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いま飛鳥Ⅲが選ばれる理由
飛鳥Ⅲは、華美な装飾ではなく基礎設計の完成度で勝負する船です。船は小さな都市と同じで、発電、空調、給排水、人の流れ、防災が密接に結びついています。どこか一つの不具合が、快適さ全体に波及します。飛鳥Ⅲはこの全体最適を徹底し、乗る人が意識しないところで負担を取り除きます。
たとえば音と振動の低減です。客室で本を開いた時に紙の手触りまで意識が向くかどうかは、背景の静かさで決まります。空調の風が顔に当たりすぎないか、廊下で人とすれ違う時に肩が触れないか、レストランへ向かう途中で人の波が詰まらないか。そうした小さな要素が積み重なると、旅の印象は大きく変わります。飛鳥Ⅲの価値は、この小さな改善を無数に積み上げた結果にあります。
基本情報と設計の考え方
飛鳥Ⅲは、日本の外航ラグジュアリー市場で長年「基準」とされてきた先代(飛鳥→飛鳥Ⅱ)の系譜を継ぐ第三世代フラッグシップであり、日本籍の新造船として2025年に就航しました。
全長はおよそ230メートル、総トン数は5万トン台、定員は700名台です。中大型の落ち着いたサイズ感で、寄港地の選択肢が広く、船内の移動負担も過度になりません。
設計の柱は三つあります。静粛で揺れにくいこと(振動・騒音のミニマム化)。省エネで環境負荷を抑えること(燃費・保守性)。滞在が気持ちよく続くこと(空調・水回り・動線最適化)。
具体的には、客室直上直下に大きな機械を置かない平面計画、空調のゾーン制御、視界の抜けをつくる天井高と照明設計、段差の少ない動線などを組み合わせています。結果として、単に「豪華」ではなく、“音・温度・匂い・光”まで制御されたホテル工学の集大成としての船となり、移動の時間が休息の時間に置き換わります。
静けさのつくり方
船内の騒音は、機械の振動、配管の共鳴、人の足音、金属の反響が主な要因です。飛鳥Ⅲでは、その原因ごとに手当てが異なります。機械の防振は基礎と支持の間に複数の層を設け、周波数帯を分けて吸収します。配管と配線は天井裏と床下でまとめ、音が居室に伝わりにくい経路に逃がします。甲板材と壁材は、硬さの異なる素材を重ねて反響を和らげます。
照明は拡散光を基本に、まぶしさを抑えたグレア管理を行います。寝室では色温度を少し落として副交感神経が優位になる環境を整え、ラウンジでは会話の声が重なっても耳が疲れにくいように残響時間を調整します。こうした物理的な対策は、乗る人の体感としては、ふと深呼吸したくなる静けさにつながります。
環境への配慮と省エネの工夫
環境配慮は一つの大技ではなく、数多くの小技の集合です。排ガス後処理の強化、廃熱の回収、可変速のポンプやファンの採用、館内の広範なLED化など、電力の無駄を減らします。空調はゾーンごとに温度と風量を細かく変え、無人のエリアでは控えめに運転します。
寄港地では陸上電源につなぐことができ、停泊中の騒音と排出を抑えます。整備が進む港ほど静かな停泊が可能になります。こうした取り組みは環境のためだけではありません。機械が静かに動くことは、滞在の質を上げ、夜の眠りの深さにも直結します。
混雑しにくい動線と運用
快適さを損なう原因の一つが人の集中です。飛鳥Ⅲは、動線計画と運用の両面で分散を図ります。エレベーターと階段の配置は、上層と下層の目的地に対して距離が偏りにくいように考えられています。通路の幅は車椅子やベビーカーでもすれ違いやすく、曲がり角には見通しの工夫があります。
運用面では、レストランやラウンジのピークを予測し、予約の時間帯に幅を持たせます。ブッフェでは料理の補充タイミングを早めに設定し、スタッフの動きと空調の風の向きを合わせて滞留を減らします。結果として、行列に並ぶ時間が短くなり、一日を落ち着いて過ごせます。
和の雰囲気を生かした内装
内装は白を基調に木の質感を重ね、やわらかな光でまとめています。装飾を足すよりも、余白を整える発想です。ラウンジの椅子は座面の硬さと角度が絶妙で、長く座っても腰が疲れにくく感じます。テーブルの高さは飲み物と本が置きやすく、照明はページの端まで均一に明るさが届きます。
ホールではシャンデリアとピアノが象徴的です。ただし主役は音量ではなく音色です。響き過ぎず、吸い込み過ぎないちょうどよさがあり、演奏の余韻が自然に消えていきます。視覚と聴覚の両方で疲れにくい空間は、長いクルーズほど価値が際立ちます。


食事は温度とタイミングが決め手
和食、洋食、中華に寿司カウンターを加え、連泊でも飽きない構成です。味を支えるのは調理から提供までの工程設計です。低温調理で火の通りを均一にし、急速冷却で安全性と旨味を保持します。提供前に再加熱して温度をそろえ、皿の保温と運搬の導線で温度ロスを抑えます。
ワインと日本酒の管理も丁寧です。温湿度と振動の管理を行い、海上という可動環境でも味の変化を最小限に抑えます。料理はその日の気分に合わせて重さを選べるため、観光で歩いた日も、船内でゆっくり過ごした日も、食事の満足感が安定します。


海と一緒に整えるウェルネス
露天エリアのある大浴場は、湯気と風と景色が一体になる場所です。夕暮れ時、港の灯りがともるころに湯面が静かに揺れる光景は、洋上ならではの時間を作ります。サウナや水風呂の温度設定は強すぎず、長く入っても疲れにくい印象です。
ジムやヨガのスタジオは床の剛性がしっかりしており、関節にやさしい支持感があります。瞑想のスペースは音の遮断が丁寧で、外の気配は感じつつも落ち着いた静けさが続きます。何もしない時間が自然に生まれるのは、環境が背中を押してくれるからです。
季節ごとの楽しみ方
春は桜を追う北上の旅が定番です。港から少し移動するだけで名所に出合えることが多く、船に戻ってからの夕食までの流れが整います。夏は北海道方面や涼しい海域が心地よく、甲板での夕暮れの時間が楽しみになります。
秋は紅葉と名湯の相性が良く、寄港地で温泉に浸かってから船の大浴場にもう一度入るという贅沢も可能です。冬は沖縄や近隣アジアの暖かい寄港地が選択肢に入り、明るい日差しの下での街歩きや市場めぐりが似合います。いずれの季節も、寄港地の滞在時間に余白を残しておくと、船内の静かな時間とよく馴染みます。
客室とデッキの選び方
揺れを抑えたい方は中層で中央寄りの客室がおすすめです。船の上下と前後の動きが比較的少なく、夜の眠りが安定します。静けさを重視する場合は、エレベーターやスタッフ動線から少し離れた区画を選ぶと良いでしょう。
移動のしやすさを優先するなら、よく使う施設に合わせて上下の動線を意識します。スパやジムを日課にするなら近いデッキを、夜は劇場やラウンジを中心に過ごすならそれに合わせた位置を選びます。バルコニーの向きは、寄港地の出入りや日の入りの方向で楽しみ方が変わるので、季節と航路を見ながら選ぶと満足度が上がります。


予約前のチェックと小さなコツ
前後泊の計画は早めに立てると安心です。朝早くの集合や夜の解散に合わせて、前日入りや帰着後の一泊を入れるだけで体力的な余裕が生まれます。ドレスコードは難しく考える必要はありませんが、夜の写真写りを意識して一着きれいめの装いを用意すると気分が上がります。
人気のレストランやスパは事前予約の可否を確認し、希望時間を固めておきます。通信環境はプランの内容と端末の相性を確認すると安心です。夜景や星空の撮影は、感度を上げ過ぎず、手すりや壁に肘を固定して手ぶれを抑えるだけでも仕上がりが変わります。寄港地では歩くことが多いため、履き慣れたクッション性のある靴が一足あると、帰船後の疲れが残りにくくなります。
派手さより心地よさ、旅の基準がここにある
飛鳥Ⅲは、目立たない工夫の積み重ねで旅をやさしく整える船です。音、光、温度、動線、運用をていねいに調整し、余計な負担を取り除きます。
結果として、海と時間の解像度が上がり、何気ない瞬間の満足度が高まります。静かで上質な空気のなかで過ごす数日間は、帰ってからもしばらく心に残ります。技術が支えるやさしい船旅という答えが、ここにあります。
基本のスペック
- 全長:約230m
- 総トン数(GT):約52,265
- 乗客定員:最大約740名
- 客室:全380室(全室バルコニー)
- コンセプト:「お一人お一人の最高の時間を叶える」
技術的な要点
- 静粛設計:船殻・機関・居住ブロックの防振/遮音を段階配置。寝室直上直下の機器配置を避け、周波数帯ごとのノイズを分解して抑え込むのが昨今の上級船の定石。飛鳥Ⅲもその“静けさチューニング”を継承します。
- 省エネ統合:最新世代相当の排ガス後処理(例:SCR/スクラバー)、廃熱回収、可変速ポンプ/ファン、LED化、空調の熱回収(回生)など、 “1%の積み上げ”を全系で実装。寄港地の電源に接続する陸電(shore power)対応は、港湾側の設備整備が進むほど効力を発揮します。
- デジタル基盤:運航・保全・ゲスト動線のリアルタイム最適化を想定。需要変動に応じたギャレー(厨房)・ランドリーの負荷平準化、空調のゾーン制御、混雑の事前分散など、見えない快適を支えるオペレーションITが肝です。
- 安全系:冗長化された非常電源・配電経路、防火区画の細分化、避難経路の可視化(動線サイン+CMS連動)。「起こさないための状態監視」と、「起きても止めない」ための冗長設計が二本柱。
公式情報
- 公式サイト
飛鳥クルーズ公式サイト(飛鳥Ⅱ・飛鳥Ⅲ):トップページから最新情報・出発日・客室・船内施設が確認できます。
飛鳥Ⅲの紹介ページ:飛鳥Ⅲの船内・客室・レストラン等の詳細。 - 連絡先(予約・問い合わせ)
予約・問い合わせ窓口(ナビダイヤル):0570-666-154
営業日:月〜金(祝日除く)/営業時間:10:30〜17:00。
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