
業務委託契約における支払いをスムーズに進行
Paybystep(ペイバイステップ)は、業務委託における支払いを段階ごとに分けて処理できるオンラインプラットフォームを提供しているスタートアップです。このサービスにより、受託者(たとえばフリーランスや中小企業など)は、作業の各フェーズ完了時に確実に報酬を受け取ることができるようになります。
2025年版「投資すべき100社」のひとつとして、フランスのビジネス誌『Challenges』にも選ばれています。
欧州企業の約6割が支払い遅延
ヨーロッパ委員会によると、ヨーロッパで発行される請求書のうち、約60%が期限までに支払われていないとのことです。そして、企業倒産の約4分の1はこの支払い遅延が原因となっています。こうした問題に対処するため、起業家ヨアン・シャレイロン氏(41歳)は2024年末に「Paybystep」を立ち上げました。
このサービスでは、主に中小企業(PME)、中堅企業(ETI)、大企業と、比較的小規模な事業者やフリーランスとの間に発生する業務委託契約における支払いをスムーズに進行させます。現在すでに約20社の顧客がサービスを利用しており、その多くは建築士、弁護士、コーチング企業、調査事務所などの第三次産業の専門家です。
見積もりの各項目が「支払いフェーズ」に
Paybystepの仕組みは非常に明快です。見積書上の各項目を「支払い対象のステップ」として設定し、作業が完了すると、受託者はその成果物(例:設計図、草案など)をプラットフォーム上にアップロードします。依頼者側は内容を確認し、納得すれば即時支払いが行われ、次の工程に進むという流れです。さらに、知的財産権の譲渡契約も、オンラインで簡単に結ぶことが可能です。
特に問題となるのは、少額の案件における長期の未払いです。「たとえば、数千ユーロの1か月間の業務に対して、報酬の支払いが4か月も遅れることがあります」と、シャレイロン氏は現状を語っています。Paybystepではすでに100万ユーロ(約1億6,200万円)相当の取引が行われており、同様の課題を抱える多数の事業者にとって魅力的な選択肢となりつつあります。
顧客には無料、受託者に対してのみ課金
Paybystepは、依頼者(支払い者)に対しては完全無料でサービスを提供しています。
- 一方で、報酬を受け取る側である受託者(フリーランスや中小企業)には、以下の料金体系を設定しています:
- 毎月の入金につき1ユーロ(約162円)
- 自動請求書の発行ごとに1ユーロ(約162円)
- 知的財産権譲渡契約ごとに1ユーロ(約162円)
このように、非常にリーズナブルな価格設定となっており、利用者のコスト負担を最小限に抑えています。今後はさらに、ファクタリング(売掛債権の早期現金化)、キャッシュフロー改善、プロジェクト管理ツール、保険などの機能を追加する予定です。これにより、多面的な経済的支援が可能なプラットフォームへと進化していく計画です。
多様な経歴の創業メンバーが牽引
PaybystepのCEOであるヨアン・シャレイロン氏は、哲学の勉強を中断し、若くして実業界に飛び込んだ実践派の起業家です。かつてはフランス国内でSNS「Tooodooo」の運営も行っていました。同氏とともにPaybystepを共同設立したのは、オートリブ(Autolib)の元CEOであり、Cdiscountでも経営陣を務めたモラルド・シブー氏(65歳)です。2人は共に労働者階級出身という共通点を持ち、現場目線での課題解決に情熱を注いでいます。
さらに、リールのカトリック大学で「情報工学・イノベーション」を学んだルー・ベッティーニ氏が、オペレーションディレクターとして加わり、テクノロジーの開発や日々の業務を支えています。本社はフランスのブローニュに拠点を置いています。
初の資金調達で1.8百万ユーロを目指す
今後の拡大に向けて、Paybystepは1.8百万ユーロ(約2億9160万円)の資金調達を予定しています。
- この資金は主に次の用途に充てられる予定です:
- プラットフォームの技術開発強化
- マーケティング戦略の拡充
- ヨーロッパ各国でのサービス展開準備
Paybystepは、2025年の事業計画として、取引総額1,500万ユーロ(約24億3000万円)に対し、売上11万ユーロ(約1,782万円)を見込んでいます。今後の成長性を考慮すると、投資家にとっても大きなリターンが期待できるスタートアップです。
企業情報
- 企業名:Paybystep(ペイバイステップ)
- 設立:2024年末
- 創業者:
- ヨアン・シャレイロン氏(CEO、Tooodooo創業者)
- モラルド・シブー氏(元Autolib・Cdiscount幹部)
- ルー・ベッティーニ氏(CTO、情報工学修士)
- 所在地:フランス・ブローニュ
- 技術内容:
- 業務委託の進捗ごとに支払いを行うプラットフォーム
- オンラインでの知的財産譲渡機能付き
- 主な用途:業務委託における支払い遅延の解消とキャッシュフロー改善
- 現在の状況:
- サービス開始済み(2024年末)
- 顧客数:約20社
- 総取引額:100万ユーロ(約1億6200万円)
- 商業化の進行状況:本稼働中で顧客獲得が進行中
- 目標資金調達額:1.8百万ユーロ(約2億9160万円)
- ターゲット顧客:中小企業、フリーランス、専門職(建築士・弁護士など)
- 想定ユーザー:業務委託契約における支払いの透明性と迅速性を求める事業者
- 対象市場:ヨーロッパ全域のB2B取引市場
- 売上見通し(2025年):取引総額1,500万ユーロ(約24億3000万円)、売上11万ユーロ(約1,782万円)