
映画でみたあの衣装が古着屋さんに!
2025年6月末、パリ9区のモンマルトル近くに、これまでにないユニークな古着店が誕生しました。その名も「La Loge(ラ・ロージュ)」。
このお店の最大の特徴は、並んでいるすべての服が、映画やテレビドラマの撮影現場で実際に使用された“本物の衣装”であること。俳優たちが着用したドレスやコート、シャツや小物まで、すべてが作品の中で生きていた「ストーリーをまとう服」なのです。
La Loge Storeは、長年映画業界で働いてきたメロディさんとサラさんという2人の女性によってオープンされました。撮影が終わったあと、使われなくなった衣装が倉庫に山積みにされているのを見て、「この素晴らしい衣装たちを、もう一度誰かの手に届けたい」という思いからこのプロジェクトが始まりました。
場所は、映画やアートの街として知られるモンマルトルのほど近く。店内には、映画館から譲り受けたヴィンテージのシートが並び、照明付きのドレッシングルームが用意され、赤いカーペットが敷かれています。そこは単なる“お買い物の場”ではなく、訪れる人がまるで映画の登場人物になったかのように感じられる、没入感たっぷりの空間です。
取り扱う衣装はすべて、フランス国内の映画・ドラマ制作現場から丁寧に集められた一点ものばかり。それぞれの服には、作品名や登場人物の情報が添えられており、「どの映画の、誰が、どんな場面で着ていたのか」がわかるようになっています。つまり、ただの古着ではなく、“物語をまとう服”としての価値が加わっているのです。
オープンからわずか1か月にもかかわらず、「La Loge」は映画ファンのみならず、環境への配慮からサステナブルな暮らしを大切にする人々、さらには個性派ファッションを楽しむセカンドハンド愛好家たちの間で大きな話題となっています。店内は連日、多くの来店者でにぎわい、衣装との一期一会の出会いを楽しむ姿が見られます。
古着と映画、そしてサステナビリティ。この3つを見事に融合させた「La Loge」は、ただのショップではなく、パリの街に新しい文化と物語を届ける“小さな映画館”のような存在なのかもしれません。
撮影現場からそのまま販売へ – 本物の映画衣装が店頭に
店内に一歩足を踏み入れると、まるで映画やドラマの舞台裏に迷い込んだような感覚になります。赤いカーテンが壁を彩り、パリの老舗映画館「シネマ・エリゼ・リンカーン」から譲り受けたビロードのシートが並び、試着室にはLEDライト付きの鏡が設置されています。
壁を彩るのは、深紅のベルベットカーテン。床には、年季の入った映画館のシートが並んでいます。これらの座席は、シャンゼリゼ通り近くにある老舗映画館「シネマ・エリゼ・リンカーン」から譲り受けたもの。
映画好きにはたまらない、パリの映画文化が息づく本物のアイテムです。
さらに奥へ進むと、試着室には女優気分を味わえるLEDライト付きの鏡が。自分がどこかの作品の主人公になったような気分で、衣装を試すことができます。空間全体が、まるで役者の楽屋をイメージしたセットのよう。細部にまでこだわった演出が、訪れる人の想像力をかき立ててくれます。
店内に並ぶ洋服の一つひとつには、専用のタグが取り付けられており、「この服は◯◯という作品の◯◯役が着用しました」といった詳細な情報が明記されています。服を手に取ると、その作品の世界観やキャラクターの人生がふっとよみがえってくるような気がするのです。
たとえば、人気のフランステレビドラマ『Ça c’est Paris(サ・セ・パリ)』で、女優アンヌ・マリヴィンが演じたキャラクター「プルーン」が実際に着ていたジーンズも販売されています。価格は60ユーロ。高級ブランドでもなく、派手な装飾があるわけでもありませんが、物語をまとった一点物として、特別な存在感を放っています。
このように、「La Loge」では服そのものだけでなく、それが生きていた“物語の記憶”ごと手に入れることができます。服を選ぶという行為が、まるで映画のワンシーンを演出するかのような体験になる──そんな魔法のような空間なのです。
立ち上げたのは映画業界の2人の女性
このショップのコンセプトは、映画やドラマの撮影で実際に使われた衣装を再利用し、誰でも購入できるようにすること。発案者は、映画や広告業界で働く二人の女性、スタイリスト兼コスチュームデザイナーのメロディ・コランジュさん(通称「メロココ」)と、映画プロデューサーのサラ・ジェランさんです。
彼女たちは、日々の仕事を通じてある問題に直面してきました。それは、映画やドラマの撮影が終わるたびに、使い終わった大量の衣装が行き場を失い、倉庫の奥で眠ってしまうという現実です。中には、一度しか使用されていない新品同様の衣装も多数ありましたが、再利用されることはほとんどなく、最終的には廃棄されてしまうケースも珍しくありませんでした。
「これって、もったいないし、環境にも優しくないよね」- そんな違和感から、彼女たちのアイデアは生まれました。「それならば、まだ新しい状態の衣装を再び輝かせよう」と考えた2人は、各プロダクションから衣装を回収し、洗浄・整理のうえで販売するこのプロジェクトをスタートさせました。
スクリーンを飾った衣装に、もう一度スポットライトを
転機となったのは、メロディさんがロサンゼルスを訪れたときのこと。現地で「It’s a Wrap(イッツ・ア・ラップ)」という、映画やドラマで使用された衣装を専門に扱う古着店を見つけたのです。洗練されたディスプレイ、物語のある衣装、そして多くの人がそれを楽しそうに手に取る光景に、彼女は強い衝撃を受けました。
「これこそ、私がフランスでやりたかったことだ!」
帰国後すぐにサラさんにその体験を話したメロディさん。2人は意気投合し、撮影衣装を回収・洗浄・整備して再販するというプロジェクトを本格的にスタートさせます。
2023年11月からは、実際に衣装の収集を開始。すると、予想をはるかに超える数の映画やテレビ業界の関係者たちが、この試みに賛同し、衣装の提供を申し出てくれました。「再利用されずに処分するしかなかったから、こんな形で活かしてもらえるなんて嬉しい」と語るプロデューサーや衣装担当者も多かったといいます。
こうして集まった数々の衣装は、作品ごとのタグやストーリーとともに丁寧に整理され、ついに2025年6月、パリ9区モンマルトル近くに「La Loge Store」としてお披露目されました。
ただの古着ではない、「ストーリーをまとう服」を誰でも手に取れるように – そんな思いが詰まったこの店は、環境への配慮と映画愛にあふれた、新しいサステナブルファッションのかたちです。
映画やドラマ、CMからやってきた衣装たち
スクリーンの余韻を“着て楽しむ”という新体験
「La Loge Store(ラ・ロージュ・ストア)」の店内には、映画やドラマ、CMなど約40作品から集められた衣装がずらりと並んでいます。どれも実際に俳優が身につけ、映像の中で生きた“本物の衣装”。映画の余韻を、自分のスタイルとして“着て楽しむ”ことができる、他では味わえない特別な体験がここにあります。
たとえば、Netflixでも配信され話題となったアクション映画『Sentinelle(センティネル)』や、サスペンスドラマ『Anthracite(アントラシート)』、スリリングな展開が人気の『Rapaces(ラパス)』などの作品の衣装が揃っています。さらに、ペリエの爽やかなテレビCMやKFCのユニークな広告に登場した衣装、さらにはYouTube動画の撮影で使われた小物など、幅広いジャンルの映像作品からのセレクションです。
衣装はすべて丁寧にクリーニング・整理され、小さなタグが添えられています。そこには、「この服はどの作品で、どのキャラクターが、どんな場面で着用したのか」といった情報が記されており、一着一着に物語が息づいています。ファッションというより、まるで“動く記憶”を身にまとうような感覚です。
価格帯も実に多彩。H&MのTシャツは10ユーロ以下から手に入り、普段使いにぴったり。一方で、映画用に用意されたヴェルサーチのシャツは170ユーロといった具合に、ハイブランドの掘り出し物も並びます。中には、撮影で一度も使用されなかった新品の衣装もあるそうです。
人気アイテムはオープン直後から争奪戦に。フランスのバレエシューズブランド「Repetto(レペット)」の靴は即完売。動画クリエイターを彷彿とさせる個性的なアクセサリーや、デザイン性の高いシャツ、さらには元値が1000ユーロ以上する「Paul & Joe(ポール&ジョー)」のスーツが、約400ユーロで手に入ることもあり、ファッション通や映画ファンが“お宝探し”に夢中です。
価格は6ユーロからとリーズナブルで、予算に応じて誰でも気軽にショッピングを楽しめます。高価な一点物を狙うもよし、ワンコインで映画の世界を味わうもよし。まさに、スクリーンの魔法とサステナブルファッションが融合した「ファッションのテーマパーク」のような場所です。
衣装の再利用で、映画制作ももっとエコに
「La Loge」はファッションだけでなく、地球にもやさしいお店です。
映画やドラマの衣装が再び誰かの手に渡る – それは単なる“古着の再利用”にとどまりません。
実はこの取り組み、環境問題と真剣に向き合う映画制作の現場において、ますます重要な意味を持つようになっているのです。
というのも、2024年以降、フランスでは国の映画助成制度(CNC:フランス国立映画センター)を利用するための条件として、撮影現場での「カーボンフットプリント(炭素排出量)」の報告が義務化されました。つまり、映画をつくるうえでどれだけ環境に配慮したかが、資金援助を受ける上でも重視されるようになったのです。
そうした背景の中、「La Loge」が行っている衣装の回収・再利用・販売という活動は、環境にやさしい映画づくりをサポートする新しいかたちとして注目を集めています。衣装を無駄にせず、次の使い手へつなげることで、制作現場の“脱使い捨て”にも貢献しているのです。
さらに、「La Loge」では衣装は必ず作品の公開後にのみ販売されるというルールを徹底しています。そしてタグには、作品名や登場人物の名前のみが記載され、俳優の名前はあえて書かれていません。これは、出演者の肖像権やプライバシーに配慮したうえでの、きめ細やかな対応です。
「La Loge」は、映画とファッション、そしてサステナビリティを結ぶ、未来志向のプロジェクトでもあるのです。
SNS経由で人気に火がつく – 多様な客層が訪問
映画ファン、観光客、地元の人…多様な来店者でにぎわう「La Loge」
「La Loge Store(ラ・ロージュ・ストア)」がオープンしてから、たった数週間。予想をはるかに超える反響が巻き起こりました。
店を訪れる人々の顔ぶれは実にさまざま。近所に住むパリジャンや、観光でパリを訪れた旅行者、そして熱心な映画ファンまで、連日多くの来店者でにぎわっています。その中には、コスチュームデザイナー・メロディさんのSNSフォロワーも多く、「Instagramで知って、どうしても来てみたかった!」という声が後を絶ちません。
たとえばある女性は、アクション映画『Sentinelle(センティネル)』で俳優ジョナサン・コーエンが実際に着ていたTシャツを探し求めて来店。彼女のように、特定の衣装を目当てにやってくる“推し服ハンター”も少なくないのです。
「La Loge」は、ただの古着店ではなく、SNSで話題になる“目的地”そのものになりつつあります。
毎週水曜は“映画×ファッション”のスペシャルデー
公開作品の衣装がリアルタイムで登場!
さらにこの店ならではの魅力が、「映画公開に合わせた限定販売」というユニークな仕掛けです。
フランスでは、多くの新作映画が毎週水曜日に公開されます。「La Loge」では、そのタイミングに合わせて、該当作品で実際に使われた衣装の一部を“数量限定”で店頭に並べる特別イベントを行っているのです。
まさに、映画館と連動したリアルタイムのファッション体験。作品を観て感動したその足で、「あのキャラクターが着ていたあの服」を買いに行く – そんな体験ができるのは、この店ならではです。
もちろん、これらの衣装は一点もの。売れてしまえばもう出会えないことも多く、映画ファンにとってはまさに“一期一会のチャンス”。そのため、水曜日には特に多くの人が詰めかける人気イベントとなっています。
サイズにまつわる課題と、これからの展望
誰もが「映画の主役」になれる場所をめざして
「La Loge Store(ラ・ロージュ・ストア)」には、さまざまな映画やドラマで使われた衣装が並んでいますが、現時点で取り扱いの中心となっているのは、サイズ36〜42(日本のSM〜Lサイズ相当)のアイテム。これは、フランス映画業界の現場で使用される衣装の傾向をそのまま反映しており、サイズの多様性という点では、まだ課題が残されています。
この点について、共同創設者であるメロディ・コランジュさん(通称メロココ)は率直にこう語ります。
「映画業界では、特定の体型を想定して衣装が作られることが多く、実際に流通している衣装も限られたサイズに偏りがちです。でも、ファッションは本来、誰もが楽しむべきもの。だからこそ、私は少しでも多様性を広げたいと思っています」
その思いから、メロディさんは自身で国内外から古着を買い付け、XS〜XL以上まで幅広いサイズ展開を揃えた「Mélococoセレクション」として店内に別枠で展開しています。これらは、映画で実際に使われた衣装ではないものの、スタイリストとしての目利きが光る、ユニークで高品質なアイテムばかり。まさに、「すべての人が主役になれるように」という想いを形にした、インクルーシブな取り組みです。
海外作品の衣装もいつかは…
世界の映画衣装が並ぶ日を目指して
現在、「La Loge」で扱う衣装はフランス国内で制作された映画やドラマのものに限定されています。しかし、来店者からは「『Twilight』のあのジャケットがほしい、「『Desperate Housewives』のワンピースは扱ってないの?」といった海外作品の衣装に対するリクエストも多く寄せられているとのことです。
こうした声を受けて、メロディさんと共同設立者のサラ・ジェランさんは、将来的にアメリカや他の欧州諸国の制作会社と連携し、国際的な衣装収集のネットワークを構築する構想を描いています。
中でも期待が高まっているのが、人気海外ドラマ『Emily in Paris(エミリー、パリへ行く)』とのコラボレーション。舞台がパリであるこの作品は、「La Loge」との親和性も抜群。しかし、現時点では正式な提携には至っておらず、今後の交渉が注目されています。
そして、子どもたちも“映画の登場人物”に
2025年秋、キッズ向けコーナーが新登場!
お子さん連れのかたにも、うれしいニュースがあります。
2025年9月には、キッズ向け衣装セクションが新たに登場予定です。これは、家族で来店するお客さまが増えてきたことや、「子どもにも映画の衣装を着せてあげたい!」という声に応える形で生まれた新企画。
小さな子どもたちも憧れの子役の装いを楽しめる、そんな夢のようなコーナーが、もうすぐお披露目されます。
パリを訪れたら、是非遊びに来て!
サイズに縛られず、年齢も問わず、誰もが映画の一部になれる
「La Loge Store」は、ただの古着屋ではありません。ここでは、ファッションと映画が出会い、誰もが“主役”になれる特別なショッピング体験が待っています。エコでサステナブル、かつ感性をくすぐるこの新しい試みは、今後のセカンドハンド文化にも新たな風を吹き込むに違いありません。
パリを訪れた際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか? 旅行でパリを訪ねて、大好きな映画やドラマのヒロインが着ていた服で帰国する、そんなことも夢ではありません。
「La Loge Store」は、ただの古着屋ではありません。ここでは、ファッションと映画が出会い、誰もが“主役”になれる特別なショッピング体験が待っています。エコでサステナブル、かつ感性をくすぐるこの新しい試みは、今後のセカンドハンド文化にも新たな風を吹き込むに違いありません。
パリを訪れた際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか? 旅行でパリを訪ねて、大好きな映画やドラマのヒロインが着ていた服で帰国する、そんなことも夢ではありません。
店舗情報
- 店舗名:La Loge Store
- 住所:17 Rue Condorcet, 75009 Paris
- 最寄り駅(メトロ):
Poissonnière 7号線 駅から徒歩で約3~4分(約330m)
Anvers 2号線 駅から徒歩で約6分(約400m)
Cadet 7号線 駅から徒歩で約7~8分 - インスタグラム:www.instagram.com

これは、楽しいアイディアだね。Ça c’est Parisなんて、去年のドラマだけど、人気俳優がたくさん出ていて、華やかでパリらしいドラマだった。なんたって題名を訳すと「これがパリだ」だからね。モニカ・ベルッチも本人役で出ていたんだよ。ちなみにここをクリックすると、予告を見ることができます。パリの有名な場所がたくさん出てくるから、観光している気分になれるし、大人版「エミリー、パリへ行く」って感じかな。
普通、スターが着た衣装だと、プレミアがついて高くなるものだけど、このお店は「古着」として扱っているから、定価よりずいぶん安くなっているのが面白いね。でも、『Emily in Paris(エミリー、パリへ行く)』の衣装なんて入ってきたら争奪戦になりそうだ。このドラマはフランスではあんまり人気がないから(パリのイメージがステレオタイプ過ぎるし話が単純でつまらないという評判)、普通の古着扱いになりそうだけど、アメリカを中心に海外の人気が高いから観光名所になっちゃうかも。ドラマでエミリーたちがよくいるカフェ(実際はレストランだけど)や、クロワッサンを買っているパン屋さんは、ファンの人たちの聖地巡礼で、いつだって長蛇の列だ。ドラマに出ていた服を安く手に入れて、オークションで儲けたりする人が出ないといいけど。
本文中で、「サイズの多様性という点では、まだ課題が残されています。」という箇所があるけど、これは日本人には逆にチャンスだと思う。フランスの服のサイズはアメリカなどに比べれば、日本人のサイズに近いけど、それでも1段階づつズレていると思ったほうがいいよ。(日本でMを着ている人はフランスのSがちょうどいいといった具合)フランスでも女優さんは細い人が多いから、標準体型よりサイズが小さめだということを心配しているんだろうけど、たぶん日本人の場合は、標準体型の人でちょうどいいくらいのサイズが多いと思う。
ドラマや映画を観ながら、この洋服も古着として出てくるかな?と思いながら観たら、ショッピングとしても同時に楽しめるかもね。