伝統と革新が融合する、日本酒とフレンチの新世界

ユネスコ無形文化遺産登録後、日本酒はなぜフレンチと結びつき、フランスで再評価されているのでしょうか?

ユネスコ無形文化遺産登録が示した、日本酒の新たな国際的地位

2023年12月、日本酒はユネスコの無形文化遺産に登録されました。
この登録は「日本酒が世界的に認められた」という単純なニュースにとどまりません。フランスの食文化の文脈で見ると、日本酒がようやく「異国の珍しい酒」から、「技術と文化を背負った発酵飲料」として扱われる入口が開いた出来事でもあります。

日本酒は水と米と麹という、驚くほど少ない要素から生まれます。しかし味わいは、軽やかなミネラル感から、果実のような香り、熟成由来の香ばしさやナッツ感まで幅が広く、温度でも表情が変わります。素材が少ないのに表現が多い。この矛盾のような面白さが、ワインの国フランスで再評価される理由の一つです。

フランスでは長らく「ワインが食の中心にある」と言われてきましたが、実際の高級料理の現場は、常に新しい味覚の言語を探しています。ユネスコ登録は、日本酒をその「新しい言語」として正式に扱いやすくした、象徴的な追い風になりました。

フランス料理人が見出した、日本酒の静かな力

「日本酒は、料理の旨味を静かに引き出し、余韻をふくらませてくれる共鳴器のような存在です」

そう語るのは、パリ屈指の高級ホテル《ホテル・ド・クリヨン》のシェフ・ソムリエ、グザヴィエ・チュイザ氏です。彼が魅了されているのは、日本酒の“やさしい包容力”だといいます。

フレンチは、濃厚さだけで勝負する料理ではありません。酸味の立ち方、ミネラル感、苦味や青みの処理、火入れの繊細さ、食材の持つ香りの伸ばし方。そうした設計の上に成立しています。
日本酒はそこに、ワインとは違う形で寄り添います。

たとえばヤギのフレッシュチーズの軽い酸味。ワインだと酸がぶつかって尖る場合がありますが、日本酒の柔らかな旨味は、酸味を丸め、香りを浮かせることがあります。春のアスパラガスの青い香りも同様で、ワインの強い酸や樽香が香りを覆うことがある一方、日本酒は香りの層を壊さずに支えることがあるのです。生牡蠣のミネラル感も、冷えた吟醸酒の透明感と響き合う瞬間があります。

彼が「日本酒界のロマネ・コンティ」と称される福島の《大七(Daishichi)》に心を奪われたというエピソードは象徴的です。フランスのトップソムリエは、単に香りが派手な酒を求めているわけではありません。複雑さと構造、余韻の長さ、料理を邪魔しない品格。そうした基準で評価したときに、日本酒は十分に「世界の高級酒」として成立します。

日本酒の味が幅広いのはなぜか

日本酒の多様性は、単に銘柄が多いからではありません。
味の設計図になる要素が複数あり、その組み合わせが膨大だからです。

まず、米の磨き方で香りと透明感の方向性が変わります。次に、酵母や発酵温度で香りの出方が変わります。さらに、搾り方や加熱処理、熟成の取り方でも印象が変わります。温度による変化幅も大きく、冷酒、常温、燗で別の飲み物のように感じることもあります。

フランスで日本酒が注目されるのは、ここに「料理と合わせる余地」が大きいからです。ワインのペアリングが確立された世界に、もう一つの巨大な選択肢が入ってくる。料理人やソムリエが興奮しないはずがありません。

日本酒の歴史を深掘りする、発酵文化としての長い道のり

日本酒の歴史は、単に「古い酒」という話ではありません。日本列島の米作と発酵技術の進化そのものです。

起源のイメージ、口噛み酒から始まる「神事の酒」

起源として語られるのが、紀元前3世紀頃にあったとされる口噛み酒です。米を口で噛み、唾液で糖化させ、自然発酵に委ねる。現代の衛生感覚では驚く方法ですが、当時の人にとっては「発酵」という不可視の力を扱うための現実的な手段でした。

酒は神に捧げるものであり、祭礼や共同体の儀式と結びついていました。ここが重要で、日本酒は最初から「ただ酔うための飲料」ではなく、社会と宗教の装置として発達した側面が強いのです。

奈良時代、国家が酒を管理し始める

奈良時代には中央政府に造酒司が置かれ、宮廷用の酒造りが制度的に整備されました。麹を使い、でんぷんを糖に変える技術が広まり、品質が安定していきます。
この時期から、日本酒は「再現性のある技術」へと変わっていきます。偶然の発酵ではなく、管理された醸造へ。これが後の発展の土台になります。

平安時代、貴族文化と酒の洗練

平安期には貴族社会の美意識とともに、甘口で濃厚な酒が好まれたとされます。酒は饗宴の中心にあり、詩歌や儀礼と結びつき、文化的価値が高まっていきます。

鎌倉時代、現代の日本酒へ近づく製法の登場

鎌倉時代になると諸白造が登場します。精米した米と麹を用いる贅沢な造りで、雑味を抑え、より洗練された酒質を生みます。
この流れが、現代の「磨くほどクリアになる」という日本酒の価値観にもつながっていきます。

江戸時代、量と技術とブランドの時代

江戸時代には寒造りや火入れが定着し、保存性が上がり、流通が発達します。灘や伊丹など上方で造られた酒が「下り酒」として江戸に運ばれ、ブランド化します。
ここで日本酒は、地域性と流通、技術革新が合流し、「産地と品質で選ぶ酒」になっていきます。

明治から昭和、機械化と社会変動の波

明治期には精米機など機械化が進み、高精白米が得やすくなり、淡麗で洗練された酒質が広がります。
一方で昭和の戦時期には米不足の影響を受け、代替原料やアルコール添加による三倍増醸酒が広がりました。

ここは日本酒の歴史の中でも複雑な時代で、量を確保するために味の設計が変わり、「日本酒のイメージ」に影を落とした面もあります。

1970年代以降、吟醸酒と地酒が「個性」を取り戻す

1970年代から吟醸酒ブーム、地酒ブームが起こり、地方の小規模蔵が個性ある酒を発信する流れが生まれます。
この時期は、日本酒が再び「造りの違いで選ぶ酒」へ戻っていく転換点です。

ただし同時に、ビールやRTD、ワインが普及し、日本酒消費は減少傾向にも入ります。「日本酒は年配の酒」というイメージが固定化したのもこの頃の延長線上にあります。

フランスで日本酒が広まらなかった理由、そして広がった理由

フランスで日本酒が一般化するのに時間がかかったのは、単に輸入量が少なかったからではありません。
最大の問題は「最初の出会いが間違っていた」ことです。

“SAKE”という名前の別物が作った誤解

2000年代初頭まで、パリの低価格帯の日本料理店では、食事の最後にサービスとして「SAKE」が出ることがありました。しかしその中身は日本酒ではなく、中国産の高アルコール米焼酎(白酒)や、甘いリキュールであるケースがあったとされます。度数は40度前後で刺激が強く、日本酒の繊細な香味とは別物です。

この体験が初めての出会いになると、「日本の酒は強烈で、食後に飲む消化酒」という誤った理解が定着します。
ここでブランド価値が下がり、日本酒が食中酒として評価される道が閉ざされてしまいました。

変化を生んだのは「本物志向」とプロの言語

この空気を変えたのが、フランスの高級レストランとソムリエ文化です。
一流店が日本酒をワインリストに載せ、料理と合わせる提案をし始めたことで、日本酒は「未知の強い酒」から「料理を支える発酵飲料」へと認識が変わっていきます。

加えて、日本酒専門店が増え、ワインショップのスタッフやソムリエが精米歩合や造りを学び、ワインと同じように説明するようになりました。ここが非常に大きい点です。フランスでは、酒は「物語と背景」で選ばれます。産地、造り手、味のプロファイル、合う料理。これらが語れるようになって初めて、日本酒は選択肢として成立します。

日本酒の格付けはなぜ必要なのか、精米歩合が味を変える仕組み

フランスで日本酒が広がる上で重要だったのが、「違いが説明できる」ことでした。
日本酒には特定名称酒という枠組みがあり、精米歩合と醸造アルコール添加の有無などで分類されます。

精米歩合は、米をどれだけ削ったかを示す割合です。数字が小さいほど多く削り、外側のたんぱく質や脂質由来の雑味を減らし、香りと透明感が出やすくなります。
この仕組みは、フランス人にとって理解しやすい面があります。ワインで品種や醸造が味を決めるように、日本酒も「造りが味を決める」と説明できるからです。

さらに、純米大吟醸や純米吟醸が「米と水と麹だけで造られる」という点も、素材志向の強い現代のフランスに響きます。添加を嫌うという単純な話ではなく、「何で成り立っているかが明確」という安心感があるのです。

表:日本酒の8つのカテゴリー(精米歩合、アルコール添加の有無、特徴付き)―ランクの説明とおすすめペアリング
ランク(説明+ペアリング例) 名称 精米歩合の目安 醸造アルコール添加 特徴
ランク1 – 最上級酒(贈答用・特別な日)
高級寿司、白身魚の刺身、祝い膳
純米大吟醸 50%以下(高精白) なし 極めて香り高く繊細で、プレミアム酒の代表格。
ランク2 – 高級酒(特別な日や会食)
刺身盛り合わせ、鯛の塩焼き、フレンチの魚料理
大吟醸 50%以下 あり 純米大吟醸に近いが、醸造アルコール添加で軽やかに仕上がる。
ランク3 – 華やかな香りの食中酒
天ぷら、煮魚、和風パスタ
純米吟醸 60%以下 なし 華やかな香りと米の旨味があり、食中酒として人気。
ランク4 – 香り豊かなご褒美酒
焼き魚、塩麹チキン、軽めのチーズ
吟醸 60%以下 あり 香り高く軽快で、コストパフォーマンスの良い吟醸タイプ。
ランク5 – こだわり派の日常酒
すき焼き、鰤の照り焼き、味噌田楽
特別純米酒 60%以下 または 特別な造り なし 味わい深く、こだわりのある純米酒。
ランク6 – 軽やかな日常酒
焼き鳥(タレ)、揚げ出し豆腐、鶏の唐揚げ
特別本醸造酒 70%以下 または 特別な造り あり すっきりとした味わいで、香りはやや控えめ。
ランク7 – 素朴な味わいの家庭酒
鍋料理、煮物、漬物と一緒に
純米酒 規定なし なし 米の旨味を活かした、自然なスタイルの酒。
ランク8 – 日常用の晩酌酒
晩酌の定番、焼き魚定食、和風おつまみ
本醸造酒 70%以下 あり 日常使い向けで、すっきりと飲みやすい。

フランスで“日本酒ブーム”を牽引した獺祭という現象

フランスで日本酒が広まった流れを語るとき、獺祭は単なる人気銘柄以上の存在です。
獺祭が担ったのは、「日本酒の入口」を作る役割でした。

フランスで日本酒が広まった流れを語るとき、獺祭は単なる人気銘柄以上の存在です。
獺祭が担ったのは、「日本酒の入口」を作る役割でした。

わかりやすい数字、視覚で理解できるラベル

Dassai 23、39、45。数字が小さいほど高精白で上級。
このルールは、説明が少なくても伝わります。フランスで日本酒が伸びた背景には、こうした「理解コストの低さ」があります。

未知の文化は、まず入口が必要です。獺祭は入口の設計が巧みでした。

香りと質感が、ワインの言語に乗りやすい

果実のような香り、透明感、なめらかな口当たり。
これらは、フランスのソムリエが普段使う言語で説明しやすい要素です。香りの例えが成立しやすい酒は、普及が速い。これは文化の翻訳として重要なポイントです。

ロブションとのコラボが象徴になった理由

2018年春から初夏にかけて、旭酒造とジョエル・ロブションが共同で手がけた「Dassaï Joël Robuchon」がパリで展開されました。短命に終わったものの、日本酒がフレンチの中心に立てることを視覚的に示した出来事でした。

フレンチの頂点に立つ人物が、日本酒を冠した場所を作る。
この一点だけで、日本酒の位置づけが変わります。料理界における権威と象徴は、時に市場の数字以上の力を持ちます。

アレノが開いた次の段階、居酒屋という形での再解釈

2018年春から初夏にかけて、旭酒造とジョエル・ロブションが共同で手がけた「Dassaï Joël Robuchon」がパリで展開されました。短命に終わったものの、日本酒がフレンチの中心に立てることを視覚的に示した出来事でした。

フレンチの頂点に立つ人物が、日本酒を冠した場所を作る。
この一点だけで、日本酒の位置づけが変わります。料理界における権威と象徴は、時に市場の数字以上の力を持ちます。

世界的シェフ、ヤニック・アレノ氏とは?

ヤニック・アレノ(Yannick Alléno、1968年12月16日生まれ)は、フランスを代表するモダンフレンチの巨匠であり、世界でも屈指のミシュラン星保持者です。パリ近郊ピュトーの出身で、15歳という若さで料理の道へ。名門ホテル「ロイヤル・モンソー」や「ル・ムーリス」で修業を積み、2007年には『ル・ムーリス』の料理長として三つ星を獲得しました。

2014年にはパリ・シャンゼリゼに位置する名門「パヴィヨン・ルドワイヤン」を引き継ぎ、『Alléno Paris』として再出発。同年に三つ星を獲得し、さらにアルプスの高級リゾート地クールシュヴェルにある『Le 1947』でも三つ星を獲得。現在では世界18店舗以上を展開しています。彼の代名詞ともいえる革新技術「Extraction®」は、素材の持つ旨味や香りを最大限に引き出す抽出法で、料理界に新たな地平を切り開きました。

「L’IZAKAYA DASSAI」誕生

2024年11月、ヤニック・アレノは獺祭を店名に掲げた居酒屋スタイルのカジュアルなレストラン、『L’IZAKAYA DASSAI by Yannick Alléno』をパリ7区のグルメスポット「Beaupassage」に開業しました。

アレノは30年以上にわたり日本文化、とりわけ日本の食文化に深い関心を寄せてきました。今回の店舗は、その想いを形にしたプロジェクト。日本の大衆酒場「居酒屋」をフレンチの感性で再解釈し、和と洋を軽やかに融合させた空間を作り上げています。高級感がありながらもカジュアルで親しみやすく、誰でもふらっと立ち寄れる雰囲気が魅力です。

店内の雰囲気とメニュー

店内は温かみのある木のインテリアでまとめられ、カウンター式のオープンキッチンからは、料理が出来上がっていく様子と香りがダイレクトに伝わってきます。料理人の手さばきや鉄板の音、揚げ物の香りなど、五感で楽しめるライブ感が魅力です。
メニューは、日本の定番居酒屋メニューをフレンチ流に洗練させたラインナップです。人気のあるメニューを以下に抜粋しました。

店舗の基本情報

Salon du Sakéが担う役割、試飲イベントが文化になる瞬間

パリで毎年秋に開催される「Salon du Saké」は、ヨーロッパ最大規模の日本酒イベントとして知られています。
2025年は10月4日から6日まで開催され、会場はパリ15区のNew Cap Event Center、広いフロアに多数の酒蔵や輸入業者が集まり、600種類以上の日本酒が紹介されるとされています。

この手のイベントが重要なのは、単なる試飲会ではなく「学び」と「言語化」を提供するからです。
マスタークラスや講演で、造りの違いが説明され、味の表現が共有されます。フランス人は「理解してから好きになる」傾向が強いと言われますが、日本酒はまさにそのタイプの酒です。理解の回路が開いたとき、熱狂が生まれます。

パリで味わう“日本の酒”の深淵 - Salon du Sakéとは?

フランス・パリで毎年秋に開催される「Salon du Saké(サロン・デュ・サケ)」は、ヨーロッパ最大規模を誇る、日本酒と和の飲料文化の祭典です。 会場には日本酒だけでなく、焼酎、梅酒などの果実酒、緑茶、さらには和菓子や工芸品、観光情報までが一堂に集まり、まるで日本の“味と文化”を丸ごと体験できるショーケースのような空間になります。

2025年の開催概要

今年の開催は2025年10月4日(土)〜6日(月)の3日間。会場はセーヌ川沿い、パリ15区の「New Cap Event Center」。
1,500㎡の広大なフロアに、全国各地の酒蔵や輸入業者が勢ぞろいし、600種類以上の日本酒や関連商品が来場者の目と舌を楽しませます。

昨年は来場者数が約6,000人、出展者はフランスを中心に世界中から50〜60社が参加。まさに日本酒が欧州市場で存在感を増していることを示すイベントです。

試飲だけじゃない、学べるプログラム

Salon du Sakéの魅力は、ただ飲んで味わうだけではありません。
ソムリエや酒ソムリエ、蔵元による講演、マスタークラス、ワークショップなど、学びの場も充実しています。多くは無料で参加でき、人気セッションは事前予約が必要。有料テイスティングでは「和菓子と日本酒のマリアージュ」など、普段なかなか体験できないペアリングの世界を味わえます。

入場方法とチケット

パリでは「Sake Weeks」などの関連イベントもありますが、このSalon du Sakéはその中心的存在です。ミシュランシェフとコラボする醸造家や、フランスの酒文化の第一人者など豪華な講師陣が登壇。

スパークリング日本酒をワイングラスで味わったり、純米大吟醸とフレンチチーズをペアリングしたり – 日本酒が“ワインに並ぶ選択肢”として受け入れられつつある現場を体感できます。

パリで日本酒を買える場所が増えたこと自体が、定着の証拠

日本酒がパリで広がったかどうかは、レストランだけでは判断できません。
家庭で飲まれるかどうかが鍵です。そして家庭に届くためには、買える場所が必要です。

Maison du Saké、Workshop Issé、Irasshai、Wakazeのような店が存在感を増しているのは、日本酒が「観光客の珍味」から「暮らしの酒」へ移行しているサインでもあります。店頭で相談し、味の好みを伝え、料理に合わせて選ぶ。この行為そのものが、フランスのワイン文化に近い形で日本酒が受け入れられている証拠です。

日本酒を手に入れるなら - パリのおすすめショップ

パリではここ数年、日本酒を扱う専門店やセレクトショップがじわじわと増えています。観光客だけでなく、地元のフランス人の間でも「家で日本酒を楽しむ」文化が広がっているのです。そんな中、初心者から通まで満足できるおすすめの3店舗をご紹介します。

  • Maison du Saké(メゾン・デュ・サケ)
    住所:11 rue Tiquetonne, Paris 2区
    日本酒ファンなら一度は訪れたい、パリ随一の日本酒専門店。全国各地から厳選した銘柄がずらりと並び、山口の獺祭や山形の十四代など、希少品に出会えることもあります。スタッフは日本酒の知識が豊富で、初心者にも産地や味わいの特徴を丁寧に説明してくれるので、自分の好みに合う一本を安心して選べます。夜は併設のバーで、グラスでの飲み比べも可能。
    公式サイト: https://www.lamaisondusake.com

  • Workshop Issé(ワークショップ・イッセ)
    住所:11 rue Saint-Augustin, Paris 2区
    和の雰囲気漂うセレクトショップで、日本酒はもちろん、和食材や調味料も充実。店内にはランチタイムに営業する和食レストランも併設され、食事とともに日本酒を楽しめます。また、定期的にテイスティング講座や日本酒セミナーを開催しており、味わい方やペアリングのコツを学びたい方にもおすすめです。
    公式サイト: https://www.workshop-isse.fr

  • Irasshai(イラッシャイ)
    住所:40 rue du Louvre, Paris 1区
    近代的でおしゃれな内装が特徴のコンセプトストア型ショップ。高級酒から日常使いできる手頃なボトルまで幅広く揃っており、気軽に立ち寄れる雰囲気が魅力です。店内ではワインのように日本酒をカジュアルに試飲でき、ギフト用のラッピングサービスも充実。観光客にも地元の常連にも人気の一軒です。
    公式サイト: https://irasshai.co

  • Wakaze(ワカゼ)
    住所:31 rue de la Parcheminerie, 75005 Paris
    南フランス・カマルグの米を使った「メイド・イン・フランス日本酒」を手がけ、2022年にはパリ5区に初の居酒屋スタイル店舗をオープン。フランスらしいアプローチで日本酒を“地元の酒”として普及させる試みを行っています。
    公式サイト(店舗ページ):
    https://www.wakaze-sake.com/pages/restaurant_wakazeparis

日本酒の未来はどこへ向かうのか、原料米と海外人気の同時進行

日本酒は今、国内では原料米の確保や気候変動の影響という課題を抱えつつ、海外では評価が高まり続けています。このねじれは、業界にとってチャンスでもあり、リスクでもあります。

一方で、フランス国内でも日本米に近い品種の栽培や、現地米を使った日本酒づくりの試みが進んでいます。Wakazeのように、フランスの文脈で日本酒を再設計する動きは、世界で日本酒が生き残るための現実的なルートにも見えます。

ただし、技術の共有がそのまま価値の流出につながる可能性もあります。日本酒の魅力は、発酵技術だけでなく、蔵の哲学、米の扱い、水の選び方、微生物との向き合い方といった総体にあります。どこまでが技術で、どこからが文化なのか。その境界線をどう守るかは、これからの大きなテーマです。

日本酒とフレンチは、なぜ今こんなに自然に結びつくのか

フレンチはワインの料理だと思われがちですが、実際には「香りと余韻を設計する料理」です。
日本酒もまた、香りと余韻に強い酒です。強さで押すのではなく、静かに層を重ねる。ここが共通しています。

ユネスコ登録は、その関係を外側から後押ししました。
獺祭は、入口を作りました。
ロブションは、象徴を残しました。
アレノは、日常に近づけました。
Salon du Sakéと専門店は、理解の場を作りました。

こうして日本酒はフランスで、単なるブームではなく、食文化の一部として成熟し始めています。

日本酒の進出はほんとにすごいね。僕も日本酒は大好きだけど、日本酒が本当の意味で好きになったのはフランスに来てからだと思う。日本にいた頃は蕎麦が好きで、蕎麦屋で板わさなどをつまみながら、まだ明るい時間から飲むことが大好きだった。ただ日本酒に関しては「冷」か「熱燗」かを選ぶくらいで、銘柄まで気にしたことはなかったな。お店の人も細かい説明なんてしないし、銘柄などを聞くのは、なぜかおこがましい気がして遠慮していた気がする、今思うと変だけど。

だから10数年前に、パリのオデオン広場そばにある「La Maison du Whisky Odéon」で獺祭の試飲会が行われると聞いて「日本酒なんて珍しい」と行ってみたのが、日本酒との本当の出会いだったと思う。獺祭の社長ご夫妻が、来場者一人ひとりの細かな質問にとても丁寧に対応されていて、中には「こんなことまで社長に聞く?」というような質問もあり、「通訳さんがいるとはいえ、大変ではないですか?」とお聞きしたら、「日本の試飲会では、こんなにたくさんの質問は出ませんし、日本人では思いつかないような質問も多くて勉強になります。」と笑顔で仰られていて、獺祭のブランドオーナーというだけでなく、日本酒全体のアンバサダーという感じだった。

確かに日本では、ワインのように香りや味わいを花や果物にたとえたり、料理によって銘柄を変えて飲むことはあまりしないよね。その点、獺祭はフルーティで後味がすっきりしているので、香りや味をワインのように表現しやすく、和食はもちろん、フランスの前菜とも相性抜群だ。特にフランス人にとっては、全く新しいワインを飲んでいるような体験で、初めて接する日本酒として最適だと思う。実際、この試飲会に一緒に行ったフランス人の友人は、日本料理店で中国の白酒をSAKEと言われて飲んで以来、日本酒に苦手意識を持っていたんだけど、獺祭を一口飲んだ瞬間にその印象が覆り、日本酒が大好きになっちゃった。今ではさまざまな日本酒を試しているものの、一番のお気に入りは今も獺祭なんだそうだ。

僕もたくさん日本酒は飲んできたけど、獺祭を初めて飲んだ時には、「コクのある白ワインを飲んでいるみたいだ」と驚いた。日本酒としては甘味が強いほうだと思うけど、華やかでキリッとした白ワインに旨味を足したみたいな不思議な美味しさだった。確かに前菜からフロマージュまで、一緒に食べるものの美味しさを更に開いてくれるようで、まさにマリアージュだ、と思ったな。

試飲会には料理関係者も多く、料理と日本酒のマリアージュ談義で盛り上がっていたから、「これならフランスでも獺祭が飲めるお店が増えるかも」と期待していたら、名だたるフランス料理のシェフたちが次々と獺祭とのコラボやレストランをオープンすることになり、期待以上にフランスに浸透していた。特に「Dassaï Joël Robuchon」には驚いた。内装も料理も全てが獺祭を体現していて、こんなに格好のいいアルコール、他にある?とまで思わせるような、あっと驚く空間だった。 ジョエル・ロブション氏が亡くなったときは、フランス中で連日特集が組まれるほどの大ニュースだったんだ。オープンしたばかりのDassaïはどうなるのだろうとハラハラしていたけど、やっぱり閉店してしまった。彼は獺祭に特別な想いを持っていたから、他の人では彼の哲学を引き継げないと判断したのではないかな。ほんとうに残念でならない。 フランスを代表するシェフであるとともに、料理番組も持ち、料理の楽しさをユーモアを込めて丁寧に教えていたから、フランス中の主婦たちが、彼の生徒たちだった。彼がフランス料理に果たした役割は計り知れない。

しかし、それで獺祭とミシュランシェフとのコラボが終わったわけではなかった。2025年には、合計16のミシュラン星を持ち、東京やドバイなどでも活躍するヤニック・アレノ氏が「L’Izakaya Dassai by Yannick Alléno」をオープン。こちらはよりカジュアルなスタイルで、居酒屋の定番メニューを世界的シェフがアレンジするとこうなるのか!という驚きも楽しめる。 コースは69ユーロ(約11,800円)で、ボリュームは軽めだけどスターシェフの居酒屋としては手頃だと思う。ただ、残念なのはグラスで飲める獺祭が2種類しかなく、価格も高めなこと。8cL(80mL)のDASSAI DEX 45が16ユーロ(約2,700円)、DASSAI 39が20ユーロ(約3,400円)。獺祭とフランス版居酒屋料理のマリアージュが目的だから、食事やデザートそれぞれに合わせて、合わせるお酒の種類を変えたいよね。そのためにはグラスで頼めるのが2種類というのは少ないと思うし、いくらパリでもグラスで3千円もしたら、気軽に何杯も飲めるような金額ではない。ショップではDassai 45は、720mlでだいたい38ユーロ(約6,500円)ぐらいで、パリで買える日本酒としては、それほど高いわけではないんだ。

レストラン価格になってしまうのは仕方ないとしても、獺祭を気軽に試してもらう店舗として(それこそが居酒屋の役割だと思うんだけど)、もう少し原価に近い値段で出してもらいたいな。高級なお酒というイメージが強くなりすぎると、若い世代が日本酒から距離を置いてしまいそうで心配だ。 とはいえ、獺祭の名前が著名シェフのレストランに冠されるのは快挙だし、日本の酒造技術が世界に認められた証だ。

日本では今、米の生産減少が深刻で、日本酒業界にも影響を与えているけど、せっかく海外で日本酒の波が来てるのに、このまま勢いが落ちてしまうのは残念だ。せっかく海外で勢いがついた日本酒の波が、勢いを落としてしまうのは悲しい。でもフランスやイタリアでも日本米に近い品種は栽培可能だから、Wakazeのように現地米を使い、日本の精米技術を導入すれば、日本の銘酒に近い品質の酒を造ることも夢ではないかもしれない。技術流出には注意する必要はあるけれども。 米の問題と海外での日本酒人気の高まりが同時期に重なったのは痛手だけど、日本の農業技術なら酷暑にも耐える品種改良で必ず乗り越えられるはず。そして、日本でコメを生産することが、国内需要を満たせなくなってきたなら、海外で日本のコメを生産することも視野に入れたほうがいいかもしれない。その時は日本の人が海外で直接生産に関わることができるように、技術流出に注意を払い、日本の会社が海外進出して、コメの生産管理をしっかりとしてもらいたいと思う。

Parisrobot Talks

パリロボのひとりごと

画像出典:本記事内の画像は、本人が撮影した写真を生成AIを用いて編集したオリジナル画像であり、第三者の著作権を侵害するものではありません。

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