飛行の陸上飛行禁止規制を緩和・撤廃することを目指す、いわば音速の壁ならぬ「騒音の壁」を破るためのプロジェクトです。X-59の特徴は細長く尖った機首と独特な機体形状にあります。操縦士は前方視界を確保する窓を持たず、代わりに機首を極端に長く伸ばすことで衝撃波の干渉を制御し、ソニックブーム問題を劇的に低減する設計となっています。
巡航速度はマッハ1.4程度、巡航高度は約55,000フィート(16,800m)を予定しており、理論上発生する爆音は約75フォン(EPNdB)相当と、遠くでドアを閉めた程度の「ソニックサンプ(音のかすかなこだま)」にとどまる見込みです。これは従来の超音速機(コンコルドのソニックブームは約105~110フォンとも)に比べ格段に静かです。
現在、X-59はカリフォルニア州のスカンクワークス施設で機体製作と地上試験が進められており、初飛行は2024~2025年に計画されています。初飛行後はアメリカ各地の選定された都市上空で実際に超音速飛行を行い、住民がどの程度の「音」を感じるかアンケート調査を実施する予定です。これにより得られたデータをFAA(連邦航空局)やICAO(国際民間航空機関)など航空当局に提供し、2020年代後半から2030年頃までに現行の超音速飛行禁止ルールを見直すことが最終目標です。X-59の成果次第では、将来のビジネスジェットや旅客機が陸上でも超音速で飛べる道が開け、超音速旅客機復活の大きな追い風になると期待されています。
項目 | 仕様 |
---|---|
全長 | 約30.4メートル(99.7フィート) |
翼幅 | 約9.0メートル(29.5フィート) |
巡航速度 | マッハ1.4(約1,510 km/h) |
最大速度 | マッハ1.5(約1,593 km/h) |
巡航高度 | 約16,800メートル(55,000フィート) |
エンジン | General Electric F414-GE-100(推力22,000ポンド) |
騒音レベル | 約75 EPNdB(車のドアを閉める音程度) |
乗員 | 1名(パイロット) |
コックピット視界 | 前方窓なし、4Kカメラとモニターによる外部視界システム(XVS)を使用 |
初飛行予定 | 2025年 |

「雲星(Yunxing)」計画(中国):
中国でも独自の超音速旅客機開発が進行中です。注目されるのは北京市のスタートアップ企業「Space Transportation(凌空天行科技)」社が手掛ける「雲星」シリーズで、マッハ4(時速約4,900km)というコンコルドの2倍に達する速度の次世代超音速旅客機を構想しています。
2024年10月には試作機による飛行実験でマッハ4超を達成し、開発は技術実証からエンジニアリング段階へと移行しました。この機体は高度20~100kmの成層圏から宇宙空間に近い領域を飛行する「準軌道」飛行を視野に入れており、ロケットと航空機の中間のようなコンセプトとなっています。2026年に縮小版プロトタイプの初飛行を予定しており、そのデータをもとに2030年に本格的な有人超音速旅客機(愛称「大圣:Dasheng=孫悟空」)の初飛行を目指すと発表されています。
雲星プロジェクトでは、従来のジェットエンジンにラムジェット/スクラムジェットなどの技術を組み合わせて超高速飛行を可能にすることが検討されており、中国国内では新型のラムジェットエンジン「金斗(Jindou)400」の開発実験が成功したとの報道もあります。スペース・トランスポーテーション社は「北京~ニューヨーク間を2時間で結ぶ」ようなサービスを2030年代に実現したいと意気込んでおり、国家的な支援の下で開発を加速させています。雲星は垂直離着陸能力も持たせた革新的なデザインになるとも言われ、実現すれば航空旅行の常識を覆す存在となるでしょう。
項目 | 仕様 |
---|---|
開発企業 | スペース・トランスポーテーション(凌空天行科技有限公司) |
初飛行予定 | 2027年(原型機) |
巡航速度 | マッハ4(約4,900 km/h) |
飛行高度 | 約20 km(近宇宙空間) |
航続時間 | 地球上のほとんどの地点を3時間以内で到達可能 |
エンジン | 筋斗云(JINDOU-400)高速衝圧エンジン(推力400kg以上) |
機体構造 | 高耐熱性の複合材料を使用した全複合材構造 |
気動設計 | 高揚抗比の乗波体(waverider)設計 |
離着陸方式 | 垂直離着陸(VTOL)機能を備える予定 |

その他のプロジェクト:
この他にも、超音速ビジネスジェットを目指すプロジェクト(例:アメリカの「Spike Aerospace」社や、かつて存在した「Aerion Supersonic」社など)や、ロケットによる地球圏内高速旅客輸送(スペースX社のサブオービタル飛行構想など)といった取り組みが各国で進められています。
各プロジェクトはコンコルドと比べて騒音低減や燃費改善、環境対応(カーボンニュートラル)に軸足を置いており、過去の教訓を踏まえて持続可能な超音速旅客機の実現を目指しています。もちろん技術的ハードルは依然高く、商用化まで乗り越えるべき課題も山積していますが、コンコルドで一度は途絶えた「音速を超える旅客機」の夢に再び火が灯っていることは確かです。
超音速飛行の未来への展望
コンコルドは20世紀後半における航空技術の結晶であり、人類が音速を手にした象徴でした。その栄光と挫折の歴史は、技術革新の素晴らしさと同時に、騒音や環境負荷、経済性といった課題を私たちに突きつけました。しかし、その伝説は終わりではなく、いま次世代のプロジェクトに受け継がれています。コンコルドが文化財として保護される動きは、過去の遺産を敬意とともに未来へ引き継ぐ象徴的な出来事です。そしてBoom Supersonic社のオーバーチュアをはじめ、NASAのX-59や中国の雲星など、新たな挑戦者たちはそれぞれのアプローチで「静かで環境に優しい超音速飛行」を実現しようとしています。これらの努力が実を結べば、かつてコンコルドが成し遂げたニューヨーク~ロンドン3時間飛行は現代によみがえり、さらには世界中どこへでも数時間で移動できる時代が来るかもしれません。
もちろん、超音速旅客機の復活が即座に実現するわけではありません。技術の完成、規制の緩和、需要の創出には時間と試行錯誤が必要でしょう。それでも、コンコルドが示した夢と課題は確実に次世代へ受け渡され、人類は再びその壁に挑もうとしています。音速を超える翼は、いまなお航空界のフロンティアであり続けているのです。コンコルドの遺産を胸に、次の超音速旅客機が大空を駆ける日を、私たちは期待とともに見守ることになるでしょう。

コンコルド1号機(登録記号F-WTSB)がフランスの歴史的記念物に指定されたというニュースには、やっとコンコルドの偉大さが公式に認められたという嬉しさと、もう二度と空を飛ぶことはないんだという寂しさが入り混じった気持ちになった。1960年代に誕生したこの機体は、技術とデザインの両面で画期的で、未来の航空機の象徴だった。騒音や燃費の問題がいつか改善され、復帰する日が来るのではないかと思っていた。特に現在は、ロシア上空を飛行できないため、フランスから日本へのフライトは以前より2〜3時間延長されて約14時間30分〜15時間30分かかるんだけど、もしコンコルドが現役だったら、6時間程度で到着できたはずなのに、と思うと今こそコンコルドに活躍してほしい。もちろん改善はされても乗員数は100人程度だろうから、手の届く価格ではなさそうだけどね。
コンコルドの機体は今でも圧倒的に美しいと思う。空を飛ぶ鳥のような流線型の胴体、薄氷の刃のような翼、そしてドロップノーズの繊細なカーブ。エッフェル塔もそうだけど(僕の頭の上にも乗ってるよ)昔のフランスの建築技術は鉄でまるで粘土のように、柔らかく繊細なカーブを描かせることが上手くて(石の建築物でも細部にまで丸みを帯びた繊細なカーブを持たせてる技術も余裕もすごい)、それがパリの街を柔らかくお洒落に見せているんだと思う。コンコルドが設計された頃のフランスのデザインは車にしても洋服にしても、ジャック・タチの映画に出てくるようなレトロフューチャーな世界観がカッコよかった。(シトロエンのDSなんて宇宙人が乗っていそうだ)コンコルドが現役だった頃は、子どもから大人までが「一生に一度はコンコルドに乗ってみたい」と願う憧れの象徴だったことがよくわかる。2000年7月25日の事故が特に衝撃的だったのは、離陸時には既に翼の後方から火が出ていたから、多くの人々が一部始終を目撃してしまったこと。空港近くの高速道路を走る帰宅時の車からは、飛行機が落ちてキノコ雲が上がる様子が横に見えるという、シュールでショッキングな映像だった。しかもホテルに突っ込んで宿泊者にも死者が出てしまうとは、悪夢のような状況だよね。でも、事故原因は別の航空機から脱落していた金属片だし、それ以外に事故が起きたことはなかったんだ。機長と管制塔の会話がブラックボックスに残っていて、飛行機の後尾から火が出たのは機長も離陸時に気づいていてすぐに迂回しようとしたんだけれど、速度が速すぎて向きを変えることも無理だった。そして数分もせずに墜落してしまったんだ。とにかく全てがあっという間だった。それにしても他の航空機だって事故を起こしているのに、コンコルドだけ一度の事故で飛行禁止になってそのまま引退になってしまうのは、ちょっと厳しすぎるのではないかと思っていたんだけど、実は他にもいろいろな理由があって、引退は避けられなかったんだね。確かに、乗客1人につきほぼ1トンの燃料を消費するなんて、エコの観点からもありえない話だから、事故がなくても既に商業飛行は終わっていたんだろうけど。それにしても、コンコルドは事故で引退というイメージがつきまとってしまったのは本当に残念だ。
次世代のコンコルドとも言われる後継機のうちでも、Boom Supersonic社のOvertureは実現が一番早そうだし、NASAのQuiet Supersonicはコンコルドに一番近そうだ。(騒音問題は改善されているし)中国の雲星のように時速約4,900kmとまで行くと、人間の体に影響が出ないか不安だけど、また昔のようにいろいろと空の夢が広がるよね。今や宇宙旅行も可能な時代になったけど、超音速の飛行機は特別感があって、子供心に戻ってわくわくするね。