
医療分野におけるAIの活用
フランスのユニコーン企業(設立後10 年未満で証券取引所に上場していない企業)であるDoctolibが、一般医が患者との会話を分析するのを支援するためにAIを使用した新たなサービスが、10月15日から一般に開始されます。
Doctolibとは?
Doctolibは2013年にフランスで設立されたヘルステックスタートアップです。
単なるスタートアップではなく、急成長を遂げている企業であり、医療業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する重要なプレイヤーとなっています。
医師や病院向けにオンライン予約システムや遠隔医療サービスを提供していますが、患者にとっては24時間365日医療サービスを探して予約できるプラットフォームとして広く利用されています。フランスだけではなくドイツなど、現在ではヨーロッパの多くの国で利用されています。
新型コロナウィルスの流行が転機となる
フランスとドイツではほとんどの医療機関がこのシステムを導入しており、数カ国語に対応しているため外国人でも利用可能です。英語や他の言語が通じる医療機関を絞り込むこともできるため、言語の壁を越えて医療サービスを受けやすくしています。
Doctolibはフランスとドイツで750人以上のスタッフを雇用し、1,400の医療施設で75,000人の医師と提携しています。毎月3,000万人の患者がこのプラットフォームを利用しており、その成長は新型コロナウイルスの影響で加速しました。2022年には5億ユーロの資金調達を行い、評価額は58億ユーロに達しました。
遠隔医療サービス
また、Doctolibは遠隔診療サービスも提供しており、特に新型コロナウイルスの影響で需要が急増しました。これにより、多くの医師がオンライン診療に参加し、患者へのアクセスが向上しました。Doctolibは、医療機関の予約だけでなく、薬局や整体院などの予約も可能であり、今後もその利用が期待されています。
Doctolibの主なサービスは以下の通りです。
オンライン予約システム:
遠隔診療サービス:
医療データへのアクセス:
医療機関向けソリューション:
Doctolibが開発した独自の人工知能プログラム
既存のサービスに加えて、一般開業医での診察は、Doctolibが開発した独自の人工知能プログラムにより、医師と患者の会話を収録できるようになります。患者の同意が得られれば、医師のコンピューターのマイクがオンになり、患者との会話を「聞いて」「分析」します。この日は一般開業医のみがその恩恵を受けることができ、AIは専門医との診察に関連付けられたデータに関してまだ十分にトレーニングされていないとDoctolibがTech&Coに語った。人工知能が会話全体をキャプチャします。キャプチャーを超えて、このプログラムは情報を選別し、患者のファイルを作成するための全ての管理作業を処理することができます。診察が終わると、この人工知能アシスタントは包括的なレポートを提供し、医師が下した診断をまとめます。
会話の機密性
AIが会話を収録しているということは、医師と患者の二人の会話ではなく、AIあるいは第三者を交えた会話になるということを心に留めておく必要があります。もちろん、Doctolibは会話の機密性を保証しています。AIが優秀な書記役を務めることにより、医師がカルテに書き留める時間を節約でき、時間と患者への注意に集中できるようになります。この件については360人のボランティア医師が数ヶ月間この解決策をテストした結果、良好なフィードバックを得ています。
患者にとっての利点
これまで多くの患者から不満として挙げられていたのは、医師は患者から聞いた内容を記録するためにキーボードに集中しているため、患者を見ることが殆どないという点です。しかしAIの導入によって、記録をオンタイムでAIに任せることができ、医師が患者の目を直接見て、より多くの注意を向けることを可能にするはずであり、これまで見過ごされてきた問題に気づくことも多くなるでしょう。
データの保護
多データ保護の専門家は、大規模にデータを保存することになることから、患者のデータがサイバー攻撃の潜在的な標的になることを指摘しています。Doctolibは自社のAIデータを保存することはないと述べていますが、既に2020年には6000件以上のオンライン予約と医療情報のハッキングに遭っています。
医師に打ち明ける個人的で親密な情報が、いつか収益化を決定する可能性のある民間企業に提供される可能性があるということです。
医療の非人間化
医師にとっては、カルテの記入などの時間が減るために、患者と向き合う時間が増えるということが謳い文句となっていますが、ひとりひとりの患者に費やす時間を減らし、診察回数を増やす医師が増えることは避けられないでしょう。
また、AIはDoctolibにとって重要な成長の原動力と見なされており、医療専門家の補助作業を行うことが目的ではありますが、人工知能の進化とともに、医師に代わって、自ら診断を下すようになる可能性も無視できません。
医師に打ち明ける個人的で親密な情報が、いつか収益化を決定する可能性のある民間企業に提供される可能性があるということです。
Doctolibからの回答と今後の課題
そういった不安な要素について、Doctolibは以下のように回答しています。「医師と患者の対話は決して記録も保存もされません。患者の同意を得た場合にのみ有効になる診察アシスタントは、メモ取りを担当し、リアルタイムに内容を要約を作成します。この要約は常に医師の最終的な承認を受けるため、医師の意見が反映されます。」
医療現場でのAIの活用は、効率性と患者とのコミュニケーションの質を向上させる可能性があります。しかし、一方でデータ保護やプライバシーに関する懸念も残ります。今後、この技術がどのように発展し、医療業界に影響を与えるか、この分野の先駆者として今後の動向が注目されています。

賛否両論はあるけど、ぼくは医療現場へのAIの導入を楽しみにしているんだ、というよりメモ取りだけでなく、もっと積極的に、診察にどんどん活かしてもらいたいと望んでいるよ。
いくら良い医師でも人間である限り間違いはあるし、特に外国人の患者に対しては一般的なフランス人患者より誤診が起きやすいと言われているんだ。(例えば、一般的に日本人はフランス人に比べて体温が低いから高熱なのに見逃されたり、同じ薬の量でも効きすぎたり副作用やアレルギーが出やすかったりするけど、そういったことを理解している医師はすごく少ないんだ。)
だから特に外国人患者の場合は、他の医者にセカンド、サードオピニオンを聞かないと、治療が間違った方向に進んでしまうことになりかねない。
でも今のフランスでは、医師の数が足りていなくて、主治医以外の予約を取るのがとても大変だから、治療方針に納得はできなくても妥協しなけれないけないという声もよく聞くよ。
だから、担当する医師の経験だけに頼るのではなく、世界中のデータにアクセスできるAIの意見を診断にもどんどん取り入れて、居住国に関係なく、どこでも同じ質の医療が受けられるようになると理想的だよね。