TwoWay : AIでトレーダーの価格提示を最適化

TwoWayは、トレーダーとブローカー間のチャットデータをAIで解析し、リアルタイムで正確な価格情報を提供する革新的なプラットフォームです。

リアルタイムで正確な価格情報を提供する革新的なプラットフォーム

TwoWayは、金融市場におけるトレーダーとブローカー間のチャットデータをAIで分析し、より精度の高い価格情報を提供することを目指したスタートアップです。2025年版『投資すべきスタートアップ100』にも選出された注目企業であり、その独自のテクノロジーによって、トレーダーの意思決定の質を大幅に向上させる可能性を秘めています。

会話の8割が“無駄”になる現状

投資銀行の現場では、トレーダーがブローカーから絶え間なく届くチャットメッセージを受け取っています。これらのメッセージには、市場価格に関するリアルタイムの情報が含まれているものの、その大半が処理されずに放置されています。

TwoWayの共同創業者であるシリーヌ・ベンザイエド＝ブルジュリ氏（41歳）とダヴィッド・ボクレ氏（33歳）は、世界中の20以上の主要金融機関に所属するトレーダーやトレーディング部門の責任者200名以上にインタビューを実施。その結果、約80％のチャットメッセージが時間や注意力の不足により見落とされていることがわかりました。

このような情報の未活用が、年間数百万ユーロ（数億円）規模の損失を金融機関にもたらしている現実に着目した二人は、その課題に正面から取り組むため、AIを活用した新たなソリューションの開発に乗り出しました。

AIがチャットを「価値ある情報」に変える

TwoWayの開発したプラットフォームは、AIによってトレーダーとブローカー間のチャットを自動的に解析し、有益な価格情報を抽出するものです。さらに、それらの情報をBloomberg、Reuters、360Tといった従来型の価格データプラットフォームと統合し、リアルタイムでトレーダーに提供します。

この仕組みにより、トレーダーはこれまで見逃していた市場の動向や価格差異を即座に把握でき、判断の精度が飛躍的に向上します。ベンザイエド氏は「当社のデータは従来の価格プラットフォームよりもはるかに正確です。トレーダーの生産性を高め、価格差による損失を防ぐ効果があります」と語ります。

現時点では、競合と呼べるのは各金融機関内のIT部門やイノベーション部門による独自開発の試みに限られており、同様の製品を外部から導入するという市場は未開拓に近い状況です。

実績と商業化の進展

TwoWayは2024年夏に正式にローンチされ、すでにいくつかの大手金融機関と実証実験を展開中です。アメリカのState Street銀行、イタリアのIntesa Sanpaolo銀行、そしてフランスの大手金融機関とパイロットプロジェクトを実施しており、サービスの有効性が各所で評価されています。

ビジネスモデルは年間ライセンス方式で、トレーダー1人あたり年額1万〜2万ユーロ（約163万〜327万円）を想定しています。料金は、銀行の規模や導入機能に応じて変動します。
また、TwoWayはフランスのエソンヌ県に登記されており、エドゥック・ビジネススクールを通じてStation Fにてインキュベーションを受けています。

今後の展望：多様な資産クラスへの対応とグローバル展開

現在、TwoWayは資金調達ラウンドにおいて150万ユーロ（約2億4,450万円）の資本を求めています。この資金により、プラットフォームの機能を為替、金利、信用商品、コモディティなど複数の資産クラスに対応させ、さらなる精度と汎用性の向上を目指します。
また、商業チームの強化を通じて、ロンドン、ニューヨーク、ドバイ、シンガポールといった金融都市での事業展開を加速させる計画です。

すでに金融・テクノロジー業界で一定の評価を獲得しており、2025年3月には、フィンテック部門で審査員の特別賞を受賞。パトリック・フォーコニエ賞のピッチコンテストにも出場しました。