
Renault 5 TURBO 3E:伝説の再来
1980年代の名車が電動で復活
ルノーが、1980年代に一世を風靡した「R5ターボ」を現代版に進化させた電気自動車「Renault 5 TURBO 3E」が市販されることになり、フランスで2025年の春から(予想では4月)予約が開始されるという発表がありました。
Renault 5 TURBO 3Eは、往年の名車ルノー5ターボとターボ2に敬意を表したモデルであり、「ターボ3」と電気自動車を示す「E」を組み合わせた名称がそれを象徴しています。
Renault 5 TURBO 3Eは、電気自動車としての高性能と、目を引くスタイリング、そしてレトロゲーミングやドリフトといった要素を取り入れたユニークなコンセプトが特徴です。限定生産が予定されており、当初のコンセプトモデルを上回る570馬力の出力を後輪に伝え、「ミニスーパーカー」と称されるほどの強烈な加速を実現するために、インホイールモーターを採用している点が特筆されます。
Renault 5 TURBO 3Eの特徴
ルノーは、数々の記念イベントやショーケースを通じて、その象徴的なモデルであるRenault 5へのオマージュを捧げてきました。特に、2022年のパリモーターショーでは、Renault 5ファンに向けたドラマチックなショーケースとしてルノー5 TURBO 3Eが公開され、注目を集めました。
これは、Renault 5の誕生50周年を記念するものです。
Renault 5 TURBO 3Eの外観デザイン
Renault 5 TURBO 3Eのデザインは、スーパーカーのような迫力を持ちつつ、スポーティさと俊敏性を重視したものとなっています。前後に張り出したバンパーや大きく拡張されたリアウィングは、そのエネルギッシュなデザインの象徴です。
また、空力性能の最適化も重視されており、これは電動車両にとって効率を最大限に高める重要なポイントです。
ルノー5ターボとターボ2からの影響
Renault 5 TURBO 3Eのデザインには、オリジナルのRenault 5 TURBOおよびTURBO2の要素が随所に見られます。また、近年発表された「Renault 5 E-Techエレクトリック」からも一部の特徴を取り入れており、リアライトやサイドミラーのデザインにその影響が反映されています。
しかし、この車両の真の目的は、単なるリバイバルではなく、最新技術を活用して1980年代の名車を現代に甦らせることです。
ルノーのデザインディレクターであるジル・ヴィダルは、「伝説のRenault 5 TURBOとTURBO 2を現代的に再解釈することは大胆な挑戦でした。私たちはそのエネルギッシュさとレーシングスピリットを維持しつつ、最新技術と電動時代に最適化された空力性能を組み合わせました」と述べています。
Renault 5(ルノーサンク)の歴史
Renault 5(通称サンク)は、1972年に初登場し、コンパクトでスタイリッシュなデザインと高い実用性で人気を博し、1972年から1996年にかけて900万台以上を販売する大ヒットとなりました。特にスポーツモデル「Renault 5 TURBO」は、ラリー競技でも活躍し、80年代のアイコン的存在となりました。
Renault 5は現代的なアレンジによりコンパクトEV「Renault 5 E-Tech electric」となって昨年欧州で発売されましたが、復刻版のEV化はそれだけに収まらず、ラリー競技用に開発されたRenault 5 TURBOまでもがEV化され、ルノーによる、EVのイメージを根本から覆す挑戦が始まったと言えます。
2022年のパリモーターショーでは、Renault 5の50周年を記念して、「Renault 5 TURBO 3E」が公開されました。このモデルは、過去の名車へのオマージュを込めつつ、未来のスポーツEVとして進化を遂げています。
巨匠マルチェロ・ガンディーニが手がけた第2世代のルノー5
1984年に発表された第2世代のルノー5(スーパーサンクの愛称で知られています)は、数々のサイトで、マルチェロ・ガンディーニ氏がデザインした最も美しい車 5 台に選ばれています。
2024年3月13日に亡くなったマルチェロ・ガンディーニ氏は、20世紀後半の自動車デザイン界に革命をもたらしたイタリアの巨匠です。
彼の業績はランボルギーニ・ミウラ、カウンタック、ディアブロなどのスーパーカーにとどまらず、実用車や商用車、さらには工業製品全般にも及びます。
スーパーカーデザインの革新
ガンディーニ氏のデザインは、スーパーカーの概念を変えました。彼が1966年にデザインしたランボルギーニ・ミウラは、ミッドシップレイアウトを持つスーパーカーの先駆けであり、その美しいフォルムは自動車デザインの新たな基準を確立しました。
代表的なスーパーカーは、
- ランボルギーニ・ミウラ:エンジンを車両中央に配置したことで、スポーツカーの設計に革命をもたらしました。
- ランボルギーニ・カウンタック:ウェッジシェイプのデザインを採用し、未来的なスタイリングを確立しました。
- チゼータ・V16T:16気筒エンジンを搭載し、パワフルなパフォーマンスを誇ります。
実用車のデザインへの貢献
ガンディーニ氏はスーパーカーのみならず、実用車のデザインにも積極的に関与しました。
代表的な実用車は、
- ルノー・スーパー5:コンパクトなハッチバックで、大衆に愛されました。
- シトロエン・BX:独特なデザインと先進的な技術が融合した画期的なデザインでした。
- BMW 5シリーズ(初代):高級セダンとしての新たなスタンダードを築きました。
革新的な電動スポーツカーの誕生
Renault 5 TURBO 3Eは、Renault 5の単なるスポーツバージョンではなく、パフォーマンスに特化した専用プラットフォームで開発された全く新しい電動スポーツカーです。ルノーはこのモデルを「ミニ・スーパーカー」と位置付け、サーキットやドリフトでの楽しさを追求しています。
圧倒的なパフォーマンス
Renault 5 TURBO 3Eは、2基の電気モーターを搭載し、合計540馬力を誇ります。0-100km/h加速はわずか3.5秒以内、最高速度は270km/hと、電動スポーツカーとしても驚異的なスペックを持ちます。後輪駆動のレイアウトにより、優れたレスポンスと効率性を実現しています。
パワートレインとパフォーマンス
Renault 5 TURBO 3Eは、純粋な電動スポーツカーとして設計されており、電気自動車ながら往年のターボモデルに匹敵する性能を誇ります。
- 加速性能:
0-100km/h加速は3.5秒以下(ドリフトモードでは3.9秒)、0-200km/h加速は約9秒。
100%電気自動車で、後輪駆動のレイアウト - 最高速度:
コンセプトモデルでは200km/h、市販モデルではサーキット走行時またはドイツでは270km/hに達する可能性 - パワートレイン:
後輪駆動、2つのインホイールモーターを搭載。総出力は500馬力以上(後輪に備わるインホイールモーターは1輪あたり200kWを発生し、合計出力は400kW/540馬力に達します)
バッテリーと充電性能
- バッテリーと航続距離:
70kWhバッテリー搭載、WLTPサイクルで400km以上の航続距離を想定 - 充電性能:
800Vアーキテクチャを採用し、DC急速充電(350kW)に対応。15分で15%から80%まで充電可能
ブレーキとシャシー
- 軽量化設計:
アルミ製プラットフォームとカーボン製ボディパネルを採用し、車両重量は約1400kgを目標 - ブレーキシステム:
フロント360mm、リア460mmの大径ブレーキを採用。インホイールモーター搭載の影響で、リアブレーキディスクはホイールの外側に配置 - 空力性能と冷却性能を向上:
ルノー5 TURBO 2のデザインを踏襲したフロントとリアの大型エアインテークにより、空力性能と冷却性能を向上
ルノー5 TURBO 3Eのサイズ
Renault 5 TURBO 3Eは、コンパクトながらも非常にワイドなボディが特徴です。
- 全長:4.08m
- 全幅:2.03m(「2メートルを超える幅を持つ最も短い車の一つ」)
- 全高:1.38m
- ホイールベース:2.57m(ルノー5 E-Tech Electricより3cm長い)
- 最低地上高:118mm
デザインとコンセプト
モータースポーツとビデオゲームの要素を融合
Renault 5 TURBO 3Eは、単なるスポーツバージョンではなく、パフォーマンスに特化した専用プラットフォームで開発された全く新しい電動スポーツカーです。ルノーはこのモデルを「ミニ・スーパーカー」と位置付け、サーキットやドリフトでの楽しさを追求しています。
Renault 5 TURBO 3Eのデザインは、80年代や90年代のビデオゲーム、ドリフト文化、そしてルノー5ターボのレガシーを融合させたユニークなものです。
このモデルは、Renault 5 E-Techエレクトリックのデザインを基にしながらも、空力性能の向上に重点を置いた設計が施されています。特に、巨大なリアスポイラーや大きなエアインテークは、スポーツ性能を象徴する要素となっています。
デザイン
- Renault 5 TURBOとTURBO2の要素を継承し、80年代・90年代のビデオゲームやドリフト競技のエッセンスを融合
- 巨大なリアスポイラーが特徴的で、空力性能を向上
- フロントとリアのフェンダーには大型エアインテークを配置し、冷却性能を確保
- 透明なリアパーツを採用し、電気システムを視認可能
- ドリフト時にはピンク、ブルー、イエローのLEDが点灯
- ピンクのプレキシガラスの窓には「La vie en rose(バラ色の人生)」のステッカーが貼られている
- カーボンファイバー製のボディに、レトロなカモフラージュステッカーを施した外観
インテリア
Renault 5 TURBO 3Eのインテリアは、レース、ビデオゲーム、そしてRenault 5/5 TURBO 2の時代背景を意識したデザインが特徴です。
- 先進的なコックピット:
10.1インチのインストルメントパネルと10.25インチのセンタータッチスクリーンを搭載し、Android Automotiveを採用。1980年代のビデオゲームを彷彿とさせるグラフィックが特徴 - ドリフト走行向け設計:
縦型の油圧ハンドブレーキをイエローのセンターコンソール中央に配置 - スポーツ仕様のシート:
カーボンファイバー製のバケットシートに6点式安全ハーネスを装備。 - 専用ステアリングホイール:
アルピーヌA290と共通のデザインながら、ルノーロゴを採用。ブーストボタンや回生ブレーキ調整ボタンを装備 - ユニークな車両起動方法:
「free play」ボタンを押すことで車両が起動 - 個性的なドライブモード:
「turbo」(ドリフト)、「track invader」(ゲーム)、「donut」(360度回転)などのユニークなドライブモードを搭載 - レトロなデザイン要素:
シートとダッシュボードはイエロー、ピンク、グレー、ブラックのスコットランド風タータンチェック柄を採用し、80年代の雰囲気を演出 - トランクスペース:
インホイールモーターの採用により、リアシートのスペースがトランクルームに活用
Renault 5 E-Tech Electricとの関連性
Renault 5 TURBO 3Eは、Renault 5 E-Tech Electricといくつかのパーツを共有しています。フロントガラス、リアライト、ドアミラー、ドアハンドルなどが共通しているものの、それ以外のエクステリアデザインは完全に新設計され、手作業で製造されています。
アルピーヌとの関連性
一部のファンからは「このモデルはルノーではなく、アルピーヌブランドで展開すべきでは?」との声も上がっています。
アルピーヌ*はルノーグループのスポーツ部門であり、歴史的にもラリーで成功を収めてきたため、この電動スポーツモデルに適していると考えられたのです。
しかし、ルノーのCEOルカ・デ・メオ氏は「アルピーヌにはよりスポーティなモデルを、ルノーには“優しい”車を提供する」という戦略のもと、ルノー5ターボ3Eをルノーブランドとして展開することを決定しました。
なお、ルノー5ターボ3Eの技術開発にはアルピーヌのエンジニアも関与しており、そのパフォーマンスは新型アルピーヌA290を大きく上回ると期待されています。
*アルピーヌは、ルノーグループのスポーツカーおよび高性能モデルを担当する部門として位置づけられています。その歴史は深く、1960年代から1970年代にかけて、ラリー競技での成功を収めたことで知られています。現在のアルピーヌは、ルノーの高性能車部門としての役割を担いながら、電動化時代への移行を進めています。
アルピーヌの現在と未来
現在、アルピーヌは「A110」を主力モデルとしながら、電動化への移行を進めています。特に、A290という新しいEVスポーツカーを発表し、今後はA110の電動版やA310の登場も期待されています。しかし、A290に関しては、ルノー5と類似しすぎているとの批判もあり、アルピーヌの独自性を示すモデルの必要性が指摘されています。
アルピーヌは、モータースポーツに積極的に関与しており、F1(フォーミュラ1)、WEC(世界耐久選手権)のLMDhカテゴリーへの参戦、アルピーヌカップ、GT4などで活動を続けています。しかし、WRCのトップカテゴリーへの参戦は現状では行われておらず、一部のファンからは「アルピーヌがラリーの遺産を十分に活かせていない」との批判もあります。
競合車種との比較
Renault 5 TURBO 3Eは、スポーツEV市場において独自のポジションを確立することが予想されています。
競合となる各車種との比較は以下の通りです。
- テスラ モデルS Plaid:
直線での加速は圧倒的だが、車重が重く俊敏性では劣る - ヒョンデ Ioniq 5 N:
ドリフトモード搭載でコンセプトは似ているが、車重がネック - シャオミ SU7 Ultra:
800Vアーキテクチャ採用で高性能だが、実用性重視のスポーツセダン - リマック Nevera:
圧倒的なハイパフォーマンスだが、高価格で異なるカテゴリーの車 - ポルシェ タイカン Turbo GT:
高性能であるものの、4ドアGTのためコンセプトが異なる
生産計画と価格
Renault 5 TURBO 3Eは、1980台限定で(ルノー5ターボの発売年にちなんで)生産される予定です。
また、シリアルナンバー付きの特別仕様車も展開される予定です。
- 予約開始:2025年4月予定
- 納車開始:2027年見込み
- 予想価格:150,000〜190,000ユーロ(アルピーヌA110 R Ultimeより安価と予測)
市場の反応と意義
Renault 5 TURBO 3Eは、過去のファンだけでなく新世代の自動車愛好家からも注目を集めています。
- ルノーの革新的な姿勢を示し、電動化時代においてもエモーショナルな車作りが可能であることを強調
- 限定生産であることから、将来的にコレクターズアイテムになる可能性
パリモーターショーでの発表
Renault 5 TURBO 3Eは、Mondial de l’Auto 2022(パリモーターショー)で発表されました。
- Renault 5の誕生50周年記念として、Renault 5 TURBO 3Eを発表
- ショーカーとしての発表により、観客にエンターテイメント性の高い体験を提供
- ルノーの電動化戦略の象徴的なモデルとして注目
電動スーパーカーとしての新たな時代
ルノーの電動戦略と未来展望
ルノーは、Renault 5 TURBO 3Eを通じて、新たな電動スポーツカーの可能性を示しています。
- Renault 5 E-Tech Electric:大衆向けの実用的なEV
- アルピーヌ A290:スポーティなシティEV
- アルピーヌ A110 EV:2026年に登場予定の本格スポーツEV
Renault 5 TURBO 3Eは、単なる懐古的なモデルではなく、現代の電動車の可能性を示すモデルでもあります。クラシックカーの魅力を持ちながらも、最新のテクノロジーとエンジニアリングを駆使し、新しい時代にふさわしいパフォーマンスを実現しています。
革新的なホイールインモーター、800V充電システム、アグレッシブなデザインにより、電動スポーツカーの新時代を切り開こうとしています。
限定生産ながら、そのユニークなコンセプトと圧倒的なパフォーマンスにより、多くの自動車愛好家の注目を集めています。
ルノーのこの試みは、単にノスタルジーを呼び起こすだけでなく、電動車両の未来に新たなビジョンを提示するものです。540馬力のモーター、スーパーカー並みのデザイン、最先端のインフォテインメントシステムを兼ね備えたこの車は、まさに「伝説の再来」と言えるでしょう。
参考資料:
Weekly World Car Info – 22 March 2025
L’Automobile Magazine – 2025-03-17
Auto & Design N.266、その他
車の試乗專門のTV番組でRenault 5 TURBO 3Eが取り上げられました、ドリフトしまくってます。(笑)

見ているだけでワクワクするような、おもちゃみたいな車だね。(値段は全然おもちゃじゃないけど)細かいところにまで遊び心が効いていて、技術チームもデザインチームも楽しみながら開発したことがわかる。
1980台しか生産しないということ自体、利益を追求していないのは明らかだけど、フランスの自動車業界、特にルノーは業績が低迷しているにも関わらず、こんな消費車にとってもメーカーにとってもお遊び的な車に結構な開発費をかけるなんて、幹部からよく許可が出たなあと思う。ルノーは元国営ということもあって天下り官僚も多く、政府との関係も強いから、本社はエリート主義的な雰囲気が濃くて、PSAなどの他の自動車メーカーに比べるとちょっとピリピリした感じ。工場はもっとフレンドリーな感じだけど。
でもルノーが得意な車づくりって、運転しやすく経済的という庶民的な車なんだよね。上のYoutubeビデオの中でも「今回はルノーの車だけど、おばあちゃん用じゃないよ!」という発言があるけど、まさにそれが若い人たちにとってのルノー車のイメージ。特にルノーの売り上げを支えたルノーサンクや後発のクリオは、サイズも小さくて小回りも効くから、免許を取って初めて運転する人や高齢者に選ばれることが多く(イタリアのフィアット500とか日本だと古くはスバル360的な感じかな)、古い映画を見ていても、くたびれた刑事がドアがへこんで閉まらないルノーサンクに乗っていたり、バカンスに出たお金のない若者たちが、ガス欠で皆で押しているのもルノーサンクだったりする。50代後半から60代以上の人たちには、免許を取って初めて買ってもらった車がルノーサンクだった、という人が多いから、きっとルノーの幹部たちにとっても、青春の車というか特別なノスタルジーがある車じゃないかと思うんだ。自動車に勢いがあった時代に皆に愛されたルノーサンクの50周年という節目に、また活気を取り戻したいという気持ちで、このプロジェクトに力が入ったのではないかな?と想像してしまう。2020年に Renault グループ CEO に就任した Luca de Meo氏は、新しいことが好きでルノー車のイメージの若返りを図っているから(やはりイタリア人はデザインから変えるよね)、これまでの保守的なイメージを刷新して、挑戦的なラインを出してくるんじゃないかな。庶民に愛される車作りを目指すことがルノーらしさだとは思うけど、価格で勝負したらアジアからどんどん入ってくる安価な車には勝てないから、Renault 5 TURBO 3Eで初心に戻って、個性的で魅力的な車作りを頑張ってほしいな。