GDPR-03
GDPRは、個人データの保護を強化し、企業にデータ管理の責任を明確化することで、グローバルなデータ保護の標準を大きく引き上げました。企業は、GDPRに準拠するために、データ収集や処理の方法を見直し、透明性とセキュリティを確保する必要があります。GDPR対応のために、企業はデータ保護オフィサーの設置やシステム改修などの投資を強いられ、EU委員会の調査では、中小企業の平均コストが約9.5万ユーロ(約1,500万円)、大企業では数百万ユーロ規模に達していることが推定されています。 また、規制遵守のための書類作成や監査が増加し、業務効率が低下した事例も報告されています。総合的にGDPRは、EUのGDPを0.1~0.3%押し下げたとの試算(欧州議会調査, 2019)も出ており、投資に見合う成果があるのかを疑問視する声も上がっています。

GDPRとは?

GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規制)は、EU(欧州連合)およびEEA(欧州経済領域)内の個人データ保護を強化するために施行された規制です。
GDPRは、個人のプライバシー権利を守ることを目的とし、企業に対してデータ処理の透明性と説明責任を求めることで、データの不正利用を防ぎ、EU域外への個人データの移転も規制します。
2018年5月25日に施行されたGDPRは、EU内外の組織に広範な義務を課し、世界的なデータ保護のあり方に大きな影響を与えています。

GDPRの対象地域

GDPRは、以下の場合に適用されます:

個人データの定義

個人データとは、個人を直接または間接的に特定できる情報を指します。
具体的には、下記のような情報が含まれます。

  • 氏名
  • メールアドレス
  • オンライン識別子(IPアドレス、Cookie 等)
  • クレジットカード情報
  • パスポート情報
  • 位置情報
  • 指紋、顔写真
  • 出身地、部族

データ処理の原則

データ主体の権利

GDPRは、個人(データ主体)に以下の権利を付与しています:

データ侵害の通知義務

データ侵害が発生した場合、組織は監督機関に72時間以内に通知する義務があります。また、個人の権利と自由に対するリスクが高い場合は、データ主体にも通知する必要があります。

データ保護責任者(DPO)の任命

大規模なデータ処理を行う組織や、特定の種類のデータを処理する組織は、データ保護責任者(DPO)を任命する必要があります。

制裁

GDPRに違反した場合、企業は最大2,000万ユーロ、または全世界の年間売上高の4%のいずれか高い方の制裁金を科される可能性があります。

GDPRの世界的な影響

GDPRがEU域外国の企業に与える影響は?

GDPRは、EU居住者の個人データを収集または処理する場合は、EU域外に拠点をおく組織にも適用されます。
欧州委員会によれば、「個人データとは、個人の私生活であれ、職業であれ、あるいは公的生活であれ、個人に関係するあらゆる情報のことである。氏名、自宅住所、写真、電子メールアドレス、銀行口座の詳細情報、ソーシャル・ネットワーク・ウェブサイトへの書き込み、医療情報、コンピュータのIPアドレスまで、あらゆるものを含む」とされています。

企業や組織への負担増

国際的なデータ移転の制限

個人の権利行使の難しさ

解釈の曖昧さ

罰則の厳しさ

データ保護と公共の利益のバランス

技術的課題

イノベーションの阻害

GDPRがAI開発に与える影響

GDPRは個人データの保護を重視するため、AI開発において以下のような課題をもたらします:

GDPRは個人データの保護を強化し、プライバシー権利を守る重要な規制ですが、企業や組織にとってはコストや負担が大きく、技術開発や国際的なビジネスに影響を与える側面もあります。また、規制の解釈や適用における曖昧さも課題となっています。これらの問題点を踏まえつつ、データ保護とイノベーションのバランスをどのように取るかが今後の重要な課題です。

GDPRにより、企業が制裁を受けた例

GDPR(一般データ保護規則)が施行されて以来、IT企業に限らず、世界的に有名な多くの企業が違反行為に対して制裁金を科せられています。
以下に、GDPR違反により制裁を受けた主な事例をいくつか紹介します。(カッコ内の国名は制裁された企業の国籍ではなく、違反が認められ、審議を行ったEUの国名です。英国は2020年にEUから離脱していますが、審議を行ったのはEU脱退以前となります。)

Google(フランス)

British Airways(英国)

Marriott International(英国)

H&M(ドイツ)

Amazon(ルクセンブルク)

WhatsApp(アイルランド)

TikTok(イタリア)

Meta “Facebook”、(アイルランド)

制裁の傾向と教訓

GDPRは、企業に対して個人データの保護を厳格に求める規則であり、違反した場合には高額な制裁金が科せられます。これまでの事例から、透明性、同意、データセキュリティ、未成年者保護、データ転送の規制が特に重要なポイントであることがわかります。企業は、GDPRに準拠するために、これらの点に注意を払い、適切な対策を講じることが求められます。

フランスの通信会社FREEのデータ漏洩事件

2024年10月、フランスの大手インターネットサービスプロバイダー「FREE」がサイバー攻撃によりデータ漏洩の被害に遭ったことを発表しました。この事件では、約1,920万人の顧客の個人情報が漏洩したことが明らかになっています。

FREEのデータ漏洩事件はGDPRに該当するのか?

FREEが、顧客の個人データの漏洩に対して法的に責任を負うかどうかは、まだ審議中とのことですが、FREEは漏洩後の「GDPRに基づく対応」を適切に行なったという報告が出ており、過去に制裁を受けてきた企業に対して、そこまで多額にはならないと見られています。
しかし、これまでGDPRにより制裁を受けてきた企業は、実際に顧客に対する被害は出ていなくてもGDPRの要件を満たしていないという理由で、多額の制裁金を支払わされているのに、銀行口座を含む顧客の個人情報がダークウェブで売却されるなど、前例とは比較にならないほど深刻な被害を出しているのに制裁がないとなると、EUの企業が優遇されていると考えられても仕方がないという声が、フランス国民の間でも上がっています。

GDPRに基づく対応

FREEの取った対策

漏洩の発生を受けて、FREEは個人情報保護に関する法律や規制の遵守が重要であると強調し、関係当局に対しても協力する意向を示しています。
この事件により、個人情報保護の重要性が再認識され、同業他社も同様のリスクに直面する可能性があることから、業界全体でのセキュリティ対策の見直しが求められています。近年のデータ漏洩事件の増加は、企業や個人が情報セキュリティの強化を余儀なくされる一因となっています。

パリロボくん
パリロボくん

「GDPRは個人データの保護を強化し、プライバシー権利を守る重要な規制」と謳っているけれど、EU域内の市民たちからは、個人のプライバシーを守るのが目的なんじゃなくて、外国企業から制裁金を搾り取りたいだけでしょ、と皮肉る声が多く上がっている。実際に損をしているのは国民や企業で、恩恵を受けているのはEUだけだってね。そもそもGDPRなんてふわっとした規制で、不正や犯罪を取り締まるなんて無理があるとしか思えないよ。しかもふわっとしているわりに柔軟性がないから、医療データさえ同意を受けた特定の医師しかアクセスができず、救急医療の現場などでは患者の既往症や禁忌物(アレルギーなど)などのデータにさえアクセスできずに問題が出てしまったりしているんだ。怖いよね。
EU内の企業でも、GDPRで守られているはずの、個人データの削除に応じてもらえなかったり、データが悪用されることなんて日常的に起きているけれど、CNIL(フランス共和国データ保護機関)に報告しても自動応答メールが来るだけで、実際に対応してくれているとは到底思えない。いっぽうでMeta社などには「EUから米国へのデータ転送がGDPRの要件を満たしていなかった。」などという、殆どの企業が該当しそうな理由をつけて、約1800億円もの制裁金を徴収したりしている。
そもそも「GDPRの要件」の内容自体が曖昧で、制裁の理由もかなりアバウトだ。データ処理やセキュリティ対策にそこまで投資できない中小企業などは調べれば殆どがGDPR違反に該当してそうだけど、実際に制裁されているのは外国籍の大企業ばかりだ。多額の制裁金を見込めない中小企業には興味ないし、GDPRのせいでEUの企業が倒産しては困る、というのが本音だろうね。結局EUの外国企業いじめに、個人のプライバシーの保護という大義名分が利用されているだけで、外国企業もお布施だと思って仕方なく制裁金を支払っているんじゃないかな。
去年のFREEのデータ漏洩事件がいい例だけど、これまで制裁を受けてきた外国企業はGDPRの要件を満たしていないというだけで、実際にユーザーが深刻な被害に遭ったケースは殆どない。いっぽうでFREEの場合は個人情報と共に引き落とし用の銀行口座までダークウェブで売買されてしまっている。フランス国民の約3分の1(外国人も多く含まれているけど)が被害に遭うほどの大きな事件を起こしていながら、「GDPRに基づく対応」ができていたから罪には問われない、なんていう結果になったら、身内(EU圏内の企業)に甘すぎだと言われてもしかたがないよ。(まだ審議中らしいけど、なぜかEUの企業の審議のほうが時間がかかる。)
これまでの制裁は外国企業いじめが目的だったという証明になってしまうから、FREEもちゃんと制裁しなければならないことは政府もわかっているはずだ。FREEだってハッキングの被害者だから気の毒だとは思うけど、同じハッキングの被害者である英国のBritish Airwaysなどは、銀行口座情報を含まない約50万人の顧客情報が漏洩した件で、データセキュリティ要件の違反と見なされて約25億円の制裁金を支払っているんだから(コロナによる業績の低迷がなければ元々の制裁金は約230億円だった!)、FREEが同様の基準で制裁を受けたら、制裁金はとんでもない額になるだろうね。
技術やグローバリゼーションが進んだこの時代に、GDPRのようなエンジニアや企業や個人の足を引っ張るだけの悪法が成立したことに驚くけど、こんな悪代官みたいなやり方が8年間も通用していることがほんとに信じられないよ。