Morning-Iena
コロナ禍でテレワークが普及し、会社がパリなどの賃料が高い地域から撤退したり、規模を縮小することが増えた代わりに、コワーキングスペースの需要が高まってきました。普段はテレワークで、月に数度、チームのメンバーが出席するミーティングを開く程度なら(100名程度の会社なら、社員全員が出席するミーティングやイベントも可能)、コワーキングスペースをレンタルしたほうが安上がりですし、メンテナンスなどの必要もありません。その中でも注目され、ロケーション数を増やしているのはMorning(モーニング)というコワーキングスペースです。その成長の秘訣は・・・

パリにおけるシェアオフィス市場の現状と将来性

パリのビジネス街であるラデファンス地区を除くと、パリ市内中心部のオフィス市場におけるコワーキングスペースの占有率は5%となっています。これは、ロンドン、東京、上海などの大都市で見られる10%という数値と比較すると、かなり低い水準です。
しかし、この低い占有率は、パリのコワーキングスペース市場がまだ成長段階にあることを示しており、専門家の中には、パリのオフィス全体の20〜30%が将来的にコワーキングスペースになると予測する人もおり、大きな潜在力を持っていることを示唆しています。

Knight Frank社の調査によると、2023年のパリにおけるオフィス賃貸契約数は、前年比で50%以上減少しました。 これは、インフレや金利上昇などの経済状況の悪化が影響していると考えられています。 しかし、コワーキングスペース事業者大手のWojoの経営陣は、パリのコワーキングスペース市場は拡大を続けており、この減少は一時的なものだと考えています。

現在のパリのコワーキングスペース市場は、まだ初期段階にあり、大きな成長の可能性を秘めています。
パリの市場は拡大しており、力強い勢いを見せているためパリのシェアオフィス市場は、新規参入が増えており、今後競争激化と需要増加が見込まれる状況にありますが、一方で、インフレや金利上昇などの逆風も存在します。

コワーキングスペース市場の成熟を示す情報

すでにパリのコワーキングスペース市場が成熟期に入っていることを示唆する情報がいくつかあります。

1. 市場構造の確立:

  • Morning社の創業者であるクレマン・アルテレスコ氏は、「今日の市場は、より成熟した段階に入っている」と述べています。 これは、市場に大手企業が複数存在し、競争環境が整備されてきたことを意味します。

2. コワーキングスペースの普及:

  • アルテレスコ氏は、コワーキングスペースをオフィスとして利用することが「一般的」になりつつあると指摘しています。 これは、コワーキングスペースが、一部の層だけでなく、幅広い企業に受け入れられるようになったことを示しています。

3. 競合の激化:

  • Morning以外にも、DeskeoWojoSpacesHiptownなど、多くのコワーキングスペース事業者がパリで事業を展開しています。 これらの企業は、多様なワークスペース、柔軟な契約条件、充実したサービスとアメニティを提供することで、顧客獲得競争を繰り広げています。 競合の激化は、市場が成熟期にある典型的な現象です。

4. 差別化戦略:

  • コワーキングスペース事業者は、顧客のニーズに合わせて、より個別化したサービスやアメニティを提供することで、差別化を図っています。 例えば、WojoはAccorホテルグループと提携し、ホテル内にコワーキングスペースを併設するなど、独自のサービス展開を行っています。 また、Deskopolitanは、保育施設、スポーツジム、屋上テラス、美容室など、プレミアムなサービスを提供することで、高級志向の顧客層にアピールしています。 顧客ニーズの多様化と、それに対応する事業者の差別化戦略は、市場の成熟を示す重要な指標です。

Morning社がコワーキングスペース市場で成功している理由

Morningは、パリのコワーキングスペース市場を牽引する存在であり、その成功は様々な要因に起因しています。

1. 柔軟性と多様な顧客層:

  • Morningは、企業規模やニーズに合わせて、プライベートオフィス、共有オフィス、コワーキングスペースなど、多様なスペースを提供しています。また、契約期間やスペースの規模も柔軟に対応しており、スタートアップからシャネルのような大企業まで、幅広い顧客を獲得することに成功しています。この柔軟性は、変化の激しいビジネス環境において、多様なニーズに対応できる強みとなっています。

2. 充実したサービスとアメニティ:

  • Morningは、ワークスペースの提供に加えて、ヨガ、ボクシング、コンシェルジュサービス、瞑想ルームなど、他のコワーキングスペース事業者にはない充実したサービスとアメニティを提供しています。これらのサービスは、従業員の満足度を高め、リフレッシュ効果や生産性向上にも貢献しています。特に、ウェルネスを重視する現代の働き方において、これらのサービスは大きな魅力となっています。

3. 戦略的な立地:

  • Morningは、パリ市内中心部や交通の便が良い場所に拠点を展開しています。顧客はアクセスしやすい環境で仕事をすることができます。例えば、Morning Tréviseは、パリ9区のGrands Boulevardsとrue Lafayetteの間に位置し、1826年に建てられた歴史的建造物を利用した魅力的な空間を提供しています。このような立地戦略は、顧客の利便性を高め、ブランドイメージ向上にも貢献しています。

3. 競争環境:

  • 2010年代にパリのシェアオフィス市場を席巻していたアメリカの巨大企業WeWorkは、経営難により2023年末に破産を申請し、少なくとも3つのパリ拠点の閉鎖が決まりました。このWeWorkの退場は、Morningを含む他の事業者にとって、市場シェアを拡大する大きなチャンスとなっています。

4. 市場の成長:

  • パリにおけるコワーキングスペース市場は、まだ全体の3%程度と、ロンドン、東京、上海などの大都市と比べて低い水準です。しかし、専門家の中には、パリのオフィス全体の20〜30%が将来的にコワーキングスペースになると予測する人もおり、市場は今後も成長を続けると予想されます。Morning社は、この成長市場において、いち早く事業を展開し、規模と実績を積み重ねてきたことで、優位なポジションを築いています。

Morning以外の競合他社

パリのスペースシェアリング市場におけるMorning以外の主要競合他社は以下の通りです。

  • Deskeo:
    不動産サービス会社Knight Frankの調査によると、Deskeoは、パリ地域で2015年以降に賃貸契約を結んだオフィススペースの面積において、Morningに次いで2番目に急成長している事業者です。 Deskeoは、多様なサービスを提供することに重点を置いており、その一例として、11区に「プレミアム」コワーキングスペースのDeskopolitanを運営しており、託児所、スポーツジム、ホテルの客室、バーバー、屋上テラス、ソフロロジーや絵画のワークショップなどを提供しています。
  • Wojo
    建設会社Bouygues Immobilierによって2015年に設立され、後にホテルグループAccorが参画したWojoも、パリのスペースシェアリング市場で主要なプレーヤーです。 Wojoは、パリとその近郊に12の拠点を持ち、個人事業主から大企業まで、幅広い顧客層にオフィススペースや共有スペースを提供しています。 Wojoは、柔軟性、サービス、アクセシビリティを重視しており、顧客のニーズに合わせてスペースの規模を調整したり、ケータリングやイベントなどのサービスを提供したり、Accorホテル内にコワーキングスペースを併設したりすることで、顧客満足度を高めています。
  • Spaces:
    Spacesも、Knight Frank社の調査で言及されている主要なコワーキングスペース事業者です。
  • Hiptown:
    Hiptownは、2023年にパリ18区に5,000平方メートル以上のスペースを確保し、顧客獲得競争に参入しました。

シェアオフィス事業者による顧客維持のためのサービス

シェアオフィス事業者は、長期的な顧客関係を構築することで、顧客維持率の向上に貢献することを目指しており、多様なサービスを提供することに力を入れています。

  • ウェルビーイング:
    顧客の健康と幸福を重視し、ヨガ、ボクシング、瞑想ルームなどのサービスを提供しています。 これらのサービスは、日々の仕事のストレスを軽減し、心身のリフレッシュを促すことで、顧客の満足度を高めることを目指しています。
  • 利便性:
    コンシェルジュサービス、託児所、バーバー、屋上テラスなど、顧客の日常生活をサポートするサービスを提供しています。 これらのサービスは、顧客の時間と労力を節約し、より快適なワークライフバランスを実現することを支援します。
  • コミュニティ:
    顧客同士の交流を促進するためのイベントやワークショップなどを開催しています。 これらのイベントは、顧客同士のネットワーク構築や情報交換を促進し、コミュニティ意識を高めることで、顧客の帰属意識を高めることを目指しています。
  • 柔軟性:
    顧客のニーズに合わせて、スペースの拡張・縮小を柔軟に対応できる体制を整えています。 特に、テレワークの普及により、オフィススペースの縮小やフレックスオフィスの導入を進める企業が増加する中、この柔軟性は顧客にとって大きなメリットとなっています。
  • サービス:
    ケータリング、ドリンクサービス、高速インターネットなど、快適なワークスペースを提供するための基本的なサービスに加え、顧客のニーズに合わせて、様々なサービスを提供しています。
パリロボくん
パリロボくん

パリは、特にコワーキングスペースが必要とされている都市だと思うんだ。ファッションウィークをはじめ多くの見本市が開かれる世界有数の都市だから、ショウの合間などにカフェでメールを書いたり仕事をしたい人が多いんだけど、フランスのカフェは仕事をするには向いていないんだよね。日本の喫茶店などに比べても隣の席が近く、小さな丸テーブルがカフェテーブルとして使われているところが殆どで、飲み物が来たらもうノートブックPCどころかタブレットさえ置くことが難しいくらいなんだ。そのうえ普通のカフェは一般的にざわざわと騒がしく、電話がかかってきても外に出ないと聞こえにくいし(荷物やコートを置いたままで外に出るのは絶対にやめて!速攻で盗られちゃうから。)、PCの画面などが周囲の人に丸見えなところも気になるところ。見本市の会場にはプレスルームなど、仕事ができる場所が設置されていることが多いけど、席数が限られているから、自分のペースでゆっくりと仕事をすることは難しかったりする。日本から仕事で来ている人たちからも、宿泊しているホテルに帰る以外に、どこかに落ち着いて仕事ができる場所はないですか?と聞かれることが多いので、ぼくが実際に利用しているコワーキングカフェなどをおすすめしているんだ。ちょっと広くて静かなカフェという感じのコワーキングカフェにふらっと立ち寄る時もあれば、会社のレセプションや商品の発表会など、100人以上が入れるイベントスペースのような場所でミーティングスペースを押さえる時もあり(さすがにこちらは予約が必須だけど)どのような需要にも対応できる場所が増えてきているのがありがたい。ぼく自身はオペラ周辺で仕事がある時は、地下鉄のOpera駅とAuber駅の間にあるLe Shackに行くことが多いかな。普通のカフェのようにふらっと入れてテーブルが大きめで(いろんなサイズのテーブルがある)、ひとりで来て仕事をしている人が多いから、同じテーブルをシェアしても、付近の人にPCの画面が見える心配はなく、静かにゆったりと仕事に集中できるんだ。ちょっと図書館のようなデコレーションで、天井が吹き抜けになっているのもオシャレで開放的な雰囲気ながらも落ち着くし、飲み物や(美味しいカクテルがたくさんあって、仕事中には誘惑に打ち勝たなければいけないんだけれども!)食事も美味しくて、単純に昼食目的で行くこともあるくらい。でももっと本格的なコワーキングスペースであるMorningのように、仕事の合間にヨガやスポーツクラブなどで汗を流すのも、息抜きと健康のために良さそうだね。ストレスが多い仕事の時には休み時間に瞑想に行って、リフレッシュして新たな気持で仕切り直すのもいいかも。また、出張が多くて美容室に行く余裕のない人や、ビデオ撮影があったり、レセプションで発表をしなければいけない場合などには、仕事をしながらヘアカットやセットをしてもらえるDeskeoグループのDeskopolitanに行っておくと安心だね。(こちらのサービスは要予約です)